観光資源は「人間と自然との交換」がもたらす価値
観光客は単なる旅行者として、モノやサービスの消費を促進するだけでなく、新しい顧客がブランドにとって新しい解釈や魅力をつくり出すように、その消費自体が新しいコミュニティのネットワークや価値をもたらすことも考えられます。このことは観光客が何を価値として消費しているかに注目することで明らかになります。
観光資源とは、マルクスが水や空気を例に出しているような「使用価値はあるが、交換価値がないもの」のひとつとして捉えることができます。観光資源そのものは、そこに暮らし、住んでいる人にとっては当たり前の空気のような存在ですが、来訪者にとってはわざわざお金を払って来る価値があるものだからです。それは観光資源の「交換」価値とは、水や空気のように人間と「自然」との交換であるからです。
そのような「自然との交換価値」は、お金などは基本的に必要ない、その場所においては「無料」の使用価値です。先ほどの下吉田の「風景」を思い出してみてください。それはタイ人にとっては、観光の対象として十分に交換価値をもつものなのです。
このような「自然との交換」を我々は、まだまだ多く見出すことができます。日本は人口減の社会になることによって、かえってこのような「自然との交換」の価値を持つ、多くの資源が見出される可能性が高いでしょう。さらに言えばこのような「自然との交換」は、今ミレニアル世代をはじめとした都市生活者にとって単なる「風景を見る」こと以上の価値を有しています。それはアウトドアが趣味やスポーツとして楽しむように、「人間らしさ」への本能的な回帰のひとつだからです。
同時に「使用価値はあるが交換価値はないもの」は、自然以外には伝統的なブランドや企業の多くが、隠れた資産としてもっていることがあります。その端的なものは「歴史」です。ブランドがもつ歴史は情報として過去が蓄積されたものとして捉えられがちですが、その意味はこれまでその企業を聞いたことのないような「観光客」によって価値を見出されるでしょう。そしてその筆頭にいるのは、新しいミレニアル世代の人々なのです。
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