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新時代の店舗が担う3つの役割 ニューヨーク最新事例から(その1)

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SOHOの中でも特に多くの人気店が立ち並ぶ、Prince Street

こんにちは。はじめてアドタイに寄稿させていただきます、橘匠実と申します。普段はパナソニックノースアメリカという会社で、マーケティングの業務に従事しています。この仕事に携わる者としてニューヨークという街は、トレンドが生まれる世界最先端の場所のひとつであると言えます。仕事やそれ以外で見たり、経験したりした、面白いニュースをブログにまとめている中で、今回ご縁があり、寄稿をさせていただくことになりました。

さて、ファッションやデザイン関係者にとって、世界を代表する都市であるニューヨーク。中でもSOHO(ソーホー)は、グローバルに展開する有名ブティックが立ち並ぶ、人気のエリアです。

その反面、SOHOは多くのスタートアップが店舗を構える実験地区としての顔もあります。たとえばマットレスのCasper、スーツケースのAway、化粧品のGlossierなど。これらは、普段インターネットを通じて商品を販売している企業です。

SOHOでは1LDKのマンションの平均家賃が月約42万円。港区の相場の2倍以上にも及びます。ではインターネットで商品を販売し、店舗を持たなくても売れているブランドが、なぜそのように世界でもトップクラスに高い賃料を払って、わざわざ店舗をだしているのでしょうか?

出店している米国企業の事例を、3つの側面から考えてみることで、一歩先の店舗の活用アイデアが浮かぶかもしれません。

その1:<ブランドの世界観を伝え、体験してもらう>店舗

まず、先述したブランドのビジネス形態は、ひとくくりでD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマ)と呼ばれています。製造から小売までを1社が提供し、さらに商品は、Eコマースを活用することで、店舗にかかる固定費や、流通にかかる費用を抑えるようなビジネスモデルです。

1つ目に挙げられるのは、「ブランドの持つ世界観を直接顧客に伝え、体験してもらい、更にそこで作り上げた世界観をインターネットの世界に還元するため」です。

例えばマットレスブランドのCasperは、なんとショールームの中に仮眠室があり、実際に「眠る」ことができます。言われてみれば、マットレスの良し悪しを知るには、やはり眠るのが一番…。と分かっていても、やりきるブランドはなかなか存在しないので、これはユニークな取り組みだと言えるのではないでしょうか。

Casperのショールームにある仮眠の体験サービス The Dreamery *Casperより

仮眠サービスはネットで予約できます。ショールームに訪れてパジャマを受け取り、顔を洗ってから、同社の特製マットレスで45分間睡眠するまでがひとつのパッケージ。25ドル(約2750円)で体験できます。(ちなみに、Casperのマットレスは極上です。ニューヨーク観光に疲れた方はお試しあれ)

おもちゃを扱うショールーム、Campにも注目です。
店舗の中にある戸棚が隠し扉になっていて、そこを開けると、なんと天井にプロジェクターで投影された星空が輝くキャンプ場のような部屋へ入ることができます。そこは実際に販売されているおもちゃの体験スペースとなっていて、子どもたちは夢中になって遊ぶことができます。楽しい時間を過ごしてから、気に入ったおもちゃを買ってもらうという仕掛けです。

なお、このキャンプ場のレイアウトは数カ月に一度、完全にリニューアルされて、全く新しい空間となります。リピーターであっても常に驚きに包まれた体験ができる、というわけです。インターネットでは伝えられない「体験」に徹底的にフォーカスし、惜しみなくスペースを使うことで、リアル空間の持つ魅力を最大限に引き出し、ブランドの世界観を届けています。

隠し扉を抜けた先にある、子供の遊び場兼ショールームのCamp *Campより

このようにブランドの世界観を存分に体験してもらうことはもちろん、その先に、リアル空間で作り出したコンテンツを、インターネットの世界にフィードバックさせることにも注目です。

最近では、店舗を撮影スタジオとして活用する試みも増えています。そこで撮った写真をSNSに載せることで、消費者発信のリアリティのあるコンテンツを紹介できるとともに、消費者が参加する楽しみも増えます。

寄り合い店舗の「SHOWFIELDS」はまさにその代表格。
1カ所につき1~3畳ほどで区切ったスペースで、15社のスタートアップが自社の商品を展示、販売しています。店頭の商品を使う様子を来店者が自由に撮影できるようにしており、写真をソーシャルメディアに投稿してもらうことで、「口コミ」のようにインターネット上で拡散される。それを見た人がECでの購入を検討する。これも同じく、リアルの店舗ならではのことだと思います。

(左)SHOWFIELDSを利用するブランドの展示エリア (右)Instagramに投稿された写真

このような「ソーシャルメディアに取り上げられやすい、リアル空間の作り方」は、とても大切です。上記のバスタブを使った商品展示も、「どれだけInstagramに写真を投稿してもらえるか」を考えぬいた結果なのでしょう。

その2:<顧客を知り、商品開発やマーケティング戦略につなげる>店舗に続きます。

橘 匠実
パナソニックノースアメリカ
マーケティング デジタル&コミュニケーションズ トレーニー

2010年、パナソニック入社。資材の調達部門を経て、2014年より同社ブランドコミュニケーション本部にて、国内外の展示会企画業務に従事。2017年より、海外トレーニーとしてパナソニックノースアメリカへ出向。北米でのブランディング・マーケティング活動に従事する傍ら、現地で見つけた最新のビジネストレンドやニュースについて、情報発信を行う。
Twitter : @takuminy02
note : https://note.mu/takumi0131