コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

「広告のフロンティア拡張は今」 橋田和明さん×原野守弘さん対談。 -2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Cカテ(PR) シルバー受賞作品:GODIVA「日本は、義理チョコをやめよう。」-

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社会の見立て=よりよい未来へ

橋田和明さん

橋田:義理チョコという日本の現象に対して、違う角度から見て「よく考えたら変だぞ」と言ってくれている。そこにプラスして、ジェンダーに対する考えが入っているじゃないですか。POLAも含めて、そう感じる。原野さんに、日本にその課題を考えるきっかけを推進していきたい気持ちがあるんですか。

原野:それはよく言われるんですが、フェミニズム運動家というわけではないんです。ただ10年前にタカラトミーのリカちゃん40周年広告で、女性問題について考えた頃から、問題意識としては持っていたと思う。

リカちゃんは良妻賢母をよしとする「家事労働シミュレーション」遊びだな、ということに気づいて、このジェンダー観が、やがて致命的になるだろうと思いました。だから「このままだとリカちゃんの未来はないですよ」とプレゼンをして、家事労働シミュレーションではなく、世界旅行シミュレーションをする「Licca World Tour」という新しいプロダクトを提案したんです。

POLAについては、直接的なきっかけとしては、カンヌの影響がありました。グラスライオンが創設されたり、ジェンダー問題が広告業界の「ど真ん中」に置かれているということに衝撃を受けましたので。これは日本でもそういう時代がすぐに来るだろうな、と。

橋田:原野さんの中でジェンダーギャップをなくすことは、「当たり前のこと」になっている、そういうことなんですよね。

原野:いろいろな「いい未来」のパターンがあるじゃないですか。例えば自動車業界なら環境にいいとか安全だとか。こと日本国で言うと、女性差別の撤廃は誰も否定できないテッパンの課題。誰も否定できないことをテーマにするのは、やっぱり強い。

以前、受講した宣伝会議のクリエイティブディレクター講座で、佐藤夏生さんが「(ユニクロの)柳井さんがクリエイターを面接する時には、『君のアイデアはどうでもいいんだ、君の社会の見立てが知りたい』と話す」というのを聞いて、なるほど!と思った。それがずっと指針になっている。

広告表現は、アイデアを考える競争もあるんだけど、今は「社会の見立て競争」の時代になっていると思う。たとえば、GODIVAやPOLAの広告は、日本は女性差別に満ちているという社会の見立てがないと、絶対にたどりつかないアイデアです。

橋田:社会の見立て、クリエイターはどう学べばいいんですかね。僕もよくカンヌで海外のワークに触れると、日本のジェンダーやダイバーシティの考え方はすごく遅れていると感じていました。でもずっと日本にいると、あまり気づかずに、「こういうもんじゃん」で議論が終わってしまう。

原野:人権系のテーマは、海外事例を見るのが早いでしょうね。もともと僕は、TCCとかACCとか言った日本の「クリエイティブ村」の外からキャリアをスタートしたので、国内のアワードを獲るのは難しそうだなと諦めていて、海外の広告賞しか注目していなかった。それが功を奏したのかもしれない。ここ10年くらいの大きなトレンドとして、海外の広告は社会的になってきていますから。

橋田:海外の広告で見立てを育てる、ということですね。

原野:だから毎年行くようにしています。最近はわざわざ行かなくてもデジタルで全部見られるんですけど、一応行ってみる。

橋田:盛り上がり方が違いますよね、受賞作品の。ガチですごいのか、まあまあ評価されたのか、現場にいると温度感が違う。

原野:表彰式で拍手される作品があるんですよね。そういうのを見ると、同じ金賞でも違うなあと。そういう客席の反応を見に行くというのは重要だと思います。

ACCの進化はこれが第一歩

橋田:最後に、この新部門どう思いますか。

原野:とてもいいと思います。応援したくて、応募したんです。あと、審査委員の方々がわりと若めなのもいいなぁって。でもGODIVAはグランプリでしょう(笑)。

橋田:僕も出す部門がない派の人間でした。Yahoo! JAPANの「ちょうどこの高さ」(2017年)も当時出す部門がなくて、唯一、メディアクリエイティブ部門ができたから出せた。でも本当は、このBC部門に出したかった。だからこの部門ができたのは、審査員というよりも一人のクリエイターとて、とてもうれしいです。この部門ができたことはACCの進化の第一歩だと感じています。だいぶ遅かったけど。笑

原野:まあ、放送業界の会員社が多い団体の賞だから葛藤はあるんだろうなとは思います。だからこそ、やったのは立派。ほかにないんです。キャンペーンやPRを評価する場が。みんなで大事にしていかなくちゃいけないと思いますよ。

橋田:確かにそうですね。BC部門も女性審査員を増やすなど、また進化するようです。その進化の方向に向かって、まっすぐ行けたらいいですね。最後に、今回はPRカテゴリーの話でしたので付け足しておくと、広告でもPR的視点があればもちろん受賞の可能性があると思います。今の仕事には、多分にPRでもあることがあると思うので。皆さんのチャレンジングな仕事の応募を楽しみにしております。

2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Cカテ(PR)シルバー受賞作品:GODIVA「日本は、義理チョコをやめよう。」

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