コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

「広告のフロンティア拡張は今」 橋田和明さん×原野守弘さん対談。 -2018 ACC賞ブランデッド・コミュニケーション部門 Cカテ(PR) シルバー受賞作品:GODIVA「日本は、義理チョコをやめよう。」-

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【対談】
橋田和明さん(HASHI/クリエイティブディレクター)*BC部門審査委員
原野守弘さん(もり/クリエイティブディレクター)

2019 59th ACC TOKYO CREATEIVITY AWARDSが6月3日にエントリースタートしました。中でも、昨年新設され盛り上がりを見せたのが、「ブランデッド・コミュニケーション部門(以下、BC部門)」。同部門の審査委員が、メダルの色に関わらず「これが好き」という基準で選んだ昨年の“This one”作品のクリエイターと本音トーク! その作品、どうやって生まれたのよ? そしてぶっちゃけ、この部門どんな感じよ?

原野守弘さん(左)と橋田和明さん(右)

審査委員が作品をカテゴリー移動

橋田:実はこの作品(GODIVA「日本は、義理チョコをやめよう。」)、デザインカテゴリーに出品されていたんですよね。

原野:BC部門って「CM以外全部」と言っておきながら、いわゆる「広告(Advertising)」を出す枠が無いんだよね。グラフィック広告は「デザイン」のサブカテゴリーになってしまっているから。PRって「広告とは違うぞ」っていう意識で審査されることが多いので、新聞広告は出しにくい。

橋田:確かに、カンヌだとPR部門ではいわゆる「広告」を嫌うので、落ちちゃいますね。

原野:「カテゴリー間違い落ち」はいやだなと思ってデザインのほうに出しました。一応、サブカテゴリーには、新聞広告と書いてあったから。

橋田:審査をする中で、「これはPRだろう」となってカテゴリーを移したんですよ。社会へのメッセージというものを新聞広告でつくろうとしているのが、まさにPRだろうと。

「新聞広告×PR」の金字塔

橋田:この作品はどういうオリエンから始まった仕事なんですか? 僕、実はこれが出た瞬間から嫉妬していました。

原野:これ、グランプリだと思うんですけどね。シルバーだと聞いて、審査委員がシルバーだな、と思いました。

橋田:すみません(笑)。これ、さすがなのは新聞広告をそのまま見たわけじゃなくて、ソーシャルメディアで新聞広告の写真を目撃しました。メッセージも素晴らしいし、その接触のさせられ方が仕事として嫉妬しちゃいました。

原野:なかなかない鮮やかな決まり方をしましたね。これは競合プレゼンでした。単純に、次のバレンタインデーのキャンペーンを提案してください、というオリエン。競合だから好きな案を出せるじゃないですか。オリエンを聴いている時に、これをやろうと思って提案しました。

橋田:新聞広告を使っているじゃないですか。KPIを絶対とする得意先だと、最近はスパッと落とされてしまうメディア。でもこれが新聞であった意味がめちゃくちゃ大きかったなと。一紙だけだったんですか?

原野:コピーを読んでもらうとわかるのですが、これは会社の管理職に向けたメッセージなんですよ。職場の女性たちが困らないように、上司から「今年はもういらないよ」と言ってあげましょうというメッセージ。ですから「管理職が読む媒体」ということで、日経新聞のみ。新聞広告というよりも、日経でないと成立していない広告。

橋田:なるほど、ターゲットとしてのメディア選定もしっかりしていたのですね。その上で、今の新聞広告を選ぶ意味って、わざわざここで「主張しますよ」というブランドのスタンスも感じられること。そこの「覚悟」もすごくよかったと思います。「新聞広告×PR」の金字塔ができてしまった、と感じました。

勇敢なことをやったほうが得な時代

原野守弘さん

原野:あとは、クライアントが素晴らしかった。同じメッセージでも誰が言うかによって響き方はすごく違う。GODIVAが言ったというのもよかったと思う。日本の製菓メーカー会社や他のあまり知られていないブランドだったら、たぶん違って響いたと思う。

橋田:「誰が言うか」は大切ですよね。ただ、こういう議論を巻き起こすような方法を取ると、ネガティブな意見が出てくる可能性もあるじゃないですか。僕がソーシャルを観察していた中では、かなりポジティブな意見が多かったと思うんですけど。ネガティブ意見が少しでも出ることを嫌う得意先も多い中、このアイデアを通す時に、クライアントとどういう握り方をしていったんですか。

原野:どういう握りということもなく、コピーも含めて社長がすごく気に入ってくださったんです。しかし、営業的な問題で一度中止になりかけたことはありました。

橋田:超商戦期に、義理チョコも買ってもらわなきゃ売り上げに影響するだろってことですね。

原野:でも、社長がもう一回検討し直してくれましてね、やっぱりこれをやるんだと、直前にGoしたんです。フランス人の方ですが、リスクを取られたというのが立派だと思いました。

橋田:原野さんはPOLAの「この国は、女性にとって発展途上国だ。」もそうですけど、すごいチャレンジングだと感じます。チャレンジングなことって、クライアントの勇気も必要ですよね。

原野:チャレンジングではあるけれども、今の時代は「勇敢なもののほうがウケる」という計算もあるんです。ソーシャルメディアがコミュニケーションのプラットフォームとなった現代では、その中で、みんなが毎日、ヒーローやリーダーを探している。テレビ時代はヒーローやリーダーは上から降りてくるものだったけど、ソーシャルメディア時代のヒーローやリーダーは誰かが見つけて、みんなが賛成して、民主的に立ち上がる。今は、勇敢に、正しい行動を、真っ先に起こす、のが得な戦略なんです。
 
橋田:「勇敢」は今の時代らしいキーワードですね。

原野:ブランディングとは、シンプルに言うと「ちょっといい未来を見せる」ということです。その未来が共感される、いい未来ならみんながついてくる。だからチョコレートやバレンタインデーにとって、どんな未来が素敵なのか、化粧やスキンケアにとってよい未来とは何だろう?ということを、常にクライアントとディスカッションしています。僕は乱暴な人に見えるから、「無理やり通してる」と思われてるけど(笑)、そんなことないんです。

次ページ 「社会の見立て=よりよい未来へ」へ続く

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