現在の広告用語は「広告はセールス」という考えから生まれた
今回のコラムは前回同様に、ポール・フェルドウィックの『Humbugの解剖』から、主に米国の広告の歴史について語っていきたいと思います。
みなさんは、現代の広告、マーケティング業界で使われているボキャブラリーのほとんどは20世紀中盤の米の広告会社の黄金時代に生まれたことを知っていますか? 現在、日本においてもそれがどのような背景で生まれたかは知らずに、多くの人がほとんど無意識に使っているはずです。
その言葉とは、たとえばUSP (unique selling proposition:ユニークセリングプロポジション、独自の売りの提案)、ベネフィット(benefit:便益)、リーズンホワイ(reason why:信じる理由)、メッセージ(message)、アテンション(attention)、想起(recall)など。自分も過去に、特に外資系広告会社ではこのような言葉が散りばめられた広告の提案書を書いていました。
これらの言葉のベースにあるのは、「広告はセールスを目的としたものであり、それは合理的な説得の形式である」という前提です。この考えの発端は1904年にアルバート・ラスカーが築いたシカゴの広告会社であるロード&トーマスに訪ねてきた一人の男、ジョン・E・ケネディからはじまります。彼はラスカーに「広告とは、セールスが活字になったもの(salesmanship in print)であり、人に買わせるには理由(reason why)を与えればいい」と提案しコピーライターとして雇われたのです。
セールスに関する理論はこのケネディより前の1887年、セント・エルモ・ルイスによってセールスマンによって人が購買に至る一連のステップとしてAIDA(Attention注意、Interest興味、Desire欲求、Action行動)というプロセスが発表されていましたが、ケネディはこのセールスの考えを初めて広告に適用したのです。
そしてこの考え方を発展させたのが、前回紹介したクロード・ホプキンスであり、彼もラスカーに招かれて1908年からロード&トーマスでコピーライターとして活躍しました。『Scientific Advertising』は彼が引退した後の1924年に書かれたもので、ホプキンスは「広告はどれだけ売れたかで評価すべきである」「良いセールスマンは真面目で尊敬され、情報を与えるもの」といった言葉で、広告にもセールスマンとの比較においての意味を与えたのです。
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