雑誌とつくる、求心力のあるコンテンツ~シニア定期読者を深く分析『ハルメク』

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生活者の周りに情報が溢れる中、企業は、商品への興味を促すためコミュニティ別の深いコミュニケーションを重視しつつある。一方、雑誌を起点に情報受容度の高いファンを生み出している雑誌編集部では、デジタルやイベントによって交流を行い、読者コミュニティの熱量を高めている。求心力の高い雑誌はどのように読者のインサイトをつかみ、コンテンツを生み出しているのか。また広告主は、いかに雑誌とコラボしているのか。『雑誌広告2.0』(宣伝会議刊行)の発刊を記念し、本記事では『ハルメク』山岡朝子編集長へのインタビューを紹介する。

山岡朝子 編集長(ハルメク)

1997年主婦と生活社に入社、『すてきな奥さん』『CHANTO』をはじめ、ライフスタイル系の雑誌の編集長を歴任。2017年にハルメクに入社し、『ハルメク』の編集長に就任。就任して1年半で実売部数が1.5倍に。

 

広告記事単位で満足度を調査、勝ちパターンを探る

『ハルメク』のコアな購読者は60~70代のアクティブな女性たち。書店流通はなく、自宅直送の年間定期購読のみです。ですから、1号だけ面白かったらそれでいい、ということではなく、購入者の期待にずっと応えていける、毎月届くのが楽しみになる雑誌を目指しています。

『ハルメク』の強みは、読者調査の量と深さにあります。現在24万人の読者がいますが、定期購読という特性上、居住地や年齢などの属性を把握できています。

その方たちにお手紙やメール、WEBで毎月膨大な量のアンケートを取っていますし、特定の方に集まっていただき、座談会や、グループだったり1対1だったりのインタビューをして、生の声も聞いています。雑誌に付けた読者ハガキでは良かった記事、興味が持てなかった記事などを質問していますが、毎月2千通が戻ってきて、その8割はフリースペースに『ハルメク』へのコメントが書いてありますね。

読者調査は、統計やモデレートのプロを採用してつくった調査専門の部門が行っています。編集者が行うと、どうしてもバイアスがかかってしまうので。客観的に調査して集めたデータを編集部と共有して、どのような特集にするのかを考えています。どんなことに関心があるかという事前の調査から、実際読んでみてどうだったかという満足度調査まで、一貫してできる仕組みがあるということです。

読者調査をもとに作った新しい特集企画に「子どもに迷惑をかけない介護」があります。

以前は「介護」というと、「親の介護」だと思って企画を立てていましたが、それが当たらず、しばらく取り上げるのをやめていたんです。ただ、改めて深く調査をしていくと、読者は「親の介護」ではなく「自分の介護」で悩んでいらっしゃった。「子どもは共働きで孫も小さい。自分が要介護になったら誰が看てくれるんだろう?」「どんな準備が必要なんだろう?」そういうインサイトにたどり着いて、この特集が生まれました。

現実的な解決策として高齢者住宅に関心があることも分かったので、「終の棲家」をテーマにした特集では、高齢者住宅の入居者が実際どんな暮らしをしているのかを取材した広告企画を入れ、資料請求ハガキも付けました。このときは想定を大幅に上回るレスポンスがあり、資料の発送が追いつかない程でした。

読者の満足度調査は、広告の記事ごとにも行っていて、確かに見たか、興味を持ったか、などについて計測しています。その細かなデータは、編集にも活かしています。例えば、あるサービスを使おうと思っている人向けにするのか、まだ知らない人向けにするのか。不安が解消できるという訴求がいいか、もしくは理想像の追求のほうが、引きが強いのか。繰り返しご出稿されている広告主は、満足度調査の定量データがあるので、その結果を分析しながら勝ちパターンを作ることができています。

読者向けイベントは年間200本

イベント専門の事業部では、年間200本の読者向けイベントを開催していて、歌舞伎鑑賞から散歩、講演まで、社内で企画から運営まで行っています。ですから広告主の課題に対して、誌面だけでなくイベントを組み合わせて解決にあたることもできます。

例えばポケモン様からは、「ポケモンGO」をシニアに使ってもらうにはどうしたらいいか、というリサーチからご依頼があり、読者調査を行ったところ「ポケモンGO」でウォーキングが楽しくなるというキーワードにたどり着きまして、誌面タイアップとリアルイベントを展開。実際ウォーキングしながら「ポケモンGO」をやってみるイベントが盛況でした。

プロのオペラ歌手やピアニストと歌を楽しむ人気イベント「あなたと歌うコンサート」。

輸入生鮮食品を啓蒙するタイアップ企画では、おいしさや栄養面の魅力を伝えるために読者を招いた有料イベントを行いました。

ちょうどクリスマスシーズンでしたので、ホテルでクリスマスソングを聴きながら、シェフによる生鮮食品を主役にしたコース料理が食べられるという内容です。そこで産地レポートを編集部がお伝えしたり、栄養士の栄養講座を開いたりして、誌面にとどまらないリアルな体験をしてもらいました。50人の定員がすぐに埋まり、100人以上のキャンセル待ちが出ました。

イベント専門の事業部があるからこそ、単なる試食会ではない、満足度の高いイベントを開くことができていると思います。

部門で言うと、カタログ通販を専門で行う部門もあって、カタログの商品を購入できるリアル店舗も持っています。編集部と分業はしているものの、イベントも、カタログも実店舗も、その利用者はすべて『ハルメク』の読者。入り口は雑誌で、読者の方から見れば、どれも雑誌に付帯するサービスなんです。

次ページ 「話題や流行をひっぱっていく雑誌」へ続く

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