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「課題設定にこそ、クリエイティビティがある」PRアワード〆切迫る

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日本パブリックリレーションズ協会では現在、国内の優秀なPR事例を表彰する「PR アワードグランプリ2019」のエントリーを受け付けている。

そこで今回は10月23日の最終エントリー締め切りを前に、エントリーシートのまとめ方についてレクチャー。2018年に続き審査委員を務める、井之上パブリックリレーションズの横田和明氏に、自身のグランプリ受賞の体験も踏まえ、伝わるエントリーシートの書き方、考え方について話を聞いた。

(取材・文/日本パブリックリレーションズ協会)

井之上パブリックリレーションズの横田和明氏。

審査委員として見たエントリーシートの傾向

—横田さんがPRアワードグランプリの審査委員を務めるのは今回で2回目です。まずは、2018年に初めて審査をされた際の所感をお聞かせください。

まず感じたのは、パブリックリレーションズの面白さ、奥深さです。ステークホルダーと関係を構築するために、日々、地道に一つひとつのアクションを重ねていく。その積み重ねが、顧客の課題解決、そして社会課題の解決につながる──。そんな事例や、担当者やチームの皆さんの想いや苦労が伝わってくる事例もあって。いちPRパーソンとして、パブリックリレーションズという仕事のやりがいや社会的な価値、そしてその面白さを教えられる思いでしたね。

優れたプロジェクトが多かったのですが、70件近くのエントリーを拝見して思ったのは、PRアワードグランプリの対象として惜しいなと感じるシートが多かったことです。例えばプロモーションイベントや広告など、マーケティングの一領域にフォーカスしたアワードであれば、もっと評価されていてもいいのかなと感じたシートがあったのは事実です。

パブリックリレーションズは、「パブリック」と「リレーションズ」の2つの言葉から成り立っています。パブリックは企業や組織体のまわりに存在する集団や一般社会。リレーションズは関係構築。組織体が何か成し遂げたい目的を持ったときに、まずパブリックの中で利害関係者(ステークホルダー)に該当するのはどこかを考える必要があります。

そして、優先的に関係を構築すべきステークホルダーや、各ステークホルダーがどのように影響し合うのか、といったことを考えなければなりません。ただ、この点を意識してエントリーシートに書き込んでいる事例はあまり多くない印象を受けました。

エントリーシートに明記すべきこと

—エントリーシートをどう書くべきか悩んでいる人も多いのではないかと思いますが、どんなことに留意すべきでしょうか。

エントリーシート全体から考えると、まず重要なのは応募プロジェクトの価値の根幹をなす現状分析と課題の定義だと思います。実はこの課題設定にこそ、クリエイティビティが現れると感じています。

そして、設定した課題の解決策の方向性や関係を構築すべきステークホルダーが明確に整理されていないと、評価はしづらくなります。その際、設定する課題の粒度がポイントになると思います。

「日本の社会を良くする必要がある」とか「一人ひとりが輝ける社会にすべき」といった公共心はPRに必要なものです。しかし、大きなビジョンやスローガンのような粒度だけで課題を設定してしまっているケースが散見されました。そうすると、何をもって解決したとみなすのかが難しくなります。

結果、課題と解決策と結果のつながりが弱く見えてしまう。壮大な課題設定の結果が、記事掲載何件や、イベントに何人が集まった、という記載に留まってしまうと、課題が解決されたかどうかを判断しにくくなります。

そこで、大きなビジョンを意識しながらも、解決したかどうかが測りやすい粒度に課題を設定し、多様なステークホルダーへのアプローチを含む解決策やその成果を同じレベルで記載する。入賞したエントリーシートはこのあたりが整理されていた印象です。

その際、反響を生んだことだけでなく、今回のプロジェクトではできなかったことを踏まえて今後の施策の広がりや可能性も含めて記載があると良いかもしれません。他の事案に応用できる拡張性の高い枠組みであることも、評価に影響する部分が出てくるのではないかと思います。

エントリー項目の変更点と狙い

—今年はエントリーシートのフォーマットに少し変更が加わり、「パブリックリレーションズとしての視点:Why PR?」という項目が増えました。

パブリックリレーションズの本質──どのパブリックをステークホルダーとして抽出したのか、どのような順序で、関係構築を進めていったのか、ということをしっかりと書き込むことが重要になると思います。もちろん、課題としっかり連動しているかどうかもポイントです。

その際、課題解決にカスタマーだけでなくビジネスパートナーやエンプロイー、ガバメントなど多様なステークホルダーとの関係構築が有機的に機能した場合、それも明記すべきではないかと思います。

その関係性も、時間の経過とともに優先順位の高いステークホルダーが変化するかもしれない。パブリックリレーションズのアワードだからこそ、どのタイミングで誰と関係をつくるかが、エントリーシート上で明確に整理されていることが重要だと思うのです。

課題と成果は呼応しているか

—2018年の事例で印象的だったものはありますか。

どの事例も印象的でしたが、たとえば、シルバーを受賞した高崎市の「絶やすな!絶品高崎グルメ『絶メシリスト』」。「今、町から消えつつある個人飲食店」を再び活性化し、地方都市「高崎」の注目を集めることを課題として設定。地元の人たちだけが知っているお店の絶品料理を、店主が高齢化する中で「食べられなくなるかもしれない料理」と新たに価値付けることで社会的に問題を提起しつつ、お店の来客と観光客を増やすプロジェクトでした。

エントリーシート上では、ステークホルダーとなる1軒1軒のお店や地元住民、県外の観光客とのリレーションズなど、ステークホルダーが誰なのか分かりやすく書かれていたように思います。

もう一つ、エントリーシートの変更点として、今年から「コーポレート・コミュニケーション」「マーケティング・コミュニケーション」「ソーシャルグッド」、それからシステム開発や調査・研究部門を含む「その他」の、4つのカテゴリーから一つを選択することになりました。

以前は応募部門と事例の内容との間にズレがあると感じたケースが少なからずありました。「これが別の部門なら納得なんだけど」という会話も審査会で聞かれましたね。なぜこの部門に応募するのか、エントリーするチーム内で少し整理する時間も必要かもしれません。

また、エントリーシートを書いたあとに、「課題(Challenges)」に「成果(Results)」がしっかり呼応しているかどうかをまずチェックすることが必要かと思います。その中間に設けられた項目の、「戦略(Strategy)」「アイデア(Idea)」「活動内容(Execution)」は、まさに成果のためにあるものですから。前回拝見したシートでは、活動内容までは素晴らしいのに、成果でやや肩透かしになってしまっているものも見受けられ、もったいないなと感じる案件もありました。

次ページ 「同じ案件で再エントリーしてみる意義」へ続く