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思い付きで名コピーは生まれない!? 原晋氏×虎尾弘之「コピーライティングの極意」

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「そのまま」から生まれた名コピー

虎尾:原さんの考える良いコピーとは何でしょうか?

原:「人の感情を動かすコピー」。これに尽きると思いますね。基本的にコピーというのは商品やサービスに好意を持ってもらうためにあるので、何も感じてもらえないコピーは絶対ダメだと思う。素通りされるコピーになってはいけないと心がけていますね。

虎尾:最近では誰もがSNSで発信できるようになり、いろいろな言葉が溢れています。それらとコピーの違いはどこにあると思いますか。

原:これはやっぱり「意図があるかどうか」だけでしょうね。SNSで100回投稿した人が1回だけ笑ってもらえた、というのではなく、僕らコピーライターは100発100中じゃないといけない。つまり、100回書けば100回目的を果たさなければいけない言葉がコピーだと思ってます。虎尾さんはどう思いますか?

虎尾:僕は「結果的に」であれ、人が動く・ものが動くというところにたどり着くコピーでなければダメだな、と思いますね。ちなみに、原さんの好きなコピーといえば?

原:仲畑貴志さんの「おしりだって、洗ってほしい。」をいつも僕のベストワンと言っています。これは100万台売ったと言われる、TOTO「ウォシュレット」のコピーですね。

このコピーには制作秘話があります。TOTOの社員は、仲畑さんに当時珍しかった「ウォシュレット」を説明するために、インクを持ってきて手につけた後に紙で拭いた。それから「紙で拭いたら手は汚れるでしょう。お尻も同じなんですよ」と説明したそうです。それを聞いた仲畑さんは、「それです!」と言って広告のコピーにした、そういうエピソードです。つまり、“そのまま”を書いているわけですよ。

「何を伝えるか」を考え抜く

虎尾:なるほど。情報そのものに強さがあれば、“そのまま”伝えたほうがいいということですよね。他では、コピー初心者からは、「どういう時にコピーを思いつきますか?」という質問もよく寄せられますよね。

原:その手の質問は、よくありますよね。でも、僕はコピーを思いつくことは一切ない(笑)。「あの辺りを見ていると、浮かんでくるんだよね〜」なんて言うコピーライターもいますけど、そんなことは絶対にないです。基本的にはその商品、ターゲットのことを考え抜いて、出た結果でしかない。

もちろん、最後に工夫はしますよ。「こうじゃないか?」という仮説も立てる。でも、仮説はベースの情報があるからこそ成り立つもの。だから、単なる思いつきというのはまったくないです。

虎尾:考え抜いた先にふと思い浮かぶことはあるでしょうけど、調べ抜いた積み重ねがないとそうはいかないということですね。あとコピーの音とかリズムについては、どのように組み立てていますか?

原:そこは非常に大事ですね。韻を踏んだり、耳に入りやすくて気持ちに残りやすいかどうかまで考えます。ただし一番最初に何を伝えるのかを決めて、その後に工夫をする、というステップで考えるようにしています。

最初から、この工夫のことばかりを考えてしまうと、耳なじみの良い言葉だけど、何も効果を生まないコピーになってしまいがちです。それは不動産ポエムみたいなもの。良さそうに見えるけど、実は本質的なことは何も言っていなかったりします。

だから音を大事にするのは大事だけど、その前に、まず何を伝えるのかを考え抜くことができれば、選ばれるコピーになると思います。

虎尾:伝えること自体が新しければ、そのコピーも自然と新しくなるということですね。

ありがとうございました。

シカク
コピーライター/クリエイティブディレクター
原晋氏

1974年生まれ。1999年に東急エージェンシーに入社し、営業局へ配属。流通担当の営業として3年半を過ごす。自身で営業して書いたピアノ教室のコピーでTCC新人賞を受賞。クリエイティブ局へ転局する。コピーライター、CMプランナーとして4年半、多くのグラフィック広告、TVCMにたずさわり、07年に退社。パイロンを経てフリーランスに。2008年クリエイティブユニット・シカク結成。コピーライターという職域を越えて幅広く広告活動全般に関わる。主な仕事に、ボーイングストア、大分トリニータ「OFURO」、JR東日本「のもの」、UACJ「ある日、アルミは」、ニューバランス「990v5」、カジタク「よくばりさんのままで行こう。」、フジテレビ「LIFE !S LIVE」キャンペーン、など。

 

真空ラボ
コピーライター/クリエーティブディレクター
虎尾弘之氏

1975年生まれ。2005年、虎尾弘之広告事務所設立。2007年、真空ラボ設立に参画。今に至る。北陸コピーライターズクラブ会員。コピーライティングを軸としながら、地域企業の経営に寄り添った活動を展開。