コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

佐渡島庸平氏×天野彬氏 対談 「SNSは熱量からサステナビリティへ」-コミュニティの本質を考える【後編】

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コミュニティマーケティングの深化とSNSとの深い関係

天野:データによって個々の顧客の解像度を上げていくことで、最適な打ち手を講じていく。同時に、消費者としては人とのつながりの中で消費を楽しむという傾向も変わらずにありますよね。

流行や、特定の商品やサービス、コンテンツの良し悪しについてなどは、同じ価値観を持った生活者同士のコミュニケーションに影響されているし、そこでの評判を頼りにするようになっている。そういったつながりを可視化したり、深く理解するためにSNSのような場を活用できないのか。また、見えにくいその「あつまり」にかたちを与えることはできないのか、という関心の高まりが、SNS時代におけるコミュニティマーケティングの盛り上がりの素地としてあるように思います。

佐渡島:SNSの活用が下手な企業というのは、コミュニティマーケティングを新しいものだと捉えてしまっています。

大手コンビニエンスストアチェーンや飲食店が実施してきたドミナント戦略には、地域コミュニティの中でみんなが楽しんでいて、便利で盛り上がってくると、消費者同士で「うちの近くにもあれば便利だ」と話題になり、その気持ちが漏れ伝わった先で新しく店舗ができるので繁盛する、というコミュニティを活用した連鎖がありました。しかし、現在は店舗数を増やすことが主目的になり、その結果プラスの連鎖が生まれづらい状態になってきていると言えます。

佐渡島庸平氏

佐渡島:リアルな場を使ったコミュニティマーケティングは、昔からあるもので、決して新しいものではないですよね。例えばラグジュアリーファッションブランドとかは、上顧客のことは店員が顔や名前を覚えていて、店舗に行くとシャンパンが出てきたりする。そこには、ちょっとシャンパンを飲むようなコミュニティが存在していて、こういうのは昔から行われてきたコミュニティマーケティングと言えるでしょうね。それを今、SNSでどう置き換えるのか、が鍵になっているのだと思います。

天野:上手く回っているコミュニティという点では、H.I.S.の女子旅コミュニティ「タビジョ」の事例があげられると思います。タビジョを通してオススメの旅行情報やツアーをユーザー共有したり、ユーザー自身がメディアとなり、旅行の写真をSNSにあげて情報発信をしたり、さらにリアルなミートアップの場を設けることで、コミュニティの輪がどんどん広がっています。

一番、面白いと思ったのは、ユーザーがあげた場所をツアーとして商品化していったこと。実際にユーザーが写真を撮ってシェアしてきたシーンや体験は、いわゆる「絶景」だけでなく、その途中で立ち寄ったちょっとしたカフェや何気ない壁の前で撮ったり…と日常の中で映える体験が切り取られ、それは旅行会社のひとがいいなと思うシーンや体験とは違っていました。

このユーザーの実体験を基にしてできた新しいツアーが非常に好評だったりして、ユーザーと共創したコミュニティの成果を実業にまで反映している事例と言えます。SNSと事業戦略とのマッチ度も高く、とても象徴的な施策だと感じました。

佐渡島:H.I.SのようにSNS上でのコンテンツ、デジタルコンテンツ、リアルイベント、日常的に集まれる場などが全部セットで回っていくようになると、 コミュニティマーケティングは相当上手くいっている状態と言えるでしょうね。

次ページ 「リアルとデジタルをなめらかに繋ぐコミュニティマーケティングの未来」へ続く

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