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井上岳久×小西みさを 「一枚のリリースで分厚い企画書を超える 広報の仕事の本質」

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PRはそれ単体では意味がない

井上:小西さんは、「PR、広報とは何か?」と聞かれたらどう答えてるんですか?

小西:自分が作った定義ではないんですけど、私がいちばん共感したのは、PRSA(Public Relations Society of America)の定義ですね。PRSAはアメリカの巨大PR協会なんですけど、そこが、「PRとはなんですか?」という定義を募集したことがあったんです。それで何千と集まった中から選ばれたものがこれです。「パブリックリレーションズとは、組織と組織をとりまくパブリックの間の、相互に利益のある関係を築く戦略的コミュニケーションのプロセスである」。

これを聞いたときに、「まさにそうだな」と腑に落ちました。もちろん、広報する側が一方的に発信するだけでは受け手には何も伝わらないですし、受け手が求めている情報というものもあるので、そこにどう調和させていくか。

やっぱり広報には、「社会とどう調和させていくか」というミッションがあると思いますし、重要なのは調和を実現するためのプロセスを作っていく、というところですよね。ただスポット的にぽこっとPRをやるわけではなくて、しっかりと順序立てて、どういうストーリー作りをして、どういう戦略でやっていくか。そこが広報、PRの肝となる部分だと思います。

井上:そうなんです。「とりあえずネタをなんか引き出して、リリース出して、テレビや新聞に載ればラッキー」みたいな、「それでWEBでバズればいいや」ぐらいに広報を捉えている人がけっこう多いんですよね。広報ってそんなちっぽけなものじゃなくて。

外資系のブランドをやってる会社で顧問をしているんだけど、彼らなんて「100年後の広報プラン」を考えてますよ。「100年後の自分たちはどういう会社になっているか」ということを。

小西:100年はすごいですね。PRは信頼づくりですから、長期的に効いてくるものだというのがポイントですね。

井上:そういう視野を持った会社にとりあえずでアイデアを出しても、「お前、うちの戦略プラン読んでないだろ」と返されます。「うちは100年後にこうなりたいんだよ。何も考えず販促もどきをやるだけのPRをうちは望んでいない」と。

もちろん場当たり的なPRでも、やっておけば一時的にはもしかしたら売り上げが倍になるかもしれない。でも、「倍になるかもしれない」ということは、「半分に落ちる」可能性だって当然ある。目先の売り上げに飛びついてブランドイメージを壊してしまったら、100年後にこの商品が残ってないかもしれない。

自社ブランドの100年後の姿を想像して、売り上げや市場シェア、宣伝量を見極めて、どうやって着々とやっていくか、ということですよね。「今年はここまでのプランをこなす」と、全て決まってるんですよ。細かくブランディングをして、高望みをせず、落としもせず、着実にその線を登っていくという。広報は、世の中に対して自分たちのイメージや商品、売り上げも含めたものをどうやって発信していくか、というコミュニケーションなわけです。

顧客に知られていないともちろん売れないので、どういう風に認知度を高めていくのか、というのを細かくやりながらコミュニケーションしていく活動という。焦って動いて、悪いイメージがついても困るじゃないですか。

小西:そうですよね。100年後かどうかは別にしても、やはり「企業がなりたい姿から逆算してプランを立てていく」というのが、広報のプラン作りのベースかなと思います。広報って、自分たちだけで完結するような部署ではないんですよ。

この本にも書きましたけど、広報って「追い風を吹かせる」部署なんですよね。事業のゴールと経営戦略の追い風となるようなコミュニケーション戦略をつくり活動をしてゆくものであって。「事業活動」という一つの目的を目指してやっていくものだから、事業開発してないのに単体で「PRやって」と言われても、「それはなんのために行うPRなんですか?」と言うしかない。

井上:よく、「リリースを出すためのネタがないんです」って会社さんいますよね。

小西:ないネタを無理くりPRで作りだして、それが事業推進につながるならいいんですけど、事業側も「それはあってもなくてもどうでもいいです」みたいなものをPRノルマとしてやるのなら、やらないほうがいいですよね。ただ単にノルマをこなしたいだけの話であれば、そのPRは極論、社会に何もコミットしてないじゃないですか。

次ページ 「一枚のリリースで全体を一気通貫」へ続く