幸福学の第一人者に聞く!コロナ禍に「幸福度」を上げる4因子とは?

会社ごとに最適解は異なる!自社に合った施策を

さて、ここまで因子を高める方法を話してきましたが、もっと詳しい事例が欲しいと言う方もいるかと思います。立教大学で人的資源開発に関する研究を行う中原淳教授は、そんな人のことを「事例くれくれ君」と揶揄していました。私も同じように思います。

行うべき施策は会社の理念、文化、業種、規模、業績などによって会社ごとにまったく異なります。ですから、事例を収集することは逆効果だと思います。人事担当者も広報担当者も、会社の理念、文化、業種、規模、業績に照らしあわせて、社員とじっくりオープンに話し合う中から自社なりの答えを見つけることが、事例を学ぶことよりも近道なのです。

私がかつて行った調査では、社内の表彰制度や優秀な人のクローズアップよりも、主体的に働くための動機づけやコミュニケーションの活発化の方が幸福度の向上に寄与する傾向がありました。

広報担当者が心掛けるべきことは、「社員の幸福度向上に寄与しているかどうか」という視点を常に持つことです。特に、取り上げた人の幸福度向上のみならず、社員全体の幸福度が上がることを考慮すべきです。誰かを取り上げると、記事によっては、その人の幸福度は上げるけれども、他の人の幸福度を下げることになってしまいかねないからです。

社員の多くの人の幸福度向上のために重要なことは、社員全員が会社を誇りに思うような優れたエピソードの紹介、社員が感動するような素晴らしいコミュニケーションの事例紹介、お客様が会社や社員に対して持っているポジティブなイメージや感謝の言葉の紹介などがあると思います。

いずれにせよ、幸せの4つの因子でいうと、社員が「ありのままに」働き、「なんとかなる」とポジティブに思い、「やってみよう」と行動し、「ありがとう」と感謝し合うきっかけをつくれるような事例です。淡々と述べるのではなく、どこに感動するのか、どこが素晴らしいのか、どこに共感するのか、といった感性に訴える発信を行うことが重要だと思います(図表3)。

■ 図表3 広報担当者が持つべき視点

 

コロナ禍で幸福度格差が拡大

先に述べたように、コロナ禍でリモートワークが進んだことで幸福度が向上したと感じている人は少なくありません。一方で、不幸になったと感じている人も一定数いらっしゃいます。私はこの結果から、幸福度の格差が拡大したのではないかと考えています。幸せな人はより幸せに、幸福度の低い人はより低くなったように感じます。この理由は、視野の広さから説明することができます。

視野の広い人は楽観的で幸福度が高く、視野の狭い人は悲観的で幸福度が低いという研究結果があります。新型コロナ禍とは、いわゆるVUCA(ブーカ)(Volatility:変動性・不安定さ、Uncertainty:不確実性・不確定さ、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性・不明確さ)の拡大装置です。なぜなら、新型コロナ禍とは、まさに先が読めない不確実で不安定なVUCAの時代だからです。

これを乗り越えるために必要なのは先を見通す視野の広さです。視野が広く幸せな人は広い視点から新たな手を打って難局を乗り切ります。一方で視野が低く幸福度が低い人は、自分の視点から文句ばかり言いつつ不安になり行動が起こせず、コロナ禍が去るのをじっと耐えるというような行動に陥りがちです。その結果として、幸福度格差は拡大するというわけです。

VUCAの時代には副業もおすすめです。井の中の蛙にならず、社外の色々な人と接したり、今までとは異なる仕事を体験することで視野が広がり、大局的に判断する力が身につくからです。つまり、オープンで俯瞰的な視点から新しいことに挑む人は幸福度が高まり、殻にこもり変化を恐れる人は幸福度が下がる、という二極化現象が、これからますます加速していくことでしょう。

そんななか、幸福度向上組に入るためには、幸せの4つの因子を満たすことです。「なんとかなる」と「ありのままに」「やってみる」こと、そして、多くの人とつながり、「ありがとう」と感謝すること。決して難しいことではありません。主体的に行動して人とつながること。広報と人事はそのサポートをするだけなのです。

次ページ 「分担社会で働きがいを喪失」へ続く

前のページ 次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ