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幸福学の第一人者に聞く!コロナ禍に「幸福度」を上げる4因子とは?

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分担社会で働きがいを喪失

 
「視野の広い人は幸せ」ということで、人類誕生以来20万年の変化に思いを馳せてみましょう。現代はVUCAの時代と言われますが、旧石器時代(20万年前から1 万年前まで)はもっとVUCAだったと思います。何しろ、農耕革命を迎える前の、狩猟採集生活です。しかし、彼らは幸せだったという研究結果が続々と出ています。

狩猟採集生活は生産性が高かったことが知られています。つまり、労働時間は短かったのです。(ありのままに)森や野を駆け回り、お腹が空いたら(やってみようと)木の実や魚を食べる生活だったのかもしれません。農耕を始める前ですから、食べ物を蓄えることもあまりなかったでしょう。(それでも、なんとかなると前向きで)貧富の格差もなく、みんなが生き生きと助け合って(ありがとうと感謝し)生きていた時代。しかも、ワークライフバランスという概念はありません。気が向いたら働き、気が向いたら休み、気が向いたら遊ぶ生活だったことでしょう。もちろん、リスクも多く、健康面でも生活の安定面でも今よりもVUCAだったことでしょう。

今から1万年前に農耕革命が起きました。農耕の発展に伴い、単位面積当たりの収穫量は増え、単位面積に住める人の数は増えました。しかし、労働生産性は下がりました。狩猟採集生活よりも農耕生活の方が労働集約的です。労働時間が長いのです。人々は、食べ物の備蓄という安定と引き換えに、長時間労働を選択したのです。そして、今から300年前に産業革命が起きました。

その結果、生活はさらに便利になりました。単位面積に住める人の量もさらに増えました。しかし、労働時間はさほど減らず、メールを見る時間は増え、ピラミッド型の組織で人は自分のやりがいを見失うという結果に陥っています。巨大組織での役割分担は、仕事を効率化する半面、個人のやりがいを奪う傾向があります。本当は、人間は、自分の仕事がどのようにみんなの役に立っているかを知りたいし、知るべきなのです。それが分かりにくくなっているのが現代社会です。

せっかく進歩した現代社会で、現代人は、狩猟採集生活や農耕生活に負けない幸せな生活を享受すべきです。そのためには、狩猟採集生活と引き換えに手に入れた安心安全で便利な社会を維持しつつ、高度分担社会であるがゆえのやりがいとつながりの喪失を克服すべきです。

会社でいうと、人事、広報、営業、製造、などという役割分担を超えた人々の触れ合いが必要です。やらされ感をやりがいに、孤独をつながりに変える必要があります。これまでに述べてきたように、人事担当者も、広報担当者も、大きな組織は単に仕事の効率だけを追い求めると社員が不幸せになることを知るべきです。やるべきことは、いかにして、社員がやりがいとつながりを感じられるかを考えて実践することです。

やっぱり事例が欲しいとおっしゃる方のために、最後に事例を紹介します。旧石器時代の狩猟採集民から学ぶことです。彼らの感性、個性、創造性に。

まえの・たかし 東京工業大学大学院卒。その後1986年にエンジニア職としてキヤノンに入社。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、ハーバード大学客員教授、慶應義塾大学理工学部での教員職を経て現職。脳科学、心理学、社会学など分野を横断して研究を行う一方、幸福学・感動学分野の日本での第一人者として、各地で講演なども行っている。

 

10月1日発売の月刊『広報会議』11月号上記同巻頭特集では「一体感を呼び戻す 社内コミュニケーション」と題し、コロナ禍の不安定な社会において、社員のモチベーションを保つためやヘルスケアのためのコミュニケーションについて取り上げています。今広報部門が取り組むべき社内コミュニケーションとは。HPE、アメリカン・エキスプレス、カゴメ、サイバーエージェントなどの企業事例も多数収録。
 

月刊『広報会議』11月号は、全国の書店・Amazonなどで10月1日より販売。Amazonでは、すでに予約を受け付けている。
 
<特集TOPICS>
・ファーストリテイリングで人事総務部長、マーケティング&コミュニケーション部長を歴任!
コロナ禍で多様化する働き方、広報と人事の連携でつくる強い会社とは?
(松岡保昌 モチベーションジャパン 代表取締役社長)
・平時から感謝を伝えているかが鍵 リストラ・事業縮小時のトップメッセージ
(田中正博 田中危機管理広報事務所 代表取締役社長)
・産業医へのQ&A リモートワークの長期化、従業員のメンタルヘルスにどう対応?
(尾林誉史 VISION PARTNER メンタルクリニック四谷院長)
・社員の3つの“不”を取り除く メンタルヘルスを保つポイント
(刀禰真之介 メンタルヘルステクノロジーズ 代表取締役)
 
<企業事例>
①日本ヒューレット・パッカード
家族向けイベントをオンラインで開催 社員のウェルネスを重視するHPE
②アメリカン・エキスプレス・インターナショナル
「ポッドキャスト」で社内文化を醸成 コロナ禍のコミュニケーション量を増やす
③カゴメ
働き方改革とはすなわち「生き方改革」! 従業員の余暇時間にも目配せした制度設計
④サイバーエージェント
社外発表見越し、設計から参画! 広報×人事でメディア露出を最大化
⑤宮田運輸
事故を機に生まれ変わった宮田運輸 「従業員を“人”として見る」その経営とは