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幸福学の第一人者に聞く!コロナ禍に「幸福度」を上げる4因子とは?

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コロナ禍で多くの企業は苦境に立たされている。そんな中でも生産性を上げていくために、今注目されるのが社員の「幸福度」だ。
 
本稿では幸福学研究に長年携わってきた著者が、広報と人事が取り組むべき幸福度向上のヒントを紹介する。
 

文/前野隆司(慶応義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)

 
月刊『広報会議』10月1日発売の11月号では、「一体感を呼び戻す 社内コミュニケーション」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を先行公開します。

社員の「幸福度」で企業の生産性は変わるのか。結論から言うと、問いへの答えはYESです。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』「幸福の戦略」特集(2012年5月号)には、「幸せな社員は不幸せな社員よりも生産性が31%高い」というアメリカの研究結果が掲載されています。

人間社会行動や幸せについての研究において第一人者の日立製作所の矢野和男氏の研究でも、幸せなチームは不幸せなチームよりも20%から40%生産性が高かったという結果が出ています。よって、科学的に考えても、社員の「幸福度」が企業の生産性を高めることは明らかです。

コロナ禍でも幸福度は向上

私は「みんなで幸せでい続ける経営研究会」を主宰していますが、新型コロナ禍中の2020年ゴールデンウィーク前後に473人のビジネスパーソンの方々にアンケート調査を実施したところ、図表1のような結果が出ました。

■ 図表1 新型コロナ禍の変化

出所/みんなで幸せでい続ける経営研究会(2020年5月)
*n=473

新型コロナの影響で、仕事がやりにくくなり、コミュニケーションも取りにくくなったにもかかわらず、約40%は「変わらない」、40%強は「幸せになった」と回答していました。記入式アンケートを分析してみると、幸福度が上昇した人は、通勤時間がなくなったことや、無駄な会議がなくなったこと、家族と過ごす時間が増えたことなどを挙げていました。

幸福度が向上すると、生産性や創造性が向上し、欠勤率や離職率が下がることが知られています。このため、コロナ禍においても、うまく折り合いをつけて幸せに過ごしている人は幸福度と生産性の高い状態で働けていると言えるでしょう。

もちろん、医療関係者の方や経営状態が大きく悪化した方など、コロナの打撃を大きく受けて幸福感の低下を感じている方もいらっしゃるでしょう。そのような方の場合はまず状況を整えることが先決だと思います。そうでない方は、いたずらに不安になりすぎず、オンライン・オフラインで多様な人とコミュニケーションを取るよう心掛けることが重要です。

幸福度を高める4つの因子とは?

では、現代社会において、いかにすれば社員は「幸福度」を高められるのでしょうか。

私が行った研究によると、幸せの4つの因子を高めると人々の幸福度は高まります(図表2)。幸せの4つの因子とは、以下の通りです。

■ 図表2 社員の「幸福度」を高める4因子

出所/筆者作成

第1因子:「やってみよう」因子 (自己実現と成長の因子)

「自分の強みを活かせているか?」「自分が成長している実感はあるか?」などの要素。例えば自分の強みを把握し、それを社会に活かせるようチャレンジすることが幸福度アップにつながります。

第2因子:「ありがとう」因子 (つながりと感謝の因子)

「人を喜ばせているか?」「感謝することはたくさんあるか?」などの要素。仕事の同僚やビジネスパートナー、プライベートでは家族や友人、趣味のつながりなど。人との安定した関係を築けるかどうかが大切です。

第3因子:「なんとかなる」因子 (前向きと楽観の因子)

「ものごとが思い通りにいくと思っているか?」「失敗や不安をあまり引きずらないか?」などの要素。楽観主義は「そこそこで満足できる」態度にもつながっています。ある程度のところでOKを出すことも大事です。完璧主義に陥ってしまうといつまでも満足できないことがあるので要注意です。

第4因子:「ありのままに」因子 (独立と自分らしさの因子)

「自分と他人を比べずに生きているか?」「人目を気にせず物事を楽しめるか?」などの要素。マイペースを維持するためには「メタ認知(自分を“他人事”のように見る能力)」のトレーニングが重要です。

以上の幸せの4つの因子が高まるような働き方をしていると社員の幸福度は高まります。一方で、金、もの、地位などの他人と比較できる財を手に入れた時でも幸福度は上昇しますが、長く続かないことが知られています。では、どうすればこの4つの因子を高められるのでしょうか。また、人事・広報の方はどのようにサポートできるのでしょうか。

「やってみよう」因子はやりがいの因子です。社員が自分の仕事の意義を深く理解し、社会にどのように貢献しているかも理解していること。自分のやりたいことができていると実感でき、強みを活かしていると実感できている状態だと、「やってみよう」因子が高まります。具体的には、人事担当者はやる気を出す研修、広報担当者は社員が頑張った事例を発信することなどが重要だと思います。

「ありがとう」因子は、感謝、つながり、利他の因子です。当たり前すぎるようですが、挨拶の励行、感謝の励行、褒めたりエンカレッジしたりすることの励行、コミュニケーションの活性化などが有効です。研修や表彰制度などの施策もいいでしょうが、人事や広報担当者は、最新の施策に頼るのではなく、どうすれば社員同士の深いつながりを構築できるか、という根本的な問いを社員と一緒に考えてみるといいと思います。

「なんとかなる」因子は、リスクをとってチャレンジすることです。新規事業や新しいチャレンジにトライする制度をつくったり、新しいチャレンジをした社員を内外に紹介したりして、情熱的にリスクテイクする組織風土をつくることが重要です。

最後は「ありのままに」因子。人の目を気にせず自分軸をしっかり持っている人は幸せです。そのためには、社員が強みと個性を持つことが重要です。どうすれば社員が強みと個性を持てるでしょうか。このことを人事・広報の方と社員が一緒に考えることができるといいと思います。

次ページ 「会社ごとに最適解は異なる!自社に合った施策を」へ続く