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コラム

NYから解説!日本企業のグローバルブランディング

実はスピーチが苦手!?「勝利宣言」にみるバイデン流プレゼンス

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トレーニングをしても、熱量がないスピーチは伝わらない

バイデン氏は元々あまりスピーチの得意な人ではない。

その点では、先にスピーチをしたハリス氏のような、聴衆を沸かせて歓声との間合いをとることができていない部分も多々あり、途中で噛んでしまっている部分もあった。しかし、この元々「静」のタイプの人から湧き出る熱量と力強いスピーチは、激しやすい人の暑苦しいスピーチよりも人の心に刺さる。青い炎の方が本当は熱いのだ。

勿論この日のためにバイデン氏は相当のトレーニングを重ねてきただろう。第1回目の討論会、2回目にして最終回の討論会を見ていても、回ごとに彼のプレゼンスは向上していったよう見えた。投開票日以降もそのコンディションを保ち、結果を待つ間も「落ち着き、我慢しましょう」と国民に語りかけていた。当確の瞬間に、確かな自信を得たのだろう。それがこの熱量となったのだ。

スピーチやプレゼンのトレーニングをどれだけ受けても、語りに熱量のこもらない人は聞き手に伝達ができない、しかし、熱量だけがあっても空回りするだけだ。

バイデン氏のプレゼンスを見れば分かる。彼は決して派手な人ではない。本来「我が我が」と前に出るタイプではないのは、トランプ氏との討論会で呆れたように「黙ってくれないかな」と呟く姿からも分かる。

また、持ち合わせた容姿に強烈な個性やキャラクター立ちしている部分も特にない。物静かでスマートなジェントルマンなのだ。

それらを踏まえれば、彼の勝利宣言スピーチには覚悟を感じる。最後に話していた彼の祖父母の言葉「faith(信念)を貫くこと、否、faithを広めること」がしっかり込められた、伝わりやすいスピーチだった。

トランプ現大統領はスピーチのみならず存在のすべてが“激辛かつ濃厚”な味だったため、それに慣れてしまっている人々には、バイデン氏は“味がしない”と評されるかもしれない。しかしデトックス期間が終われば、近いうちに正常な味覚を取り戻すだろう。

そして「赤のステーツ(州)でも青のステーツ(州)でもない、ユナイテッドステーツだ」というバイデン氏のメッセージの通り、アメリカがひとつになり健康になっていく日もそれほど遠いことではないのではないかと期待してやまない。