ヒラリーの悲願を引き継ぎ、それに応えたメッセージ
きっと、特に伝えたかったのは「小さい女の子たち」に、だろう。それはこの勝利宣言のスピーチできっと誰もが心を打たれ印象に残った一節から読み取れる。
「But while I may be the first woman in this office, I won’t be the last. Because every little girl watching tonight sees that this is a country of possibilities.」
(私が最初の女性副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。なぜならすべての小さな少女たちが今夜の光景を見て、この国は可能性の国だということを見ているからです)
このハリスのスピーチを聞いた時、筆者はすぐにある悲願のスピーチを思い出した。それは4年前の大統領選でトランプに敗れ、敗北宣言をした際のヒラリー・クリントン氏のスピーチの一節だ。
「And to all the women, and especially the young women, who put their faith in this campaign and in me, I want you to know that nothing has made me prouder than to be your champion.
Now, I — I know — I know we have still not shattered that highest and hardest glass ceiling, but some day someone will and hopefully sooner than we might think right now.
And — and to all the little girls who are watching this, never doubt that you are valuable and powerful and deserving of every chance and opportunity in the world to pursue and achieve your own dreams.」
(すべての女性のみなさん、とくに今回の選挙戦と私を信頼してくださった若い女性の方々、ぜひ知っておいてください。みなさんの代弁者となれたことが、私の最高の誇りであることを。
私たちはいまだ、あの最も高く硬いガラスの天井を打ち砕くことができていません。しかし、きっと誰かが、いつの日か、私たちが思うよりももっと早く叶えてくれることでしょう。
それから、今この演説を聞いている小さな少女たちへ、あなた方には価値があり、パワフルで、この世界であらゆる可能性を持ち、さまざまな機会に挑むにふさわしいということを、決して疑わないでください。)
ハリス氏はスピーチの中で、クリントン氏が次に託した希望を受けて応えている。4年という時を経て引き継がれた、強いメッセージが込められた壮大なスピーチ。それも、ガラスの天井を破るという悲願の達成なのだから尚更だ。
「女性初・黒人初・アジア系初」という希望の灯
また、このハリス氏のスピーチに関連したエピソードがある。アメリカの良心と希望の込められた事実として是非ご紹介したい。
4年前の米国大統領選当時、ニューヨークの女子校に通っていた筆者の友人のお嬢さんは、アメリカ初の女性大統領誕生を大変楽しみにしていたそうだ。しかしそれは叶わず、その時初めて「ガラスの天井」の存在を知ることになった。
この時、女子校の校長先生たちは「生徒達の夢や意思そして自信が壊れない様に全力を尽くす」とのメールを保護者に送ったそうだ。そして今回のハリス氏のスピーチを受けて、友人のお嬢さんが通っていた学校では、FacebookやInstagramにハリス氏のスピーチの1部を引用して学校のミッション・ステイトメントと照らし合わせたメッセージを投稿したそうだ。中学生にはハリス氏のスピーチから得たインスピレーションをもとに、将来の自分に宛てた手紙を書く作業もさせたという。
どれだけ今回の、女性初、黒人初、アジア系初の副大統領の誕生とその人物の言葉が、暗闇の中に灯された明るい希望の光になったかをお分かりいただけるだろう。そして、この様な時にこそ、その人物のプレゼンスと強いメッセージがどれだけ重要な意味を持ち、人生を左右する力を持つかを実感するエピソードだ。
ガラスの天井を破ったハリス氏の存在とそのスピーチは特に多くの女性、マイノリティ、そして特に未来への夢も希望もある少女たちがこの4年もの長い間抱え続けた傷を癒した。そして、あのビッグスマイルと全身白の装いとともに、多くの人々にとって、これからの人生の目標であり力となるだろう。米国初の女性副大統領が誕生することは、米国のみならず世界の多くの人に希望を与えるに違いない。
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