リモートワークが進んだコロナ下の2020年。組織のコミュニケーションにおいては、課題が噴出した。「従業員同士の何気ない会話がなくなった」「他部門の動きが見えにくい」「トップが考えを伝える機会が減った」。
対面コミュニケーションの制限によって、組織と人とのつながりが薄まると、従業員エンゲージメントが低下し、ひいては業績にも響く。
どうすれば組織全体の一体感を呼び戻せるか。従業員がどこにいても自発的に、誇りを持って仕事に取り組める、そんな環境をつくるため、何ができるのか。逆境に立たされた広報担当者たちは、素早く変化に適応し、新しい「社内広報」を生み出し始めた。
例えば、紙の社内報だけでなく、タイムリーに動画を配信。経営トップから、コロナ下で働く従業員の安全を守ると語りかける。さらにはリアルの社内集会をオンラインへと切り替え、企業の存在意義を改めてメッセージ。従業員が同時視聴し、自らの仕事を見直す機会をつくる。
こうした例から、デジタルを駆使した新しい社内コミュニケーションの形が創出されているのが分かる。
コミュニケーションの質も変化してきた。経営陣のプレゼンを聞いた従業員が、その場で質問をオンラインで送る。そこから議論が起き、一方的に話を聞いていたリアルの集会より、理解が深まる。そんな成功例も出てきている。
「広報会議」編集部が117社の広報関連部門に実施した調査で、「2021年に注力したい広報活動」を聞いた。社内広報は、前年から順位を上げ3位。1位メディア対応、2位デジタルPRは前年同様だった。不確実な事業環境では「社内広報」がますます重要になる。
だが、「社内広報」という言葉には、いずれ違和感を抱く時が来るだろう。従業員向けの情報を一般にオープンにする動きがあるからだ。
企業のWebサイトや企業公式のソーシャルメディアを活用し、社内報を社外からも見られるようにする。すると、メディアが関心を持ち、取材につながる。求職者が目にすれば、コーポレートブランディング、採用にもつながる。こうした社外からの反響は、従業員のモチベーションにも還元されるものだ。企業の実態を客観的に把握し、ステークホルダーとの良好な関係を構築する。そのための「社内広報」の進化が始まっている。
月刊『広報会議』編集長
浦野有代
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