コラム

48歳のピボット・ターン 〜広告会社のCDが、テックベンチャーに入ったら〜

その会社は、ユニコーンと呼ばれていた

share

【前回コラム】「なぜ、48歳で転職したのか」はこちら

パーソナル・ミッション〜自分の人生を何に投資するか

大学を卒業したての何もできなかった私が、何かを提供できるようになったとすれば、それは博報堂で出会った人たちと、博報堂での仕事のおかげでしかない。これは、退職時にお世話になった方々へのメッセージでも表した、偽りない本心である。あらゆる業種のクライアントワークの経験、若いメンバーの発言を歓迎する比較的ゆるやかな上下関係、「そもそも」にこだわる(時にはめんどくさいほど)本質追求型の打合せ文化。暗黙知的なカルチャーがあの規模の会社で保たれているのは奇跡だと今でも思う。

そんな僕も48歳になって考えた。育てていただいた恩返しは、大きな扱いを獲得したり、大きなビジネスを支えたり、後輩たちをサポートしてきたりして、もう十分に果たしたのではないだろうかと(勝手ながら)。負荷のかかる仕事を重ねたことで蓄えた能力を、そろそろ、自分自身のミッションのために使っても良いかなあ、と思い始めたのだった。僕たちはもらった給料でお金を貯めていくが、ハードな仕事や新しい領域を経験すればするほどに、能力も積み上がる。もしも、自分の能力=クリエイティビティが、無形の「資本」だとしたら?自分の「クリエイティブ資本」をどこに投下するかは、自分個人のミッションに従って決めていいのではないか?

お金を持つ投資家は、良い未来を作ってくれそうな会社にお金を投資して、良い未来の到来を早める。だったら、僕たちクリエイターも、自分が持つクリエイティビティを投資し、良い未来の到来を早めることができるはず。自分のお金は24年分の貯金といったって、ガチの投資家が持つお金の量に比べれば、微々たるものだ。それと比べれば、自分が持つクリエイティビティの希少価値、それが効果を発揮した時の爆発力の方が、はるかに大きい。

お金は、設備投資や人材獲得やマーケティングのメディア費になる。僕たちクリエイターが持つクリエイティビティという資本は、心を動かすブランドストーリーを紡いだり、新しい商品やサービスのコンセプトや、驚くような施策アイデアを生み出すことができる。もちろんクリエイターだけでなく、経験豊富なマーケターの人はマーケティングスキル、営業やプロデューサーの人はプロデューススキルを、資本として蓄えているのだ。僕は、自らのクリエイティブ資本の使い道を、自分のミッションにしたがって、決めることにした。クライアントサイドに転職しよう。より正確に言うと、自分のパーソナル・ミッションと重なる一社だけをクライアントにしようと。

クリエイティビティは無形の資産だ、と考える

次ページ 「TVCMが企業の全てとは限らない」へ続く

Follow Us