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震災から10年、住民参加型ニュースサイトの軌跡 ①新聞記者から、市民メディアへ

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マスコミもネットメディアも東京集中 だからこそ「住民」がニュースをつくる

TOHOKU360では新しい表現手法を取り入れて報道することの他に、もうひとつ挑戦したいことがありました。それは、プロだけでなく「住民」がニュースを伝えるしくみづくりです。

発想の元になったのは、学生時代の経験です。大学で国際政治学を専攻していた私は新聞の国際面を読むことが多かったのですが、新聞社では海外支局を設置できる箇所は当然限られているため、例えばチュニジアで起きたデモのことを、遠く離れたエジプトにいる特派員が現地メディアを翻訳して伝えるような例が多く見られました。「プロでなくとも、現場にいる人自身がニュースを伝えるしくみがあったら、伝聞ではない、生の情報をもっと知ることができるのではないか?」。ニュースオタクだった私は、そんな素朴な疑問をずっと抱いていました。

働き始めてから東北にやってきて、東北にはこの地域独自の視点や歴史観、多様な文化、風景、暮らし方が息づいていることを知りました。そんな豊かさを日々感じる一方で、関東にいたころはそんな情報が全く伝わってこなかったことにも気付きました。マスコミもネットメディアも東京に集まっていますし、地方支局の記者は今後もっと減っていくはず。ならば「現地にいる人」がニュースを書けば、もっと東北の面白さや独自の視点、東北から見える地域社会の課題について知ることができ、全国へ発信できるのではないか。そう考え始めるようになったのです。

では、現地にいる「住民」がニュースを書くしくみは、どのように作ればいいのだろう?私たちは真っ白なメモ帳に、仮説を描き始めました。次回はその話から始めたいと思います。

2016年2月、「TOHOKU360」のサイトが完成した日の徹夜明けの空。仙台市内の事務所兼自宅から見た朝焼けがとても美しかったのを覚えています。

安藤歩美

1987年千葉県生まれ。東京大学公共政策大学院修了後、新聞記者として宮城県に赴任し、被災地の復興を取材。独立後2016年に東北の住民みんなでつくるニュースサイト「TOHOKU360」を立ち上げ、代表・編集長。毎週木曜日にNHKラジオ第一「ゴジだっちゃ!」とNHK仙台「てれまさむね」に出演中。