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【前回のコラム】ことばで伝える仕事に惹かれて。こちら
杉本 和久(株式会社リイド アートディレクター)
デザイナーだって、コピーを書く時代。
僕は制作会社に在籍するアートディレクター。おもな業務は販促ツールのディレクションやデザイン。具体的には、商品カタログや、Web、パッケージデザイン、企業ロゴなど、さまざまなことをやる。もちろん広告もやる。
この業界は、デザインやコピーを完全に分業する時代ではなくなっている。コピーライターもデザインのアイデアを提案するし、デザイナーが写真を撮ったりもする。それぞれの役割の境界をこえて仕事をしている。近頃はデザイナーがコピーを書く機会は、確実に増えてきていると思う。
いいコピーは、アイデアのクオリティを上げる。
「コピーが書けるデザイナー」とは、誤解を恐れずに言えば、「ひとりで何でもできる人」のことだ。自分のアイデアにコピーが必要だと思ったら、自分で書いてしまえばいい。いいコピーが入っているアイデアは、ダミーコピーが入っている場合にくらべて、ずっと説得力が増し、とてもいいアイデアに見える。そして、コピーに引っ張られるようにデザインの修正ポイントまで見えてくる。これがいい連鎖を生み、勝手にいい方向に転がっていく。
逆に入れたコピーがイマイチだと、デザインまで良くない気がしてくるもの、そこから良くない原因探しがはじまり、デザインとコピーの両方を延々なおし続けることになる。
コピーを人に頼んでいたら間に合わないこともある。
一方で、提案までのスピードが求められているいま、デザインとコピーが同時に必要なんてことも増えてきている。あまりにスケジュールがタイトなため外注できず、たとえ荒削りでも自分でコピーを書かないと間に合わないこともある。もらった素材を組み上げるだけのデザイナーだと、この流れについていけなくなってしまう。
さらに、コロナの影響など、プロジェクトがオリエン段階ですでに遅れていて、なんとか巻き返そうとしているような場合でも、最初からコピーも含めた完成度の高いアイデアが提案できれば、すこし状況を良くすることができるはずだ。
これが、アートディレクターの僕が、コピーライター養成講座に通うことにした理由だった。