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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

『竜とそばかすの姫』は未来を想定して描いていたはずが「急に今日的になってきた」(ゲスト:細田守)【前編】

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“家族”というテーマにこだわる細田監督の、娘に対する想いとは

権八:今回のテーマはラブストーリーとおっしゃってましたけど、もちろんそこが太い軸としてあるんだけど、一方で細田監督の映画は“家族”が大きなテーマとしてあるじゃないですか。ストーリーの中でいろんな形で表れていますよね。“家族”についての問題意識はおありなんですか?

細田:それは強く自分の中にあります。要するに、今現代描くべきものとして、みんな一番克服しなきゃいけない問題だって思ってると思うんですよね。昔は、一種一様にどんな家族であっても「家族はこういうもの」って決まってたと思うんですよ。でも今はそうじゃなくて、人それぞれに家族のありようがある。誰かが「家族の形ってこうですよ」って決めた形がもう無いっていう時代の中で、じゃあどうやって家族と自分というものの関係性を形づくるのか、もしくは折り合いをつけていくか、もしくは無視するか、もしくはすごい積極的に作っていこうとするか。いろんな態度があると思うんですけど、非常にいろんな形の家族があり得るようになってきてるんだと思います。

そのぐらい世の中の価値観が「みんなそれぞれ違いますよ」って徐々に変化していっている。「人間はそれぞれ違う」ってことは、「そこにまつわる家族も……」ってみんな違ってくる。そういう中で、お父さんやお母さんに抱えているモヤモヤとしたものを上手いこと話せない子どもは多いような気がするんです。そういうバラバラになった中で、ひとつ家族というものを映画を通して考えていけたらいいなとはいつも思うんですよね。

権八:さっきボロ泣きしちゃったっていうのは、もちろん圧倒的に美しすぎて感動して、それが具現化するクライマックスの素晴らしいシーンでもウワーって涙止まらない……みたいなこともちろんあるんですけど。一方で家族の絆のシーンで、役所広司さん演じるお父さんが主人公のすずちゃんに投げかけてあげる言葉だったり、2人の関係のギクシャクした感じ。僕らはみんな男親で子どもがいたりするんで(笑)、あの辺はたまらないものがある。

細田:自分も娘がいて、まだ5歳なんですけど、今は仲良くしてくれて父親として尊重してくれているところがあります。でも、多分それはそんなに続かずに、いつかは個人として対立するかもしれないし、ひょっとしたら家族内の問題において真反対の立場をとって口もきかないみたいなことにもなりうるかもしれない。そんなことを今から想像すると、そういう中でも娘に対しては「この時代を生き抜いてほしい」って親子関係としても思う。

インターネットについて言えば、これからの子どもたちは生まれたときからこういう環境にいて、スマホは気づけば必ず持って、SNSに登録して、グループLINEに強制的に加入させられて(笑)。人間関係の渦に巻き込まれていくでしょう。うちの娘の幼稚園での様子を見ていると、そんなに友達づくりが上手い方じゃないし、不器用なところもある。「このインターネットを介した人間関係の荒波の中でやっていけるんだろうか」ってすごい思うんですよね。インターネットがない世界で生きていこうとすることは現代的に無理だし、だからこそいろいろ悩むことがあるかもしれないけど「強く生きていってほしいな」とか「負けないで希望を見出してほしいな」とか、そういう願いが映画の中に入ってると思うんですよね。

権八:入ってますね。

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