コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

若い子が見る映画だからこそ、インターネットの世界を肯定的に描いてあげたい(ゲスト:細田守)【後編】

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ディズニーのレジェンドアニメーターとの運命的な出会い

権八:キャラクターデザインも、今回は特別。

細田:ジン・キムさんという、モダンディズニーというか、ここ10年ぐらいのディズニーのキャラクターデザインを引っ張ってきたレジェンドアニメーター・デザイナーさんです。その方に主人公のベルのキャラクターデザインをお願いしました。

権八:以前から交流はあったんですか?

細田:いや、そうじゃないんです。映画『美女と野獣』の1991年版の野獣のアニメーションの原画を描いたグレン・キーンさんが、僕は30年間ファンで。今回新しく自分で『美女と野獣』をつくるにあたって挨拶に行かなきゃいけないと思って、ロサンゼルスまで挨拶しに行ったんですよ。そしたらちょうどグレン・キーンさんが『OVER THE MOON』(邦題:フェイフェイと月の冒険、2020年)という映画を監督してて、そのときのキャラクターデザインがジン・キムさんで、横にいらしたんです。「うわ!ジン・キムだ、すげえ!」って(笑)。それでグレン・キーンさんと一緒に「当時の『美女と野獣』はどうやってつくったんですか」って話をするうちに、こっちにも興味を持ってもらえて。それで「じゃあやりましょうか」って言ってくださったんですよね。

澤本:良い運に恵まれてるんだね。

権八:いろんな奇跡が起きてる。

中村:ベルの歌のシーンは、ディズニー的なぐっと来る感じを彷彿とさせましたよね。どういうふうにつくったかも聞きたいんですけど、正直、できたときに恍惚としてしまうんじゃないかなというか、自分でつくっておいて「すごいものができたぞ!」みたいになったんじゃないですか?本当に感動しました。

細田:歌ってるときのベルがかわいいんですよね。ちょっと目を見開いたりとか、伏目がちになったりとか、上向いたりとか。ちょっとした動きをするだけで存在感がある。デジタル・フロンティアっていう会社のずっと一緒に映画をつくってきたスタッフたちが、CGを今回むちゃくちゃ頑張ってくれて。だって、日本にいてディズニーのジン・キムさんのキャラクターでアニメーションをつくるなんて機会はなかなかないじゃないですか。

日本のCGはアメリカのCGアニメーションに対して及ばない、みたいな部分はみんな感じてるかもしれないけど、そうじゃなくて「もっと超えていこう」「もっとそれに匹敵するものを」「もっと別の形で成功しよう」って思いながらやってると思うんですね。それが今回ぴったりはまった。こういう形だったら日本でCGでアニメーションやりながらも、ちゃんと世界の人にも見てもらえるようなところまで高められるって自信を持ってもらえたと思う。そういうことも含めて今回の映画は良かったなと思うんです。

中村:CGになると、直接監督がレンダリングするってことじゃないと思いますが、ディレクション残すとか、監督ならではのメソッドはあるんですか?

細田:やっぱり、いきなりではできないんですよ。CGディレクターの堀部亮さんと下澤洋平さんの2人が『サマーウォーズ』のCGディレクターで。2人とずっと一作品ごとに課題をクリアしながら積み上げていって、それでついに今回いよいよキャラクターアニメーションに挑戦しましょう、感情を観客に伝えるためのアニメーションをしっかりつくるってことにチャレンジしましょうってことが課題設定できたんです。だからいきなり初顔合わせのCGをつくる人たちとこれはできないんですよ。

澤本:なるほどなるほど。歴史だ。

細田:そうですね。そういう意味では積み上げて、一緒にみんなで映画つくってきて、しんどいときも含めて乗り越えてきたっていうことなので、彼らの力が本当に発揮された映画になって良かったなと思いますね。

権八:ベルちゃんにしても、すずにしてもそうなんだけど、ちょっとしたアクションとか指先ひとつの動きから、いろんな感情が痛いほど伝わってくる。すごいですよ。

細田:もともと<U>はコンピューターの世界だからCGでキャラが動くのは当然だっていう、物語的なエクスキューズを一応置いておいて。その上でエモーショナルなお芝居や表情をつけ込んでいこうってやってたので、そういった意味でも入りやすかったんじゃないかなって気もする。

澤本:確かにそうだね。世界自体がある種のゲーム世界だから、CGであることがリアルなんだね。

権八:観る側もそれを前提としてるから、没入できる。

細田:普通だと技法で変えちゃうんですよ。例えば、コンサートシーンはCGでやって、普段の会話シーンは手描きのアニメでやるという作品がすごい多い。そうじゃなくて『竜とそばかすの姫』は手描きとCGを、現実世界と<U>の世界のコンセプトで分けてる。だから、<U>の世界でどうしてもしんどくて手描きで描きたいときも頑張ってCGでやって、現実世界でしんどいところもなるべく手描きで描いた。そこを分けたのがわかりやすくて、見る人に伝わってるんじゃないかなという気はします。

次ページ 「細田作品に夏公開が多い理由とは?」へ続く

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