メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

若い子が見る映画だからこそ、インターネットの世界を肯定的に描いてあげたい(ゲスト:細田守)【後編】

share

佐藤健と細田監督の縁を結んだのは澤本さん?!

権八:音楽がまたカッコいいんですよ。

細田:ありがとうございます!(笑)

権八:「うわ~すげえな」と思って、最後クレジット見たら常田(大希)くんとか入ってて「なるほど!」みたいな。

澤本:音楽はどうやって決めていったんですか?

細田:音楽はね、一番最初に岩崎太整さんっていう映画音楽家の人にお願いしました。お願いしたら「今回はたくさんの作曲家でいきたい」っていう提案があったんですよ。たくさんのスペシャリストを複数集めて音楽を構成したいと。今回の<U>というグローバルな世界を表現するのに、複数の作曲家がやるのが世界の広がりを表すのに良いだろうとなったんです。

キャラクターデザインも10人ぐらいいるのを知ってたんで、音楽もそうやってひとりじゃなくて分けるべきだろうと提案してくれて。それで常田大希さんや、「メタルギアソリッド」の音楽をやっていたルート(ヴィヒ・フォセル)さん、坂東(祐大)さんなど、様々な人が『竜とそばかすの姫』の映画音楽に携わることになったんですよね。

中村:中村佳穂さんが主人公のすずとベルの二役を務めています。オーディションでお会いになって、どういう経緯で抜擢されたんでしょうか?

細田:元々僕、中村佳穂ファンだったんですよ。っていうか、音楽ファンだったら誰もが中村佳穂は注目していて、「面白い人がいる」ってことは知ってたと思うんだけど。僕は特に好きで、奈良にちっちゃなライブを観に行ったり、渋谷のラジオ番組でスタジオライブをやるっていったら忍び込ませてもらったりもしていて。もしも波長が合えば映画の曲でもつくってもらったり、詞でも書いてもらったりできればいいなって思ってたんですよね。

今回ベルとすずのオーディションをやるにあたって、中村さんも普段京都在住で遠いんだけど「もしよかったら来てもらって歌だけでも聞かせてもらえれば」みたいな感じで呼ばせてもらったんです。歌はもちろん最高で、それは誰しもがすでにわかってる。その後、劇中のベルとすずのセリフを読んでもらったんです。そのセリフを読んでもらった瞬間に、こりゃすごい表現力を持っているぞと。「えぇっすごい!」「なんでこんなことできるの」ってプロデューサーたちも全員一同びっくりしてひっくり返っちゃって。「これはすごい」って目を見合わせたんです。全然期待してなかったから(笑)。演技できるなんて知らないし。そういう驚きがありましたね。

権八:その出会い方もいいですね。

細田:もともと中村さん自体が歌をすごく大事にする人なんです。大きなチャンスを掴んで飛躍しようとか、オーディションに勝ち抜こうとかあんまりそういう人じゃないんですよ。どうしたら良い環境で歌を歌えるか、どうしたら歌と自分との距離感をベストな状態で歌えるか……そういうことにずっと気をつかっている人。そういうことを大事にしてる姿勢がそもそもすずっぽいっんですよね。すずも自分自身の自意識を満足させるために歌い出した人じゃなくて、もっと内的必然が別にある人なんですよね。そういうところもどこか似てるなと思ったんです。

澤本:そこが演技してない感があって、生の声がした。すごいよね。そして竜のは声は佐藤健くん。やっぱりうまいね。

細田:あの人は本当にすごい。健くんが素晴らしいのは、竜ともうひとり、竜の正体みたいな人も当然内在しているわけで。いろんなキャラがそういう二重線の中にいるんですけども、もうひとりの竜の表現もすごいなと思って。デフォルメで彼は表現してるんじゃなくて、詳しくは言えないんですけど、ナチュラルレベルで設定を表現してることにも驚愕しました。「そっちで来んのか!」みたいな。

健くんってデフォルメもうまいんですよ。そっちが上手いことも知ってたんで、そっちで来るんじゃないかと思ったら、まさかのナチュラルなんですよね。中村さんや幾多(りら)さんの他の役者さんのトーンとちゃんと合わせながら、なおかつ差をつけるのも「なんちゅうやつだ!」と思って。本当はずっと出て欲しかったんですけど、きっかけは実は澤本さんなんですよ(笑)。

一同:(笑)。

澤本:すいません(笑)。

細田:それで澤本さんにも「ちょっと声聞かせてくださいよ」と。

澤本:細田さんとはもともと日本酒仲間なんです。健くんとは昔「どん兵衛」(日清食品)のCMやってて。それで山形にロケに行ったときに、日本酒を飲んで。1回細田さんと私と健くんで飲んだことがあるんです。

権八:なるほど。

細田:健くんと会ったときの印象が、作品づくりに対して、つくり手としての貪欲さを感じたんですよね。俳優さん以上にプロデューサー的というか。「もっといい作品をつくっていきたい」という問題意識と「いい作品をつくろう」という熱意をものすごく感じた。だから好きになっちゃったんだよね(笑)。そういう姿勢と今回の竜が、絵コンテ描いてる間も重なって。キャスティングが始まってないのに「健くんにやってもらったらすごくいいんじゃないか」ってプロデューサーに言ってて。それで本当に引き受けてくれたので本当良かったです。

澤本:今回の『竜とそばかすの姫』も、多分健くんが「やりたい」って思ってるような作品だと僕は思います。前から、日本だけじゃなくて世界にもちゃんと通じるものをやりたいっておっしゃってたじゃないですか。僕この映画を観たときの印象って、もちろん素晴らしいもそうだけど、日本の映画が世界に対して出ていくときに「この形ってあるな」って思ったんですよ。情感は日本の情感だけど、大きな構造としては世界と全く通ずるものがある。日本と世界がミックスされてるけど日本の映画みたいな。それは多分常田さんのつくられた音楽とかも邦楽というよりは違った感じになってるし。

細田:そうかもしれない。

澤本:グローバルなものができたんじゃないかなってお見受けしてたんですよね。

細田:そうですね。もともとベースになってるのが『美女と野獣』で、イメージしてるものが1991年版だったり、ジャン・コクトーの『美女と野獣』だったり。そういうようなこともあって、日本のアニメとはちょっと違うような切り口かもしれないですよね。

次ページ 「ディズニーのレジェンドアニメーターとの運命的な出会い」へ続く