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コラム

「つなぐ課」でつないだもの

官民連携のポイントは「脚本力」、eスポーツで高齢者の課題解決へ

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■3、課題をとらえた「脚本力」を発揮して官民連携を実現

このように官民連携のプロジェクトを実現するには、組織内で通用し、共感を得られるようなロジックを組み立てることが大切だと考えています。「ストーリーづくり」とも言えるかもしれません。でももちろん、材料が無い状態で最初からストーリーをつくるのは難しいですよね。

市民の課題やニーズをしっかり捉えた取り組みにするという大前提の上で、「ワクワク先行型」でスタートし、いろんな人にヒアリングする中で課題の実態(材料)をおさえ、ストーリーを組み立てていくアプローチがあっても良いのではないでしょうか。

今回でいうと、eスポーツを何かに使えないかとヒアリングをして動き出してみてから、後から「デジタルデバイドの解消」「フレイルの予防」という着地点が見えて来ました。

このように、行政課題(ニーズ)と民間が持つ技術・サービス(シーズ)をうまくかけあわせたストーリーを組み立てることができる「脚本力」が官民連携の実現するためには大切な力なのではないかと思います。

では、実際にそのストーリーを組織内でどのように伝え、官民双方の関係者が一緒になってプロジェクトの実施にこぎつけているか。私の場合をご紹介します。

01  関係者間で出たアイデアやヒアリングにもとづくファクトをパワーポイントでストーリーに組み立てまとめる。ストーリーの構成としては「①課題・背景 ②対象 ③具体的な内容④効果」といったフォーマットをベースに、できるだけコンパクトに仕立てる。

02  そのパワーポイントを使いながら、組織内の関係者や連携パートナーとなる民間企業の方々との「認識合わせ」をする。行政と民間の間はもちろんのこと、行政の中でも部署や立場で物事の考え方・捉え方は異なる場合が多いため、この「認識合わせ」がとても大事(!)

03  さらにプロジェクトに関わる全ての人とビジョンを共有し、進んでいくベクトルを合わせる。その中でいただいたアドバイスやご意見も反映していくことで、当事者意識をどんどん拡げていく。

このように、パワーポイントでつくったひとつの資料を使って関係者をどんどん当事者として巻き込み、ともにプロジェクトを育てていくイメージで調整を進めていきます。

今回は、NTT西日本を中心にeスポーツを体験する環境面の整備をしていただいたほか、参加いただく方々に寄り添った心理面でのサポートも不可欠でした。抵抗なくプレイしてもらうために、実証事業の対象をデイサービスなどのシニアサービスを利用している高齢者に限定。その事業者のご協力のもと、施設でのレクリエーションやプログラムのひとつとして、利用する高齢者の方々へeスポーツ体験を提供するという座組みにしました。もちろんその事業者の方々ともビジョンやベクトルを共有したうえでプロジェクトを進めています。

そんな中でもさまざまな課題が出てきます。手元を見ずにコントローラーを操作するということも、まずはそれに慣れていただく段階から、丁寧に始める必要がありました。デジタルの裾野を広げるには、高齢者に寄り添った設計が求められ、まさに試行錯誤を繰り返しながらの実証事業を続けているところです。

次回は、つなぐ課での経験を経て、私が今つないでいるものについてお話しようと思います。
私がなぜつなぎ続けるのか、「つなぐ」ことの本質について、考えてみます。