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「顧客の声」というデータを生かして目指す共創型「ナカマーケティング」

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アダストリア
執行役員 マーケティング本部長 田中 順一 氏
カタログ通販、インターネット広告代理店を経て、2011年にアダストリアに入社。2021年3月より現職。EC、データ、デジタル戦略などを統括する。

 


チーターデジタル
日本法人副社長 兼 CMO 加藤 希尊 氏
WPPグループ、セールスフォース・ドットコムを経て2019年11月より現職。2014年にマーケターのネットワークである「CMO X」を設立。

 

30を超えるブランドを展開するアダストリアでは、自社ECサイト「.st(ドットエスティ)」を中心に、一人ひとりのお客さまに合わせた十人十色のコミュニケーションの実現を目指している。その取り組みを支援するのがチーターデジタルだ。企業と顧客の垣根を超え、人と人とがつながる、新たなコミュニケーションの形を目指すアダストリアの取り組みとは。
 
編集協力/チーターデジタル株式会社

ルールをつくり込むのは半分まで 自由演技の中に工夫が生まれる

加藤:田中さんが率いるマーケティング本部のカバー領域は、かなり広いですね。

田中:ECを中心とするWeb事業の他、宣伝、広報も担当していますが、自分のミッションは究極的には顧客接点を増やし、さらにそこでの体験をより良くすることだと考えています。そこで、ECについては売上責任を負っていますが、毎日50万人以上の方がサイトに来訪してくださるので、単にモノを売るだけではない重要な顧客接点と捉えています。

加藤:アダストリアさんは十人十色の世界の実現を目指し、パーソナライゼーションを進めています。その取り組みで私たちもご一緒させていただいていますが、ECという接点で得られるデータは、一人ひとりのお客さまを理解するうえでも重要なのではないでしょうか。

田中:NetflixやInstagramのパーソナライゼーションは、ユーザーにとって心地良い体験を提供していますよね。僕はアダストリアで、このレベルの体験を提供することを目指しています。そして、こうした体験を実現する上では加藤さんが言うように、データの活用が欠かせません。

加藤:具体的にどのようなデータを活用しているのですか。

田中:現在、マーケティング本部で活用するデータは大きくは2つあります。ひとつは「.st」を利用してくださるお客さまの声。商品購入後のレビューだけで年間で30万件を超える声をいただいています。2つ目が購買をはじめとする行動データ。当社ではECとリアル店舗の顧客基盤の統合が完了しているので、ここで言うデータはECだけにとどまりません。

前者のお客さまの声はECサイトのUI/UX改善に生かす他、購買データと合わせて各ブランドのMDにも共有し、商品の企画・開発に生かしてもらえる体制を整えています。もちろん、僕たちの部門ではこれらのデータをパーソナライゼーションの実現のために活用しています。

加藤:アパレルはお客さまの嗜好も多様なので、パーソナライゼーションの取り組みは、大きなチャレンジですよね。先日、米国で「THE NORTH FACE」のロイヤルティマーケティングを担うマーケターと対談したのですが、例えば同じダウンジャケットを購入したお客さまでもアウトドアユース、タウンユースの目的の違いで使用方法が全く異なるそうです。だからこそ顧客の嗜好性に関わるゼロパーティデータを積極的に取得し、適切なレコメンデーションを実現する必要がありますね。

米国「THE NORTH FACE」でロイヤルティマーケティングを担うマーケターとオンラインで対談したという加藤氏はアパレルにおけるパーソナライゼーションでは、ゼロパーティデータの取得が重要であると指摘する。

田中:アダストリアは全国に約1300の店舗がありますが、そこでの接客では、加藤さんが言うようなパーソナライゼーションが実現できています。一人ひとりの人を介して提供してきた、アダストリアらしい体験をいかにオンラインでも提供できるかが、次のテーマだと考えています。

加藤:コロナ禍において2020年春は店舗の休業を余儀なくされたと思いますが、アダストリアでは「.st」の売上が前年同期比で150%に伸びました。コロナ禍で顧客とのリアルな接点が失われ、これまでのビジネスモデルがフロー型であることに気づいた企業も多いと聞きますが、アダストリアは顧客との関係性がストック型になっていたのですね。

田中:実はECの売上については、店舗スタッフの努力によるところが大きいんです。店舗でしっかりとECの案内をしてくれているので着実に利用者が増え、コロナ禍においても売上を守ることができました。僕は、マーケティング本部はおまけみたいな存在で、当社にとっては魅力的な商品と店舗スタッフという人が、最大の資産だと考えています。お客さまからデータを預けても良いと思ってもらえる関係性を構築してくれているのも、店舗のスタッフが企業の垣根を超えた人と人との関係をお客さまとの間に築いていてくれるからこそ実現することです。

加藤:田中さんはお客さまと人と人との関係性をつくる、「仲間」マーケティング、略して「ナカマーケティング」を提唱し、実践しているそうですね。店舗スタッフとの協力関係やお客さまの声をMDに生かす取り組みなど、多様な人たちとの関係性のなかで、共創型の新しいマーケティングを志しているように思います。

田中:ナカマーケティングは、関わる人すべてがWin-Win-Winになることを目指すもので、一方的な発信ではなく、双方向のコミュニケーションの末に実現するものと考えています。もう1点、重要なのが起点となる自分たちがまずワクワクできているか。当社の会長はよく「ワクワク、楽しい」という言葉を使いますし、「.st」も「楽しいほうのファッションストア」というコンセプトを掲げています。それでは、店舗スタッフなど関わる一人ひとりがワクワクしながら楽しめるようにするには、どうしたらよいのか。僕は、ルールや仕組みをつくりすぎないことがポイントではないかと考えています。

もちろん、事故が起こらないよう、半分はしっかりとつくり込むけれど、残り半分は運用する人の自由演技に任せる。そうすると、店舗スタッフがコーディネートをアップするコンテンツも、一人ひとりが工夫をしてくれる。スタッフは日々お客さまに向き合っているので、自由演技の発信が、僕らにとって大きな気づきを与えてくれるので、それを次の施策に取り入れることができます。

マーケティング本部の仕事はゲームでいえば、ゲーム機というハードをつくるようなもの。でも大事なのはそこに乗るゲームコンテンツというソフトウェア。魅力的なソフトが出てくれば、ハードである機器も進化しないといけない。つまり、マーケティングも仕組みを進化させていく必要がある。この繰り返しの中で、お客さまにより良い体験を提供できるようになると考えています。

共創型の新しいマーケティングの形、「ナカマーケティング」を提唱する田中氏。顧客と企業だけでなく、社内においてもマーケティング本部とMD、実店舗のスタッフなど多様な人と人とのつながりを重視している。

加藤:ツールに焦点を当てたデータ活用の議論を進めてしまうと、マーケティング自体が、とてもつまらないものになりかねないという危惧がありました。テクノロジーだけでは埋まらない余白にこそ意味がありますし、この余白とは人の情緒的な部分。お客さま、店舗のスタッフなど、関わる多様な一人ひとりの人の力や、人と人とのつながりを生かす田中さんだからこそ、テクノロジーに依拠しすぎない新たなパーソナライズ体験を実現できるのではないかと思います。



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