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「そのSNS投稿、大丈夫?」ステマに関する10の疑問に答えるQ&A

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TikTok Japanは1月25日、「TikTokコンテンツをTwitterインフルエンサーに対価を支払って投稿依頼していた件に関するお詫び」をサイト上に掲載。ステルスマーケティングにあたるとして多くのメディアで報じられた。広告業界において新たな事業者やプラットフォームなども急速に台頭する中、改めて「ステマ」と「宣伝」の境界線についておさらいし、基本を理解しておきたい。WOMマーケティング協議会による口コミマーケティングに関するガイドラインの策定・アップデートにも携わり、「アドタイ」上でも度々ステマについての疑問に答えてきた片岡英彦氏が2回にわたり、解説する。

東京片岡英彦事務所 代表
企画家・コラムニスト・戦略PR事業
片岡英彦(かたおか・ひでひこ)

日本テレビを経て、アップルコンピュータのコミュニケーションマネージャー、日本マクドナルド マーケティングPR部長などを歴任。企業のマーケティング支援活動のほか、WOMマーケティング協議会発足時のガイドライン検討委員、アップデートチームメンバーを務める。東北芸術工科大学 企画構想学科 教授。

 

「ステマになる・ならない」の具体的な境界線はどこ?

前回の記事では、WOMマーケティング協議会が2010年に制定、2017年に改訂した口コミマーケティングに関するガイドラインをもとに、「ステマ」と一般的な「宣伝」との“境界線”のポイントについて解説した。後編にあたる本記事では、実際によく問い合わせを受ける内容などをもとに10の事例を挙げながら「ステマになる」「ならない」の違いについて、理解を深めていこう。

1)口コミと広告の“境界線”は何か?

Q1
インフルエンサーにお金を払っているが、「投稿内容」についてはインフルエンサー自身の判断に任せている。自社から「良いレビューを書いてくれ」とも言っていない。これは「ステマ」にあたるのか?

A
投稿内容に指示をしている場合は「口コミ」=「広告」になる。便益を与えて投稿を依頼する以上は、「関係性の明示」を行うことが原則である。「内容を管理していない」からといって、そのことを理由に「広告ではない」と見なされるわけではない。

一方で、公開される内容に関しては「口コミ」と「広告」には違いもある。

・口コミ=消費者間で行われる自発的なコミュニケーションであって、原則として投稿内容は情報発信者に委ねられる(事前に企業側が内容を把握する場合もある)。
・広告=企業側がその内容に関して事前に全てを把握し、内容の責任を負う。

つまり「口コミマーケティング」とは、広告的な要素をもちつつ広告とは異なる広がりをもつマーケティング活動とされる。
 

2)仲介者(代理店)を介して便益を供与した場合

Q2
A社から依頼を受けたPR会社(B社)が、インフルエンサーであるC氏に金銭提供を行った。この場合、C氏に直接接触するのはB社である。A社とC氏の間に「関係性」はあると考えるのか?C氏の投稿にはA社との「関係性の明示」は必要か?また、B社の名称は明示されなくてもよいのか?

A
C氏に直接接触するのはB社であっても、A社とC氏の間に「関係性はある」と見なされる。この場合、A社の名称が投稿に明示されなければならない。A社との関係性が明示されていれば、代理店であるB社の名称は必ずしも明示されなくてよい。
 

3)著名人・芸能人による投稿の場合

Q3
芸能人の投稿で「親善大使」などとプロフィールに記載があれば「ステマ」にはならないのか?

A
芸能人であっても、個人による情報発信はガイドラインの対象となるが、プロフィール欄に「肩書(企業との関係性)」がしっかり明示してあれば、消費者を誤認させることはないと考えられるので「ステマ」にはあたらない。
 

4)「関係性の明示」を行う場所はどこか?

Q4
企業ホームページで紹介している人物であれば、自社との「関係性の明示」は省略してもよいか?すでに「明示している」状態にあたるのか?

A
「ホームページで紹介されているから明示しなくてもいい」という考え方は間違っている。「消費者が正しく情報を知る権利が保護されているか」という視点で検討するべきである。
口コミマーケティング活動のターゲット層に対して「十分に認知があるかどうか」が基準となる。この判断は企業側の「裁量の範囲」になる。積極的に「関係性の明示」を行うことを推奨したい。
 

5)オフサイトで「働きかけ」をした場合

Q5
街頭や実店舗で商品サンプリングを行い、口コミの創出を図る場合にも「関係性の明示」は必要か?消費者が自発的にSNSに投稿する場合にも「関係性の明示」は必要か?

A
情報発信者への金銭・物品・サービスなどの提供の主な目的が、口コミマーケティングではない場合には、関係性は明示する必要はない。主な目的が口コミマーケティングかどうかは裁量の範囲となる。情報発信者への働きかけ自体が街頭や店頭であっても、その後、情報発信者と受信者とのやり取りが、SNSなどオンライン上で行われる場合には、このガイドラインが適用される。
 


 

6)「関係性の明示」の方法

Q6
「関係性の明示」のためには、とりあえず「#PR」とハッシュタグを入れておけばいいか?

A
いわゆる「PR表記」は、「便益の明示」にはなっても、「主体の明示」にはならない。「関係性の明示」としては不十分である。「関係性の明示」には、「主体」+「便益」という2つの要素が含まれていなければならない。

提供する便益の内容に応じて「金銭あり」と「物品・サービスなどのみ」のどちらの場合でも使える便益タグと、「物品・サービスなどのみ」の際だけに使用できる便益タグをガイドラインでは定めている。「物品提供だけ」であることを特に強調したい場合は、「物品・サービスなどのみ」の際だけに使用できる便益タグを使用することができる。

なお「#PR」は、Public Relationsと混同のおそれがあるため使用は推奨していないが、現状のWOMマーケティングの実態に鑑み、暫定的に使用を許容している状況にある。以下がWOMJガイドラインで定める「便益の内容別の便益タグ」になる。

SNS投稿でどのタグをつけるかの参考に活用したい
※出所/WOMJガイドライン(2017年12月4日版)「便益の内容別の便益タグ」より

7)「重要」であるかどうかの基準

Q7
イベント来場者に「お茶を出す程度」でも「関係性の明示」がないと「ステマ」になるのか?

A
金銭・物品・サービスなどの提供が「重要でない」場合には、関係性明示は不要。「重要」とは、下記のいずれかが成り立つ場合を指す。

・金銭・物品・サービス等の「提供の有無」により、“情報発信者の投稿内容”に違いが出る場合。
・金銭・物品・サービス等の提供の「明示の有無」により、“情報受信者の行動”に違いが出る場合。

「重要であるかどうか」は、金額等の一律な基準ではない。企業側の「裁量の範囲」となる。例えば、イベントの参加者への「交通費の支給」程度であれば「重要でない」と判断することで「関係性の明示」については不要とすることも許容される。
 

8)関係性の明示はいつまで行うべきか?

Q8
商品提供を受けたら、その商品についてコメントを投稿する場合には、永遠に関係性の明示をしないと「ステマ」になるのか?

A
情報受信者の「正しく情報を知る権利」を保護するため、例えば、物品提供を伴うモニター企画の場合には、「適切なモニター期間」をあらかじめ定めることで、期間中は「関係性の明示」を継続することが推奨されている。「イベントへのご招待」の場合には、イベント参加期間中に加え、イベント終了後であっても、そのイベントに関係する投稿の際には、「関係性の明示」は行われるべき。
 

9)レビュー用機材を貸与した場合

Q9
レビュー用機材の貸与など後から「返却する」ことが前提である場合も「関係性の明示」がないと「ステマ」になるのか?

A
情報受信者にとって、情報発信者が自ら購入したものなのか企業による貸与(提供)なのかは区別がつかない以上、貸与の場合にも便益の明示は必要となる。
 

10)「SNSへの投稿」が応募の条件の場合

Q10
「SNSに投稿することで応募とみなす」というようなケースでは「関係性の明示」は必要なのか?

A
「懸賞に当選する権利や、当選確率が上がる権利」は、「サービスなど」の提供に含まれるが、大多数の応募者が金銭・物品・サービスの提供を受けるわけではないので、「懸賞に当選する権利や、当選確率が上がる権利」それ自体は、直接の便益の提供に比べて「重要ではない」と考える。従って、懸賞応募の際の「関係性の明示」は「必須でなく推奨」とされる。