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特有の質感で人の心を惹きつける 街を照らしたネオンサインのいま

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かつて、企業広告としてビルの屋上などに設置され、繁華街では“隣よりも目立ちたい”と競い合うように街を照らしたネオンサイン。LEDの普及を受けて姿を消しつつあるなか、いま再びブームが起こっている。その背景や現状について、ネオンサイン製造会社シマダネオンでデザインを行う森山桂氏に話を聞いた。

ブームの背景はSNSの普及「価値を高め、技術を守りたい」

ライブハウス「SANKAKU」(渋谷)のネオンサイン。

グラフィックデザイナーの仕事をしていた森山氏が、ネオンサインの技術を学びたいとシマダネオンの門をたたいたのは、7年前の2015年。現在、自身のブランドである「NO VACANCY」を立ち上げ、シマダネオンのパートナーとして、工場を拠点に、受注・デザイン制作を行っている。

森山氏がブームの兆しを感じたのは6年ほど前。ヴィトンやグッチなどのハイブランドが、ローンチイベント等でネオン看板を使うようになったのだという。そこからInstagramなどSNSを中心に、「エモい」「ノスタルジック」と若者の間で広がっていった。

1990年代初頭をピークに、受注は減少。都市景観条例や消防法の規制のなかで、大規模なネオンサインの設置は難しくなった。ガラスを使用し高電圧をかけることから、危険なイメージを持たれることも多いのだという。現在、材料となるガラス管を制作しているのは国内で1社のみ。すでにいくつかの種類は在庫がなくなり、つくることのできない色合いもある。調光や点滅を制御する基盤をつくれる技術者も、森山氏の知る限りでは2~3人。また設置には特種電気工事資格(ネオン工事資格)を要するが、その技術者も減少しているという。

「技術者の高齢化が進んでいることもあり、当時もインターネット上にほとんど情報がありませんでした」。そこで森山氏はサイトを立ち上げ、Instagramでの情報発信を始めた。いま、イベントやライブ、ポップアップストアで活用したいという企業や、そうした作品を見て魅力を感じた個人からの依頼を、途切れることなく受けている。

大きさにもよるが、発注から完成までは約1カ月。クライアントの要望を基にデザインを提案し、図案を作成。社長の島田真嘉氏がガラス管を曲げて、ガスを注入する。

「島田社長も業者の皆さんも、やっぱりネオンが大好き。いちどは減ってしまった仕事をまたやれるようになって、懐かしみながら、楽しんで仕事をしてくださっているのを感じます」と森山氏は語る。取材日も多くの人が工場を訪れ、森山氏とやり取りを重ねていた。

森山氏は展示会を主催するなど、その魅力と技術を伝え続けている。

「注文いただく方は、LEDではなく“本物のネオン”を求めています。国内での生産を守り続けるためにも、一過性のブームで盛り上がるのではなく、工芸品のように、価値を高めることが必要だと考えています」(森山氏)。

ネオンデザイナー/グラフィックデザイナー
森山 桂氏

デザイナーとしてPC以外のツールを模索する中で、ネオンサインに出会いその魅力に取り憑かれる。ネオンサインブランド<NO VACANCY>を立ち上げ、東京大田区にあるネオンサイン製造会社・シマダネオンをベースに活動。奈良 蔦屋書店にて、ネオン展「Life In NEON」を開催中(4月20日まで)。