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カーボンニュートラル経営実現の3ステップ、広報の役割は?

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気候変動リスクが深刻化する中、大気中への人為的なCO₂排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル実現の必要性が叫ばれています。一方でCO₂は目に見えず、達成に向けた取り組みは長期にわたるもの。企業はどのようなステップで取り組めばいいのでしょうか。また広報ができることは何でしょうか。ボストン コンサルティング グループ(BCG)の伊原彩乃氏に聞きました。本稿は広報会議2022年6月号で掲載の記事をダイジェストで紹介します。

カーボンニュートラルは、全社一丸となって取り組むべき重要課題になっています。その実現においては、経営層から従業員まで意識を統一する「社内広報」が欠かせません。さらに、目に見えないCO₂の削減を語るには、言葉を尽くして説明する必要があります。カーボンニュートラルへの取り組みを、企業の競争優位性の源泉にしようとすれば、社外への「より丁寧なコミュニケーション」が重要になります。

社内広報の知見を活かす

カーボンニュートラル実現に向け企業が行うことを3つのステップと10の取り組みで整理したのが図1です。なかでも広報の役割が期待されるところを見ていきます。

 
ステップ1「準備をする」で最初に取り組むのが「❶全社の意識を統一する」。ここを一番に行うのがカーボンニュートラル経営の特徴です。なぜならカーボンニュートラルに対しては「気候変動は深刻で絶対に達成しなければ」という方と、「本当に行う必要があるのか?ブームなのでは?」という方まで、幅広い考えの方が存在するからです。

これまで企業理念やパーパスの浸透活動をされてきた広報担当者の方は、そこで培われた知見を最大限に活かし「一丸となって取り組んでいく」という社内の意識を高めてほしいと思います。さらに言えば、パーパス自体にカーボンニュートラルの視点を入れ込むと、より成功しやすくなります。

ただ気を付けたい点もあります。経営理念やパーパスは、創業からの歴史と連続性があるため、従業員に説明する時に、今までの説明から多少飛躍があっても、会社の成り立ちや現在の業務と照らし合わせ理解しやすいところがありました。それに対して、カーボンニュートラルは、なぜ自社が取り組むのかをより丁寧に伝える必要があります。本当に伝わる切り口になっているか、都度確認するようにしましょう。

積極発信が資源調達に寄与

ステップ2「戦略を定める」では、企業はまず「❻-1要件を充たす」ための守りの取り組みを策定します。CO₂排出量を目標まで削減する作戦を立てる、ということです。同時に攻めの取り組みである「❻-2競争優位性を構築する」「❻-3新規事業機会を探索する」を考えることが経営視点では重要になります。

ただし、いくら戦略をつくっても、きちんと知らせなければ、攻めの姿勢は伝わりません。また積極的に取り組むスタンスを発信しておかないと、その後「❼-2外部パートナーとエコシステムを構築する」「❼-3必要な脱炭素資源を確保する」うえで、タイミング良く欲しい技術や資源が手に入らなくなる可能性もあります。

BCGの試算では「開発する道筋が見えている技術」を使って削減可能なCO₂の排出量の割合は、国レベルで見ても、各国7、8割程度。カーボンニュートラル達成は、新しい技術や資源がなければ困難なのです。
※気温上昇「2度シナリオ」に対し、2018年段階で「開発の道筋が見ている技術」を使って削減可能なCO₂の排出割合を試算した

脱炭素技術の開発を促すため、COP26では「ファースト・ムーバーズ・コアリション」が設立されましたが、これは企業が「私たちはこの技術が開発されたら、必ず購入します」と需要を約束することで、研究開発を促進する枠組み。こうした動きも出てきています。

自社でできる・できないこと

ステップ3「着実に推進し、成果を示す」では、「❾社会全体の変革に積極的に関与する」ことになります。広報が自社の積極的な姿勢をどんどん発信し、業界を牽引する存在となり、ルールづくりに参加できるようになると、さらにカーボンニュートラルを進めていきやすくなります。

「❿自社ならではのカーボンニュートラル戦略ストーリーを発信する」にあたっては、注意点もあります。それは、実態のない過度な発信をするとグリーンウォッシュにつながるということです。

2030年、2050年と長い時間軸の中で達成することですから、「ここまでは、ほぼ自社でできる」「しかし、ここからは自社だけでは達成できない」「完璧ではないと理解しているが取り組んでいる」といった実態を整理したうえで発表する必要があります。

続きは広報会議2022年6月号で。
カーボンニュートラル経営にまつわる「外部環境」を理解する際のポイント、未上場企業はどう取り組めばいいのか、コミュニケーション活動が上手い会社の特徴などを聞いています。

広報会議2022年6月号

 
【特集1】
どうする?気候変動リスク対応
サステナビリティ発信強化

 
「脱炭素」座談会
企業×メディア×投資家の視点で語る
脱炭素に関する企業発信の潮流とは
 
GUIDE1 広報が求められる役割は
カーボンニュートラル経営実現のステップ
伊原彩乃(ボストン コンサルティング グループ プロジェクトリーダー)
 
GUIDE2 自分ごと化に広報は
人と社会を動かす「共感の深度」の見つけ方
畑中翔太(dea代表、クリエイティブディレクター/プロデューサー)
 
OPINION
脱炭素に真に取り組んでいるのか
判断の分かれ目、メディアはどう見る
・「Business Insider Japan」
・『繊研新聞』
・『WWDJAPAN』
・『化学工業日報』
・『環境ビジネス』
 
【特集2】環境ビジョンの浸透・成果の発信
「脱炭素」×自社の “らしさ”を結び付けた事例

 
CASE1 住友林業
脱炭素への本気度を示すのと同時に
事業領域の認知拡大を図る
 
CASE2 三菱UFJフィナンシャル・グループ
宣言に加え、アライアンスにも加盟
進める、ステークホルダーへの浸透施策
 
CASE3 ニチバン
環境対応に関する全社発信を、周年を機に強化
セロテープ®介し、他の企業の発信の“場”の創出にも
 
CASE4 石井造園
地域の”らしさ”を体現する企業を目指し
周囲の共感得る理念と合言葉を策定
 
COLUMN
Z世代に響くサステナブル発信とは
牧島夢加(博報堂 ミライの事業室)
 
【特集3】記事化につながるSDGsの取り組み
「プレスリリース」戦略

 
Q&A
社会課題の解決につながる取り組みのリリース
記者の注目を高める方法は
西林祐美(共同通信PRワイヤー)
 
CASE1 東急
日本初、全路線の電力を再エネ由来に
環境ビジョンと具体策を同時に示す
 
CASE2 UCC
カーボンニュートラルなコーヒー
背景にある技術、官民連携を発信
 
CASE3 千葉商科大学
自然エネルギー100%の大学を目指し
達成状況を視覚的にも伝わりやすく
 
など