デザイン組織のアジャイルチームが実現するビジネス変革 /「仮説提案アプリケーション」

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富士通デザインセンターでは、お客様の“課題解決パートナー”であるBP(ビジネスプロデューサー)の活動をサポートする「仮説提案アプリケーション」を開発。デザインセンター主導の社内向けプロダクト開発を支える、アジャイルチームとその開発手法を紹介する。
写真左から富士通デザインセンター 経営デザイン部 吉川 嘉修氏、藤田 友貴氏、大森 千恵子氏、同経営デザイン部マネージャー フォンティン 徳康氏

デザイン組織で社内向けアプリを開発

富士通において、お客様の“ビジネスパートナー”として、課題解決に取り組むのがBP(ビジネスプロデューサー)である。BPは、お客様が認識しているニーズに留まらず、潜在的な課題を見つけ出し解決する役割のため、様々な情報をもとに新たな価値の糸口を探る仮説提案が欠かせない。このような中、デザインセンターではデザイン思考を活用した「仮説提案アプリケーション」を開発し、BPの提案活動を支援している。

社内向けに開発している「仮説提案アプリケーション」

「仮説提案アプリケーション」はBP自らが使用・操作するツールで、お客様のビジョンや中長期戦略をもとに、想定されるユーザーのペルソナ・利用体験などを検討し、新しい提案のアイディアを導き出すことができる。富士通全体でデザイン思考による課題解決を推進するなか、約8,000人のBPをサポートすることを目的としている。クライアントワークや社内部署からの依頼への対応が多い同センターにおいて、「仮説提案アプリケーション」は自主開発のプロダクトという特徴をもつ。

前例のない新たなアプリケーション開発に取り組んだのは、デザインセンターのフォンティン 徳康氏がマネージャーを務めるチーム。プロダクトマネージャー1名、デザイナー2名、エンジニア5名、企画・プロモーション1名、という多様なメンバーによるチーム編成は、同センターにおいて異彩を放つ。当初は別部門に開発を依頼していたが、内製化を進めるため2021年12月にエンジニアが加入。デザイン、ディベロップメント、プロモーションをメンバー間でコラボレーションしながら、現在も開発を進めている。

不確実性の高いプロジェクトを支える「2つの開発サイクル」

仮説検証とアジャイル開発を組み合わせた開発サイクル

チーム構成のほか、開発プロセスにも変革といえる手法を導入。リーンスタートアッププロセスを実践する「仮説検証サイクル」と、ユーザーの要求事項に沿ってプロダクトを開発する「アジャイル開発サイクル」の、2つの大きなサイクルを活用している。アプリ開発にあたり同手法を導入したデザインセンターのプロダクトマネージャー吉川嘉修氏は、「完成形の仕様が存在しない本プロジェクトに適した手法」と話す。

プロダクトマネージャー 吉川氏

「以前取り組んだプロジェクトでこの手法を学び、プロセスがきれいに整理されている点に魅力を感じました。本プロジェクトは答えがないため、機能やデザインの選択肢は膨大にあります。そのなかで、作るべきものと作らなくていいものを明確に決められる手法として採用しました」(吉川氏)

加えて、フォンティン氏は「正解が分からない状況で柔軟かつリスクを軽減しながら開発を進められる手法」と吉川氏の意見に賛同しつつ、もうひとつのメリットとして、デザイナーとエンジニアが共同で開発できる点を挙げる。

マネージャー フォンティン氏

「ひとつの進むべき道筋を決めるには、様々な知見を集約する必要があります。その観点からも、この手法は『デザイナーはデザインだけ、エンジニアは開発だけ』とチームを切り離さずに、それぞれの専門領域からプロダクト全体について意見を交わせる仕組みが良いと思います」(フォンティン氏)

開発チームはBPへの定期的なインタビューを行い、着実に歩みを進めた。BPはそれぞれ担当する業種・提案機会や経験値が異なるため、個人能力の差異を問わないアプリケーション開発の重要性を感じたという。そのミッションは、「仮説提案アプリケーション」として運用が始まっている現在も続いている。デザインセンターの大森千恵子氏は、BPに向けたプロモーション活動としてアプリの体験会を定期的に開催し、社内への普及活動を行うと同時に、改良につながる意見収集を行っている。

企画・プロモーション 大森氏

「体験会は、アプリの利用者視点での気付きを得られる貴重な場になっています。社員同士という間柄もあり、プロダクトに対して率直な感想をくださることがありがたいです。直近では、想定よりも小さいウィンドウサイズでアプリを利用するBPがおり、デザイナーへ相談してレイアウトを改修しました」(大森氏)

開発チームでは、一部のユーザーからの要望に対してもチーム内で検討のうえ、必要だと感じれば改良につなげるという。「『この仕様書に沿って作りましょう』というウォーターフォール開発では、ユーザーの声が届いても『仕様書がFixしているので変更が難しい』と判断されてしまいます。チーム内に浸透したアジャイル開発によって、気付きをチーム内で話し合い、アプリケーションの理想的なかたちを柔軟に変えることができています」と吉川氏が説明するように、BPがより使いやすく、ビジネスシーンにより貢献するための“終わりなき開発スタイル”は続いている。

デザイナーとエンジニアが得た“成長の種”

デザイナーとエンジニアが垣根を超えて開発に取り組む本プロジェクトは、テレワークで進められている。コミュニケーションの課題に対して、フォンティン氏は「オフィス勤務に比べて直接声をかけにくいという違いがあるため、メンバーと話したい時はチャットでのやりとりだけでなく、直接電話をかけても大丈夫です。また毎日朝会、金曜日には振り返り会を開いて、お互いに思っていることを共有し、チームで仕事を進めている意識を常に持てるようにしています。テレワークにおけるコミュニケーション改善を図りつつ、開発スピードも決して落とさない。プロダクト同様、みんなで話し合って決めました」と語る。

テレワーク、不確実性に対応した開発プロセス。チームは、今までにない状況下で共同開発するなかで、新たな知見や手応えを得ている。「このチームに入って、会話の重要性を再認識しました。個々の役割にとらわれず、議論を重ねるなかで改良の余地は見つかっているので、さらに有用性を高めて社内に広めていきたいです」と大森氏。

エンジニア・藤田友貴氏は、プロダクトの開発・実装に専念する従来の役割をふまえて、「エンジニアでありながらユーザーとの接点が近いのが印象的です。BPに活用状況をヒアリングしたり、プロモーション活動に参加したり、プロダクト開発の上流から下流まですべてに携わる日々はとても新鮮です」と話す。

エンジニア 藤田氏

「つねにデザイナーの考えと、エンジニアの考えが一致するとは限りません。考えをひとつにしてプロダクトを作るうえで、エンジニアもデザインに意見を言える環境はとても重要です。私自身、ユーザー視点で物事を考える習慣が生まれ、エンジニアとしての成長を感じています。今後は、デザイン組織の一員としてエンジニアがいる意義を、プロダクトという成果を通じて発信していきたいです」(藤田氏)

チームのけん引役は、プロダクト開発にとどまらない、より大きな波及効果を期待する。

「富士通はDX企業に向けた変革を進めていますが、私たちの仕事のしかたを変えていくことで、その動きを加速できると考えています。つまり、DX(デジタルトランスフォーメーション)実現のためには、DX(ディベロッパーエクスペリエンス)が大事。私にできるDX企業への後押しとしても、全員参加型のアジャイル開発を広めていきたいです」(吉川氏)

「富士通デザインセンター全体として、今後もユーザーにとって良いものを作っていくためには、デザイナー組織から『デザイン組織』への変化が必要です。デザインの推進にはデザイナーだけではなく、エンジニアのようなデザイナー以外のメンバーの貢献が欠かせません。エンジニアが仲間として増えている今がターニングポイントではないでしょうか。デザイナーとエンジニアが共同開発する本プロジェクトが、その第一歩になればうれしい限りです」(フォンティン氏)

「仮説提案アプリケーション」の開発プロジェクトは、フィードバックをもとにした改良プロセスを繰り返していく。その過程でプロダクトと開発チームはさらに磨き上げられ、BPのビジネスプロセスのサポートにとどまらない様々な効果をもたらすことだろう。



お問い合わせ
富士通株式会社 デザインセンター
URL:https://www.fujitsu.com/jp/about/businesspolicy/tech/design/
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