急成長する「ウェルビーイング」ビジネス〜「The Future 100」からトレンドをピックアップ解説

share

Wunderman Thompsonのグローバル・トレンド予測チームは10カテゴリー・100項目にわたってトレンドや変化を解説する調査レポート「The Future 100」を毎年発行している。3回にわたり「メタバース」「ウェルビーイング」「サーキュラーエコノミー」のテーマに沿って同社 Senior Strategic Planning Directorの細見裕之氏がレポート内からトピックを紹介する。
 

「The Future 100 2022」
宣伝会議オンラインにて販売中

【関連記事】
メタバースはSFから現実に進化する〜「The Future 100」からトレンドをピックアップ解説

みなさん、こんにちは。Wunderman Thompson Intelligence発行の「The Future 100 2022」から、注目すべきトレンドについて紹介する企画の第2回目です。

新型コロナウィルス感染症の世界的な流行は、健康やウェルネス、さらにはウェルビーイングの大切さやありがたさを、我々が改めて再認識する機会となりました。
そこで、今回は「ヘルス&ウェルビーイング」に関するトレンド(リキッド・イミュニティ(液体免疫)/ゲームを処方する/エモーショナル・ヘルス/ヒプノセラピー(催眠療法))を紹介していこうと思います。

ドリンクで手軽に免疫システムをサポート

最初に紹介するトレンドは、リキッド・イミュニティ(液体免疫)です。
グローバル・マーケット・インテリジェンス会社であるInnova Market Insightが実施した「Consumer Survey 2020」によると、世界の消費者の10人に6人が免疫システムをサポートする食品や飲料に注目している、と回答しています。これに対応するように、企業は免疫強化をサポートする新商品を次々と発売しています。

2021年10月、LA発の子ども向けスナックブランド「Bitsy‘s」が、子ども向けに免疫力を高める粉末ドリンク「Bitsy’s Swish」を発売しました。これは、電解質、ビタミンC、亜鉛を含んでいて、水筒に入れて混ぜるだけで、子どもたちが外出先で手軽に免疫力を高めることができます。

Bitsy’s Swishは子ども向けの免疫力向上ドリンク

 
免疫強化の食品の発売は子ども用に限ったわけではありません。
米国の飲料食品ブランド「Ocean Spray」は、2020年11月に機能性飲料ブランド「B1U」を立ち上げ、レモンとカモミールを配合した水「I Need Immunity(私には免疫が必要)」を発売しました。翌年3月には、飲料にとどまらず、効果の高いドライフルーツをブレンドした「Ocean Spray Fruit Medley」を発売しました。例えば、ラインアップのひとつ、「Immunity Blend」には、免疫力を高める効果があるとされるβグルカンが含まれています。

Ocean Sprayの機能性飲料ブランド B1U


このように、消費者の病気予防に対する継続的な注目の高まりが、世界の免疫強化食品市場の成長を促進しています。

ビデオゲームやVRが“処方”される医療の未来

処方と言えば、これまでは薬剤を意味することがほとんどでした。しかし、新たに登場したテックシューティカル(テクノロジーを利用した治療や薬剤)は、健康管理の未来を切り拓こうとしています。

そこで紹介するのが、ゲームを処方するという新たなトレンドです。
医師たちは、ブレインフォグ(脳に霧がかかった状態)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、うつ病、心的外傷後ストレス障害などの症状を治療するために、ビデオゲームやバーチャル・リアリティ(VR)を処方するようになっています。

その代表的な事例のひとつが、デジタル治療企業のAkili Interactiveが子どものADHDを治療するために開発した「EndeavorRx」です。これは2020年6月、FDAから承認された史上初の処方用ビデオゲームとなりました。同社は、1日25分のプレイを週5日間、1ヶ月間行うという推奨時間を守った結果、3人に1人の子が「少なくとも1つの客観的な注意力測定基準において、測定可能な注意力の欠如がなくなった」と報告しています。さらに、同社は処方箋としてのゲーム事業を拡大するために、1億6,000万ドルの資金を確保しました。
デジタル・ニュートリションのパイオニア企業であるAeBeZe Labsの創業者兼CEOのMichael Phillips Moskowitz氏は、「デジタルコンテンツには非常に大きな治療法の可能性があり、デジタル治療薬は、医薬品の次の新興分野になるだろう」とWT Intelligenceに語っています。

Akili Interactive社が子どものADHDを治療するために開発したビデオゲーム「EndeavorRX」。

メンタルヘルスや精神的安定のためのパブリック・スペースが登場

身体的な健康だけでなく、情緒面での健康、すなわち、エモーショナル・ヘルスに関するトレンドにも注目です。
メンタルヘルスに対処することへの偏見が解消されつつある中、メンタルヘルスや精神的な安定を守るためのパブリック・スペースが登場しています。

Pinterestは、2021年10月に「コミュニティ主導のインスピレーションのためのオンラインおよびオフラインの空間」を作り出すことを目的とした取り組み「Pinterest Havens」を立ち上げました。その一環で、シカゴでは、インスタレーション「Havens: Invest in Rest」を開催し、地元アーティストDwight White氏による壁画、リラックスした表情や姿の「ピン」(Pinterest内に保存された画像・動画のこと)を印刷したもの、没入型アート、などを会場で展示して、燃え尽き症候群に立ち向かい、来場者に精神面での健康を重視するように呼びかけています。

Pinterest がシカゴで展開したインスタレーションより。地元アーティストDwight White氏とその壁画。
画像:Jaylen Prater, 提供:Pinterest Havens

 
2021年10月、ニューヨークのルービン美術館は、仏教の原理を用いて情緒的なウェルネスを促し、つながりをインスパイアすることを目的とした文化的な癒し空間、「Mandala Lab」をオープンしました。来館者は、自身の複雑な感情を探索し、対処し、変化させることができます。エグゼクティブ・ディレクターのJorrit Britschgi氏は、このスペースが「想像力を広げ、感情を理解し、管理し、共感能力を豊かにし、他者とつながるという、今日の課題に立ち向かう力を与える」ことを目的としていると語っています。

ルービン美術館のArt’s Mandala Lab。
画像提供:Rafael Gamo

ラグジュアリーホテルはスピリチュアル・ヒーリングサービスを提供

癒しに着目しているホスピタリティ業界は、催眠の可能性に注目していて、主に富裕層を狙ってヒプノセラピー(催眠療法)の提供を始めています。
ラグジュアリーホテルでは、睡眠コーチングから催眠療法にまでウェルネストリートメントを拡大しています。The Mandarin Oriental Hong Kongは、2021年6月に催眠療法士を任命し、リラクゼーションや食習慣の改善を目的としたワークショップを展開し、オーダーメイドで催眠療法のセッションを行うサービスを提供しはじめました。

Mandarin Oriental Hong Konghはオーダーメイドで催眠療法のセッションを行うサービスを始めた。


The Spa at the Four Seasons New York Downtownでは、ゲストが従来のスパ体験に留まらず、スピリチュアルなウェルネスを求めていることに着目して、2018年から従来のスパトリートメントを超えるユニークでマインドフルな体験をマンツーマンで提供する「レジデント・ヒーラーズ・プログラム」を開始しています。2020年12月には、「トラベリング催眠療法士」として知られるNicole Hernandez氏がレジデント・ヒーラー(レジデント・ヒーラーズ・プログラムの施術者)として加わり、不安を解消し、恐怖症を克服するためのユニークな催眠の旅の体験を提供しています。

The Spa at the Four Seasons New York Downtown の Resident Healer Program。マインドフルな体験をマンツーマンで提供。

以上のように「ヘルス&ウェルビーイング」関しても様々なトレンドが登場してきています。みなさんの興味をひく話題はありましたでしょうか?
さらなる詳細や事例は、「The Future 100 2022」に掲載されていますので、そちらをご覧いただけますと幸いです。

「The Future 100 2022」でヘルス&ウェルビーイングについてさらに読む:

・男性不妊治療専門の新興企業
・TikTokセラピー
・メタボリック・ブランド
・メンタルヘルス専門薬局
・オーディオ・ヒーリング
・抗体の健康
・次世代のメンタル・ウェルビーイング
・5Gヘルスケア
 などのトピックがご覧いただけます。

3回目は、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」に関するトレンドを中心にお届けしようと思います。どうぞお楽しみに。

執筆者プロフィール:

Senior Strategic Planning Director
細見裕之

2005年、外資系代理店から、Wunderman Thompson Tokyoへ入社。入社以降多岐にわたるブランドを担当し、日本市場でのブランドの構築およびビジネスの成功に貢献してきた。また、WT Intelligence チームが発行するFuture 100をはじめとしたグローバル・トレンド・レポートを日本に紹介するサポートを担っている。


Follow Us