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SNS時代のフォトグラファー活用 共感を獲得する写真コンテンツ

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個人向け写真スクール事業から出発し、企業に向けた撮影・広告制作サービスを提供するCURBONがエンゲージメントの高いSNS施策で成果を収めている。ソーシャルメディアに企業アカウントを設けて投稿するといった施策自体はありふれたものになる中、SNSの特性を理解し活躍しているフォトグラファーを起用し、コンテンツの差別化を図った発信が強みだ。

オンラインで注文できる写真/フォトブック印刷サービスを手がけるしまうまプリントと実施したユーザー参加型企画では、TwitterとInstagram合わせて約3600万インプレッション、約1200万ユーザーにリーチ。最終的に約1620人の応募者を獲得した。

「#私が写真集をつくるなら」と題した企画で、「ユーザーに写真集に見立てたSNS投稿をしてもらう」というもの。しまうまプリントのサービス認知拡大を目的に実施した。4枚の写真とテキストで構成したミニマムの『写真集』をハッシュタグ付きで投稿してもらい、写真家などが審査。優秀作を選出した。

しまうまプリントとCURBONが実施した企画「#私が写真集をつくるなら」の概要

「過去に、同様の企画を実施した際は数字がふるわず、Twitterで200投稿ほどしか集まりませんでした。CURBON社と組んだ今回の施策も、実施前は社内から不安の声も挙がりました」と振り返るのは、しまうまプリント マーケティング部の高橋杏太氏だ。

協議の末に「顕在化した見込み客の獲得だけでなく、認知を広げていかないとCPA(顧客獲得単価)も悪くなる」という結論に至り、企画が実現した。

では、なぜおよそ8倍に上る応募数が集まったのか。企画を担当したCURBONでディレクターを務める下重晟伸氏はこう分析する。

実施コンテストの成果・数値

「まずは、参加のハードルの低さ。新しく写真を撮影するのではなく、手持ちの写真を写真集として組み合わせれば参加できるという条件がよかったのだと思います。もうひとつは、CURBONがネットワークするフォトグラファーのなかでもターゲット層に近いファンを多く抱えている方々にアンバサダーを務めてもらい、それぞれのフォロワーを巻き込めたこと。キャンペーン全体のクリエイティブも、アンバサダーのフォロワーから伝播しやすいように設計することで、波及効果を高められたのではないかと思います。最後に大切なのは企業色をなるべく出さないこと。広告性が強過ぎるとシェアされにくくなる傾向があると考えています」(下重氏)

CURBONは、写真を学びたい人たちのコミュニティをスクール事業で構築できている点が強み。B to C向け事業を通してフォトグラファーネットワークは拡充され、SNS上での活動を通しての「フォロワー視点」は、B to B系事業に反映されるノウハウにつながっている。

CURBONのB to B向けの事業内容

自身もニューヨークで活動していた写真家である代表の武井宏員氏はこう話す。

「フォトグラファーのフォロワーは、写真を見るのが好き、撮るのが好き、各フォトグラファーの世界観が好き、フォトグラファーとコミュニケーションを取るのが好き…と、実はさまざまな人達がいます。見るだけでなく、自分も発表したい、どうしたら見てもらえるようになるか、という熱心な人もいれば、ライト層もいる」(武井氏)

下重氏がディレクターを務めるCreators Baseは、企業の課題を写真・動画の力で解決するクリエイティブサービスだ。撮影やディレクションはもちろん、フォトグラファーネットワークをデータベースで管理しているため、撮影内容に合わせた最適なフォトグラファーを迅速にアサインすることができる。

CURBONの「Creators Base」はあらゆるフォトグラファーを体系的に管理

CURBONの写真家コミュニティが力を発揮したのが、トランスコスモスが担当した、スマートフォンメーカー大手のSNS施策だった。中でもInstagram施策を担当した、トランスコスモスの吉増千智氏は、「CURBONは、SNSでインフルエンサーとして活動をしているフォトグラファーさんが多いので、スマホ撮影の知見も豊富だと考えた」と話す。

SNS施策の狙いは、「次にスマホを買い換えるタイミングで、同社のスマホを有力候補に挙げる人を増やすこと」。投稿ごとのエンゲージメント率の向上だけでなく、エンゲージメントの実数自体も増やすことが求められた。

「そのため、一定以上の投稿の数があること、その質をどんどん高めることが実施の上で必要になってきます。必然的に、作品1点あたりの制作期間もタイトになる上、写真のモチーフに合わせて複数名のフォトグラファーをアサインし、並行してディレクションから納品まで進める必要がありました」(吉増氏)

大手スマホメーカーのSNS施策を担当した際のトランスコスモスとCURBONの分担

トランスコスモスとCURBONの業務分担はこうだ。どんなコンセプトの作品をどのプラットフォームに投稿すると、どれくらいのエンゲージメントが獲得できる見込みがあるか、仮説設定と見込みの推測。競合企業はどんな投稿をしているか、などの他社事例の収集と分析。これらの指針と策定をトランスコスモスが担った。

CURBONはその指針に沿って、最適なフォトグラファーの選定や具体的なディレクションなど各フォトグラファーとのコミュニケーションを担当。「いまの世代に届く感覚的な部分、ビジュアルのセンスのような部分を補ってもらいました」と吉増氏は話す。

「たとえば『エモい』と言われるような写真を投稿したい。ではどんな写真にすれば、それを見た人に『エモい』という心象が湧くのか、そういったことは仮説を立てることが困難です。風景なら、ポートレートなら……どんな写真をどれくらい投稿すればいいか、という構造部分は当社で担務しながら、実際に具現化するのは、どんな人が適切か、ということにおいて、クライアントの要望どおりにアサインしてもらえたと思います」(吉増氏)

「当社からの視点で言えば、検証部分についてはむしろトランスコスモスさんに担っていただいてありがたかった」と言葉をつなぐのは、Creators Base ディレクターの柴田麗奈氏だ。

「ビジュアル面だけではなく、検証、数値面でもきちんと根拠を持つことで、よりよい状態で企画を通せているのではないでしょうか」(柴田氏)

単にフォロワーの多いSNSユーザーに、「広告」などと添えて投稿すれば、一定の反響は得られるという時代は終わりを迎えつつある。作品と作家は別物ではある一方で、では、どこで線を引くか。特にSNSにおいては難しい。

「なんでもいいから『広告』と付けて投稿する、というのは、クリエイター側にとってもリスクがあります。結局成果を残せるのは、そのクリエイターの世界観やクリエイティビティを尊重して、作品づくりを共にすることではないでしょうか」(武井氏)

「SNS時代のフォトグラファー」を活用したプロモーションの成果を高める秘訣は、フォロワー(ターゲット)が共感できる「企画」と、それを実行するのに最適なフォトグラファーの「アサイン」だ。ただ数値的な指標だけでなく、関わるフォトグラファーの作品性やそれらを見た時のフォロワーの印象など、さらに高い解像度での計画が鍵となる。

トレンドの潮流を見極めつつ、CURBONは「SNS時代のフォトグラファー」を最大限活用したクリエイティブディレクションを担っていこうとしている。

※本稿は、2022年8月4日実施の「SNS時代のプロフォトグラファーによるフォトソリューションと実践」の内容を再構成したものです。


お問い合わせ
株式会社CURBON
Creators Base Team

EMAIL:support@curbon.jp