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「人的資本」情報の戦略的な発信とは?企業への共感の輪の広げ方

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持続可能な企業経営の実現において、今注目を浴びているのがイノベーションを創出する「人材」への投資だ。各社が独自の人材戦略を打ち出すなか、どのような発信がステークホルダーからの反響を得ているのか。先進企業に聞く。

※本稿は『広報会議』2023年6月号の「サステナビリティこれからの伝え方」特集より抜粋しています。
 

個人パーパスを組織で共有

社員一人ひとりが「MYパーパス(自分自身の人生の意義や目的)」に向き合い、組織のパーパスとの重なりを見出しながら、自身の内なる想いに突き動かされたチャレンジを繰り返す。そこに組織成長の原動力があるとして、MYパーパスを起点に人的資本の向上に取り組むのがSOMPOホールディングスだ。

保険事業を中心に展開し、7万4000人のグループ従業員を擁するSOMPOグループが「パーパス経営」に舵を切ったのは2021年。企業が存続するためには「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」ことを目指すという組織の志を明らかにし、従業員のチャレンジを奨励、イノベーションを創出する組織へと変革しなければという危機感があった。
 

会社を“使い倒してほしい”

櫻田謙悟グループCEOは2021年に従業員向けのタウンホールミーティングを7回実施。その中で「会社を自身のパーパスを実現する場として使い倒してほしい」と語りかけた。会社の中に自分の人生を置くのではなく、自分の人生の中に会社を置く。そう明確に発信したことで「会社が変わろうとしている」というメッセージが社内に驚きを持って伝わっていった。

一方、ほとんどの従業員にとっては、MYパーパスは「考えたことがない」ものだったと人事部兼サステナブル経営推進部の村上信毅課長は当時を振り返る。そこで、自分が人生で成し遂げたいことは何かを内省し、MYパーパスの策定を支援するところから開始。管理職については、部下との1on1の対話において、MYパーパスにもとづく仕事でのチャレンジが引き出せるように研修を実施している。

MYパーパスを策定するかどうかは、従業員の自発的な意思に委ねているが、策定を支援するワークショップを定期的に開催し参画しやすくしているほか、MYパーパスの共有会で多様な価値を認め合う場をつくる。2022年からは、「SOMPO伝」と題した社内プロモーション(図1参照)を実施。同年12月からはMYパーパスを起点にした取り組みを表彰する「SOMPOアワード」も開始した。
 

図1 プロモーション施策「SOMPO伝」
SOMPOグループで働く100人が、志を実現していく物語を「未来伝記」としてまとめた「SOMPO伝」。「MYパーパス」をもとにした組織文化を広げていくためのプロモーション施策で、新聞広告(画像)やウェブサイト等で発信した。

 

将来的な財務価値につながる道筋を可視化

「地道に発信を続けてきたことで、パーパス経営に関する講演依頼が増え、投資家からはMYパーパスに関する質問が来ています。取引先からは『こんな面白いことをしているんだね』と声をかけられるようになりました」と村上氏。だがMYパーパスの策定は組織改革のスタート地点であり、業績や企業価値にいかに結び付けるかにこれからの課題はあるという。

統合レポートでは、MYパーパスの追求が、チャレンジ・イノベーションを創出し将来的な財務価値(未実現財務価値)につながるという道筋を図示。MYパーパスにもとづいた上司と部下の対話の実施が、社員のエンゲージメントのスコアの高さと相関関係にあることもデータで示している(図2参照)。こうしたファクトを積み重ね、より説得力のある発信につなげていきたい考えだ。
 

図2 エンゲージメントを加速するMYパーパス対話
MYパーパスを策定し、上司と部下がMYパーパスを中心にした対話ができている組織ほど、エンゲージメント・スコアが高い傾向が確認された。その相関データを統合レポートで公開している。
出典:SOMPOホールディングス 統合レポート2022(SOMPOホールディングスの従業員を対象にしたエンゲージサーベイ調査にもとづき、SOMPOインスティチュート・プラスが分析を実施)

 

人的資本やESGの戦略的な情報開示について、続きは『広報会議』年6月号「サステナビリティこれからの伝え方」特集
 

広報会議2023年6月号

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【特集】
企業のサステナビリティ
これからの伝え方

GUIDE
一貫性ある開示が企業価値高める
保田隆明(慶應義塾大学総合政策学部教授)
 
OPINION1
長期視点で評価される企業のESG情報とは
伊井哲朗(コモンズ投信 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)
 
COLUMN
ポイントをしぼったサステナビリティ発信
関 美和(MPower parters ゼネラル・パートナー)
 
共感の輪を広げる「人的資本」の戦略的な伝え方
双日/KDDI/SOMPOホールディングス
 
OPINION2
人的資本の情報開示、広報の役割とは
経済産業省
 
OPINION3
メディアから見た
「ESG」発信の蓄積が上手い企業とは
会社四季報オンライン
 
【第2部】
ESG発信ケーススタディ
 
CASE1
世界初のCO2排出量実質ゼロフライトでメディア露出
日本航空(JAL)
 
CASE2
社会での自社の存在意義打ち出しパブリシティ獲得
アセンド
 
CASE3
未来を創造するための統合報告書
アバントグループ
 
CASE4
サイトでビジョンから商品を一気に紹介
オムロン
 
CASE5
ステークホルダーを巻き込み「本気感」伝える
不二製油グループ
 
CASE6
方針の明文化で従業員の当事者意識を醸成
ポーラ
 
CASE7
明確な目的掲げたインプットと議論の場づくり
TBM
 
CASE8
エアコン業界全体の脱炭素と発展に向けて
ダイキン工業
 
【第3部】
納得感を高めるサステナビリティ発信 実践編
 
OPINION1
ストーリー性のある開示・改善のサイクル
野村総合研究所
 
OPINION2
学生から見た「統合報告書」
一橋大学
 
COLUMN1
評価される「統合報告書」のポイントとは
イチロクザン二
 
COLUMN2
従業員が誇りを持てる取り組みにするには
揚羽

ほか