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メディア企業が広告商品開発に活用できる資源とは? 「Advertising Week Asia2023」連動企画②

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ニューヨーク、ロンドンをはじめとした世界6大陸で開催されているマーケティング&コミュニケーションのプレミアイベント 「Advertising Week(アドバタイジング・ウィーク)」のアジア版である「Advertising Week Asia(アドバタイジング・ウイーク・アジア)」が6月6日から開催される。2004年に米国・ニューヨークで始まった「Advertising Week」は、2016年から東京を舞台に「Advertising Week Asia」が開催され、今回は連続7回目の開催にあたる。「Advertising Week Asia」のアドバイザリーカウンシルメンバーや、登壇するスピーカーをはじめとする4名に「メディアと広告ビジネスの近未来」をテーマに、3つの質問を投げかける。

「Advertising Week Asia」は5月31日からリアルとオンラインの併催にて開催。

インターネット広告がマス4媒体総計の売上を追い抜き、さらに成長を続けています。この広告市場のなかで、マスメディア企業はどのような戦略を描いているのでしょうか。

昨今、マスメディア企業のデジタル・トランスフォーメーションを模索する動きは、加速しています。それでは、デジタル化の先に、どのような事業戦略、ビジネスモデルが見いだせるのでしょうか。

「Advertising Week Asia 2023」に登壇するメンバーを中心に、マスメディア企業で広告ビジネスにかかわるキーパーソン4名に一問一答形式で回答してもらいます。
1つ目の質問のテーマは「新たな広告商品の開発と活用できる資源」。「回答者の皆さんが所属する企業や業界が持つ、これからの時代において新たな広告ビジネス開発の資源として活用できるものは何だと思いますか?」との問いを投げかけます。
 

Quesiton:【新たな広告商品の開発と活用できる資源】
貴社が属するメディア業界、それぞれの企業が持つ、これからの時代において新たな広告ビジネス開発の資源として活用できるものは何だと思いますか?

 

【長崎氏のAnswer】

長崎 亘宏 氏
講談社
ライツ・メディアビジネス局 局次長
兼 メディア開発部 部長

皆さんは「ロボット工学三原則」をご存知でしょうか?これは70年以上前に、SF作家である、アイザック・アシモフによって提唱された概念です。要約すると、こんな内容です。

第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。
第二条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
第三条:ロボットは、前事項に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない。

私たち出版社のメディアは、そのコンテンツを基点としながら、各時代のテクノロジーとともにかたちを変え、届け方を変えてきました。現在の講談社においては、ユーザーとの接点の過半数はオンライン上にあるといえます。

さて、今回のお題である、新たな広告ビジネス開発の資源として活用できるものは「時間」だと私は考えています。来るべきオートメーション化、例えば「自動運転」や「生成AI」が生み出す最大の価値は時短であり、新たな可処分時間です。車中でドライバーに与えられるのが余暇時間であり、省力化によりエディターに与えられるのが創作時間であるならば、コンテンツを中心にした新たな循環システムが出来上がります。ただし、それを生かすも殺すも、メディアと新たなテクノロジーを繋ぐ、普遍の三原則の存在なのだと思います。先ほどの三原則の「ロボット」を「生成AI」に、「人間」を「メディア」に置き換えるとこうなります。

第一条:生成AIはメディアに危害を加えてはならない。
第二条:生成AIはメディアにあたえられた命令に服従しなければならない。
第三条:生成AIは、前事項に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない。

コンテンツ基点のビジネスを持続させるためには、関係するプレイヤー間の合意形成が重要になるのは言うまでもありません。

 

【神田氏のAnswer】

神田 竜也 氏 
J-WAVE
取締役

ラジオは、地域情報に関心を持った人々、コンテンツに興味を持った人々(生活者)と企業を継続的に接続し、対話し、コミュニケーションできる状態を作れるメディアだと思います。

よって、共感、愛着、信頼を持っていただいているリスナーと地域との連携やコンテンツメディアとしてのステーションパワーをいかした「コミュニティー価値」を資源として活用する事が重要だと考えます。

具体的には、接触者のデータベース化、ファンコミュニテ化、組織化により、リスナー属性やコンテンツ接触者の属性を明確にすること、さらにSNSなどのデジタルコミュニケーションツールやリアルイベント等を複合的に活用し、単なるリーチ、impでないメディア価値を提示し、より有効な企業のコミュニケーションに繋げていくことです。

組織化、ファン化により生活者とのエンゲージメントを高めることは、企業の短期プロモーションのみならず、商品開発や企業ブランディング、企業課題を生活者とともに解決するアクションにもつなげられ、社会課題解決の為の装置の役割をも果たしていくなど次のビジネスにもつながっていくと考えています。

J-WAVEでは、聴取者データをはじめ、イベントへの参加、チケット購買、WEB行動履歴、さらにはリスナー会員サービス「J-me」などの1st Partyデータをもとにリスナーの趣味趣向を分析し最適なタイミングに最適なコンテンツを届けるコミュニケーションプラットフォームを構築しており、コミュニティー価値向上に向けた取り組みを強化しています。

最後に、重要なラジオ業界としての資源は、「radiko」だと思います。

サイマルストリーミング放送、タイムフリーのほかに、フローしていた音声コンテンツやオリジナル音声コンテンツをポッドキャストとして聴取できるシステムを構築し、生活者にとって多様な音声サービスへと拡張すること、音声広告としてインタラクティブな広告形式や広告価値、KPIを提示、プランニングから広告配信迄の一気通貫のシステム構築をより進めることにより、マーケティングにおいても高い価値を提供でき、結果、これまでの放送だけでない、生活者と企業をつなぐ音声コンテンツプラットフォームとして、より一層重要な役割を担っていく事になると考えています。
 

【牧江氏のAnswer】

牧江 邦幸 氏
日本経済新聞社
執行役員 メディアビジネス担当

今後一層、顧客に提供していきたいと考える経営資源は、優良かつ表現力豊かなコンテンツ制作力だと考えます。欧米の新聞社では早くからそうした制作サービスをブランド化し、ソーシャルメディア、オウンドメディアと連携させてブランドの情報発信を支援しています。当社グループの英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、動画制作会社や調査会社との提携を通してリッチでエンゲージングなコンテンツをブランドに提供してきました。国内でもすでに複数のメディアが手掛けていますが、日経では、Nブランドスタジオという名称を掲げブランドの長期的な情報発信施策のお手伝いをしています。近年、日経電子版ではビジュアルデータというグラフィックを多用した編集コンテンツを提供しています。

こうした制作ノウハウを編集コンテンツだけにとどまらず、ブランドの皆さんに提供していける体制の構築を急いでいます。また、制作するコンテンツの価値は、メディアがこれまで培ってきた信頼性に裏付けられているという点も重要だと思います。生成AIの急速な隆盛ぶりが注目される中、コンテンツの信頼性こそが広告ビジネス開発の資源だと確信しています。

 

【櫻井氏のAnswer】

櫻井 順氏
LIVE BOARD
代表取締役社長

一般的な表現になってしまいますが、データ活用だと思います。

OOHメディア業界は、テレビメディアやデジタルメディアと比べて、共通のモノサシづくりや効果検証などへの取り組みが非常に遅れきた業界だということは事実でしょう。

テレビなどの1対家族、モバイルなどの1対1ではなく、1対不特定多数に広告を届けるメディアでもあり、メディアの価値の可視化が非常に難しい業界でもありました。

一方で、強制視認性があり、アドフラウドの起こりにくい信頼性の高い公共メディアであり、街のコンテクストを活用した生活者の心理変容を促すことができる、これらが従来のOOH広告の強みであり普遍的な価値であるとも思います。

また、OOH広告はテレビ広告やデジタル広告で捕捉しづらいZ世代などには貴重なコンタクトポイントとなっており、広告効果を示すことができれば従来の本質的な価値(資源)が適正に評価されることになるでしょう。

現在ではテクノロジーの進化によって、OOH広告はテレビ広告以上にターゲットのモーメントに合わせた場所や時間に合わせた柔軟な広告配信が可能になっています。

OOHが元来持つ価値をデータによって再定義することが新しい広告商品の開発に繋がると考えています。

※回答者4名のプロフィールは、こちら記事にて紹介。