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枯渇しがちな広報リソースを確保、社外へ依頼することを見極める

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広報機能のパフォーマンスを高めていくには、外部パートナーの力を借りる、そして広報部門の社員を増やし、体制を整えていくという選択肢があります。では、業務の中でも、どの部分をアウトソースしていくのがいいのでしょうか。『先読み広報術』(宣伝会議 刊)著者である、アステリア 執行役員コミュニケーション本部長 長沼史宏氏が解説します。

※本稿は2023年10月号『広報会議』特集「成果を最大化する仕事の進め方」より抜粋しています。

広報という業務は、受託ビジネスのような 特性を持っていて、一つひとつの案件(話題)について丁寧に対応していかなければなりません。業務の自動化も難しいことから、組織の中で広報機能に対する期待値が高まると、一気にそのリソースが枯渇しがちです。その一方で、事業部門から依頼された話題に加えて、広報発案のネタの発掘も手がけるなど、私たちはクリエイティビティを発揮しながら常に新たな話題の創作活動にも注力していかなければなりません。

どこにリソースを投下するか

こうした状況下で仕事の進め方を工夫しないでいると、本来であれば十分なリソースを注ぐべき付加価値の高い部分に労力を投下することができなくなり、広報機能のパフォーマンスが低下するリスクが大きくなってきます。目先のプレスリリースの作成に忙殺されてしまい、クリエイティブな活動に注ぐ時間がなくなってしまうようなことは回避したい。そこで、自分たちのリソースをどうやって守っていくか、そして、いかにして付加価値の高い話題の創作活動に投下するリソースを確保していくかについての検討が必要になります。

例えば、日常的な広報業務(ポジティブな発信)を大きく分類すると、図のような構成になると思います。

広報業務の種類

広報業務において最もクリエイティビティが問われ、労働価値が高い部分は1⃣と2⃣です。これは、ゼロからネタを企画したり社内に眠っている話題を掘り起こしたり、事業部門と折衝して話題の文脈調整をしたり、社内の状況を熟知し各部門のキーパーソンとも繋がっているインハウスの広報担当者にしかできない業務です。

また、3⃣と4⃣についても、アウトソースしている企業があるかもしれませんが、メディアとの関係づくりや話題の提案、取材中にスピーカーの発言を正すなどの行為は、広報業務に関する経験知を蓄積する上でも、インハウスの広報が対応しておきたい部分です。

一方で、私たちのディレクションがしっかり行えれば、5⃣はアウトソースしても問題のない領域です。私自身も “ひとり広報” の時代がありましたが、その当時、年に数度の勝負をかけるプレスリリース以外はあえて自分では書かずに、外部のパートナーに細かいディレクションをした上で作成を依頼していました。

リリースやニュースレターなどの文書作成は、意外と時間がかかるものです。ついつい自分でやってしまおうと考えがちですが、基本的なスキルを有しているパートナーに託しても、ディレクションと推敲がしっかりできれば自分と同じようなクオリティの文書に仕上がるはず。なので、広報のリソースをより付加価値の高い部分に投下していくためにも、文書作成ではなくて、文脈の調整や話題の掘り起こしなど、ネタの創作活動の方に私たちの労力を投下できるようにすると良いでしょう。

オウンドメディア編集長にブロガーをアサイン

また、最近では、オウンドメディアの企画・ 運営なども広報機能の役割として重要になってきています。この部分もインハウスの広報が担当できれば良いのですが、SNSでの発信でも高度なノウハウや相応の経験知が不可欠です。なかなか社内には得意な人材がいないと思いますし、育成するにしても、かなりの時間を要してしまいます。

そこでおすすめしたいのが、インフルエンサーやブロガーとして活躍する方をアサインすることです。正社員ではなくて、業務請負でお願いすることも大切なポイントです。

こういう属性の方々は、ご自身のビジネスを確立しているので、正社員で採用されることに関心がありません。ご自身で立ち上げた仕事を続けられなくなる働き方には、興味がないとでも言えると思います。ただ、フリーランスとして週2日程度など、非常勤であれば可能性が拡がってきます。大手企業では正社員にこだわる傾向にありますが、より専門性の高い人材を確保する上では、このように柔軟な採用形態も導入することが重要です。

日頃からネット上での発信をチェックして、自社のトーンに合うようなブロガーの方に直接声をかけてみると良いでしょう。当社では、オウンドメディアの編集長にブロガーの方をアサインしました。

概ね週2日程度の稼働で業務委託の形式です。元々、台湾の旅行情報を発信することをビジネスにされている方で、読みやすい文章体裁であることや、SNS上での振る舞いから好感を持っていた方でした。SNSのDMで連絡を取り面会をしたのですが、最初は正社員で来てくれないか、という話をしました。そうしたら、自分の会社があるのでそれは続けたい、という意向だったので、我々も方針転換し、週2日程度での仕事をお願いすることになりました。この方の採用は非常に上手くいき、オウンドメディアの立ち上げやその後の運営は順調であり、組織の中の多様性を高める上でも大きく貢献してくださっています。

オウンドメディアの企画・運営は、フリーランスのブロガーに委託。写真はミーティングしている様子。

このようなかたちで、雇用形態に柔軟性があったこと、そして当社が属するIT業界には関わっていない方をアサインしたところもポイントでした。より幅広い読者にリーチさせるためにも、自分たちの業界に近しい人である必要はないとも考えています。幅広い層に対する発信力、リーチ力がその方の文才から期待できるかどうかが判断のポイントでした。

ロードマップを描く

広報はスタッフ部門です。正規採用で人数を増やすことができれば良いのですが、業績や景気動向によって人数の増減が起こりやすい部署でもあります。スタートアップや新興企業の場合、広報機能に過分な人材を配置することは、会社への負荷を大きくしてしまう恐れがあります。仕事量にも柔軟に対応することができるので、まずはアウトソースを活用しながらネタをつくり出すためのリソースを確保し、成果を積み重ねることによって配属社員も増やしていく、というロードマップを描いていければ良いと思います。

私は、アステリアに2015年4月に入社した時は、ひとりでスタートした広報機能でしたが、成果を上げ続けることで部門を強化することにつながりました。最初の “ひとり広報”→広報・IR室→広報・IR部→コミュニケーション本部と概ね2年周期で部門としてのポジションを高めてもらうことができて、私自身も現在では執行役員を務めています。また人数もひとりから現在では9人の体制となっています。

こんなに成果が上がるのならもっと広報に力を入れていこう、という気持ちにさせることが重要です。つまり広報のベネフィットを、社長や経営陣を含めた社内の人たちにどう分かってもらうかについても考えながら活動ができると良いと思います。

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ながぬま・ふみひろ

大手メーカーで、広報・IR担当としてのキャリアを積んだ後、2015年に新興IT業界へ転身。旬の話題に絡めたPRで“お茶の間” にリーチする話題づくりで実績を重ねる。東北大学特任准教授(客員)・コミュニケーションアドバイザー。

長沼氏が広報メソッドをまとめた『先読み広報術』

メディアの関心を「先読み」し掲載につなげる方法を徹底解説しています

 

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