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半年でEC売上を10倍にした老舗酒造メーカーの戦略とは

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2023年7月、宣伝会議が主催する講演会「SIMCリージョナル2023」にて、創業130周年を迎える老舗酒造メーカー「梅乃宿酒造」の執行役員・古澤幸彦氏と、同社のEC事業運用パートナーである「博報堂プロダクツ九州支社」の浦瀨大志氏、宮田寛也氏、早川健志氏が登壇。梅乃宿酒造は博報堂プロダクツと連携し、2022年7月のECサイト刷新から半年で売上を10倍にしたという。急激な利益成長や継続的な売上を実現するための秘訣を紹介する。


写真 人物 左から、浦瀨大志氏、古澤幸彦氏、宮田寛也氏、早川健志氏
左から、浦瀨大志氏、古澤幸彦氏、宮田寛也氏、早川健志氏

SNSを活用し、ユーザーをエヴァンジェリストに

本物の果物のようなみずみずしさを味わえるフルーツリキュール「あらごし」シリーズが看板メニューの梅乃宿酒造。元々はBtoB事業に注力してきた同社であったが、2022年7月よりBtoC事業にも本腰を入れるようになった。EC事業を担当している古澤氏は、博報堂プロダクツと協働でECサイトを刷新。すると、わずか半年ほどでECサイトでの売上が10倍以上となり、現在も好調が継続している。驚異的な売上成長を果たすためには、ECサイトの事業者と運用会社、双方においてそれぞれテクニックや心構えが求められるという。

まず、事業者に必要な考え方の一つとして「パーパス・ミッションから ECビジネスのコンセプトを考える」ことを古澤氏は挙げる。梅乃宿酒造は「新しい酒文化を創造する」をパーパス、「驚きと感動で世界中をワクワクさせる」をミッションとして設定しているが、それらの実現には消費者に直接アプローチをかけることが不可欠だと考え、BtoC事業にも力を入れるように。そこで「#ワクワクの蔵」をEC事業のコンセプトとして掲げ、SNSで消費者にコンセプトを訴求。「SNSを通じてワクワクを届けることで、ユーザーに自社商品のエヴァンジェリスト(商品の良さを宣伝する伝道師)になってもらいました」と古澤氏は語る。


写真 人物 古澤氏は、事業会社にとってパーパス・ミッションから ECビジネスのコンセプトを考えることが大切と語る。
古澤氏は、事業会社にとってパーパス・ミッションから ECビジネスのコンセプトを考えることが大切と語る。

消費者心理をくすぐるワクワクの顧客体験

ユーザーとの関係性を構築するためには、消費者自らが「SNSで拡散したくなる商品設計」も重要となる。古澤氏は「飲む。食べる。かける。たのしみ方、超自由」がコンセプトのリキュール「大人の果肉の沼」を開発。従来のお酒のイメージを覆すネーミングや内容、ボトルデザインなどが「思わず他人に話したくなる」と、SNSで大きなバズを生み出した。

さらに、開発段階の商品をあえて期間限定で販売し、その商品についてのアンケートに回答してもらうことで、ユーザーに「梅乃宿酒造と一緒に商品開発をしているような体験」を提供した。この施策についてもSNS上で多くのユーザーが反応している。このように顧客体験の創出によってエヴァンジェリストを育成することで、効果的に商品を普及できるという。ただし、これらの施策は短いスパンで定期的に考案しなければユーザーに体験を届けるのは難しく、古澤氏は「この1年は、体験創出の連続でした」と振り返る。

梅乃宿酒造は顧客体験を提供することで売上を大きく向上させたが、「自社の組織体制」がネックとなっていた。売上が大きくなれば業務の幅も広がるため、そのままのチームでは対応が追い付かず、どうしても組織連携を強化する必要がある。そこで、EC事業と広告運用のチームに商品開発の部署を取り入れ、製造以外のECに関わる部署をすべて古澤氏のチーム下に配置。連携を強化し、業務スピードの向上を図った。

サイトの最適化と継続的なアプローチが成功の鍵

講演会の後半からは「ECサイトの運用者に知ってほしいテクニック」を紹介。博報堂プロダクツの早川氏は、ECサイトのショッピングカートに関して「コスト/工数を抑え、ASP型カートへリニューアル」することを勧めている。ASPカートには商品選択や決済など、ECサイトに必要な基本機能が備わっているため、採用することで一からサイト構築する手間を省くことができる。ユーザーにとっても、直感的に操作できるようになるという。また、レコメンド機能やランキング機能をはじめとした売上に直結する機能が搭載されることも、リニューアルすることのメリットとして挙げた。

商品を買い求めやすいことはECサイトの前提条件だが、ユーザーにブランドならではの体験価値を感じさせることも重要だ。早川氏は「梅乃宿酒造はお酒を取り扱っているため、サイト上で商品の使用シーンなどを見せてシズル感を演出し、ユーザーに“ワクワク”を体感してもらえるようにしました」と実例を紹介した。


写真 人物 早川氏は、ECサイトのショッピングカートに関して「コスト/工数を抑え、ASP型カートへリニューアル」することを勧めている。
早川氏は、ECサイトのショッピングカートに関して「コスト/工数を抑え、ASP型カートへリニューアル」することを勧めている。

新規のリード顧客獲得について博報堂プロダクツの宮田氏は、「WEB広告運用では、最適化に向けて最低でも週に1回は変化を加えること」がモットーだと話す。賞味期限の短いWEB広告では、運用状況に応じて新しいクリエイティブを短期で開発し、内容を精査することが求められる。さらに、広告媒体についても最適化が必要。運用が好調の媒体があれば、優先的に予算をかけることを検討し、新規媒体にも常にアンテナを張って効果が見込めるそうなものを模索してきた。結果的に、40~50種のバナーを常に入れ替えながら運用し、最適化を進めてきたという。


写真 人物 宮田氏は、WEB広告運用では、最適化に向けて最低でも週に1回は変化を加えることがモットーと話す。
宮田氏は、WEB広告運用では、最適化に向けて最低でも週に1回は変化を加えることがモットーと話す。

会員登録や注文完了などのユーザーのアクションに対して自動で通知を送る「トランザクションメール」についても、徹底的にブラッシュアップを重ねるべきだと早川氏は語る。トランザクションメールは全ユーザーに配信される特性上、将来的にECサイトへの入口として活用される見込みがあるためだ。実際にメールのフッターにECサイトへのリンクを加えただけでも売上につながった。


写真 セミナーの様子 当日は、ECビジネス成功の秘訣やノウハウを多々お伝えした。
当日は、ECビジネス成功の秘訣やノウハウを多々お伝えした。

運用会社に求められる心構えとは?

ECサイト運用会社の心構えとして、宮田氏は「事業者様と同じ気合・本気度で売上のために徹底的に議論してほしいです」と語る。博報堂プロダクツでは梅乃宿酒造と毎週ミーティングを実施し、タスクや施策の課題感を共有しながら、同じ目的意識を掲げて今後の運用に関する議論を進めている。最後に「『サイト上でどこが一番大きな改善インパクトを生むポイントになるか』あるいは『一番大きなボトルネックはどこか』ということを常に意識することが大切です」と、ECの売上を上げるためのポイントを伝えている。

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