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心に残る、新しい表現を――第60回シルバー受賞者座談会

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第61回の作品募集開始を前に、第60回「宣伝会議賞」シルバー受賞者座談会を実施。これまでの取り組みや今後の目標について、6名に改めて話を聞きました。

(本記事は月刊『宣伝会議』10月号に掲載されているものです)

 

サントリーウエルネス
内野大介さん

光風企画
小川晋太郎さん

会社員
塩月尚平さん

フリーランス
野田正信さん

ペンギンギン
密山直也さん

トナカイ
向井正俊さん

 

「これだけやっても届かないんだ」という絶望感はありました。

──これまでどのようなチベーションで取り組んできましたか。

内野:「宣伝会議賞」は受賞することがキャリア形成に直結するアワードだと考えています。私自身はメーカーに勤務しているのですが、クリエイティブに携わりたいという思いがあり、実績をつくりたくて応募しました。今回の受賞をきっかけに、社内報の編集を任せてもらうことに。応募は今回で3回目です。

塩月:私は前回3度目の挑戦で受賞しました。最初の応募は20数年前。現在はテレビ局で記者とカメラマンをしていますが、当時はフリーターで、将来の仕事のきっかけをつくれればと思い応募しました。第60回は10年ぶりの応募でした。普段はニュース原稿を書いているのですが、それだけだと“言葉をつくる脳”が鈍っていると感じたので、刺激を与えるために挑戦しました。

密山:宣伝会議「コピーライター養成講座」の基礎コースを受講したことがきっかけで、応募を始めました。一流のコピーライターの方々にコピーを見ていただける機会は他にはなかなかないので、今は力試しとして毎年応募しています。

小川:20年くらい前、大学生のときにコピーライターという仕事があることを知ってから応募を始めました。新卒で出版物専門商社に就職してから広告制作会社に転職した私にとって、自分の書いたコピーが第三者から評価されたという事実は仕事でアピールできるので、ここ数年は時間をつくって取り組んでいます。

野田:私は大学卒業後に普通に就職したのですが、何か書く仕事をしたいという思いは持ち続けていました。初めはエッセイの公募などに応募していましたが、なかなか結果が出ず。「宣伝会議賞」を知ったのは第38回のとき。初応募で協賛企業賞をダブルでいただけて、贈賞式の場も非常に楽しくて⋯すぐにコピーの世界にはまってしまいました。若いころは本職にできたらと思っていましたが、今は何か新しい表現をつくりたい、世の中に提示してみたいという思いで取り組んでいます。

向井:初応募は14年程前。当時、専門学校でデザインを勉強していました。卒業して2年くらい経ったときにシルバーをいただき、もう少し続けたら自分の中に形になるのではないかと思って、今に至ります。

 

──改めて、シルバー受賞の感想をお聞かせください。

内野:ファイナリストの作品を誌面で見たときに、素晴らしい作品ばかりだと感じて⋯。強敵揃いで、受賞できるとは思っていませんでした。贈賞式で協賛企業の方々と交流できたのも嬉しかったです。

塩月:10年ぶりの応募で、一次審査を通ったのもこの1本だけだったのでファイナリストに残ったのも信じられなくて⋯。今回は自分が生まれて初めて虫歯を治療した直後だったので、実体験に基づいた言葉が強いのかな、と改めて感じました(編集部注/パナソニック「キッズドルツ」の動画広告部門で受賞)。

密山:私はファイナリスト30作品中3本が残っていて、正直、これだけやってもグランプリに届かないんだ、という絶望感はありました。もちろんシルバー受賞の喜びはあるのですが、あと一歩がどれほど遠いんだと⋯。ただ終了後に、コピー仲間と打ち上げができたのは良い思い出になりました。

小川:私は今回、新婚旅行のため贈賞式に出席できず、YouTubeライブで見ていました。一次審査通過は2本だけだったので、シルバーで名前が呼ばれたときは全身に鳥肌が立ちました。

野田:このタイプの作品がグランプリになったことはなかったので、どうかなと思っていたのですが⋯シルバーで名前を呼ばれて、また次に向けたモチベーションになりました。

向井:期待していたコピーがシルバーで呼ばれたときは、グランプリに届かなかった悔しさが強かったですね。ファイナリストに3本残ったことで、余計に悔しかったです。

 

世の中にあふれるテキストに自然と触れるようにしています。

──コピーを書く際に、参考にしているものはありますか?

野田:2年前までは、一次審査以降の通過作品が収録された『SKAT』を持ち歩きながら行き詰まったときに読んでいたのですが、昨年はやり方を変えてみようと思って読まなかったんです。そうしたら受賞できたので、今後どうするか迷っています⋯。それ以外は、普段からSNSを眺めたり、雑誌をパラパラ見て見出しを読んだり。世の中にあふれるテキストに自然と触れるようにしています。

密山:やはり「宣伝会議賞」で審査を通過したいなら、過去の通過作品を見て「どう考えたんだろう」とか、思考をたどるのがよいと思います。

小川:本はよく読みますね。仕事に直結するものばかりですが、本から得たマーケティングやコンセプト設計に関する知識がコピーを考える際の良いアウトプットに繋がっていると思います。「宣伝会議賞」に取り組む前に、谷山雅計さんの『広告コピーってこう書くんだ!読本』(宣伝会議)を読み直して、気持ちを切り替えるようにしています。

向井:私はあまり本を読むのは好きではないので、家にある映画DVDのタイトルを眺めたり、なんとなく観ているうちに課題に関係あるシーンが出てきたり。そうやってアイデアを広げることはありますね。

塩月:意識的なインプットはなかなかできていないのですが、身近な人を観察するようにしています。

 

「川端康成」ではなく「太宰治」で出していたんです。

──これまで取り組んできた中で、印象的なことはありますか。

野田:2005年にシルバーを受賞したときに贈賞式で眞木準さんとお話できて、褒めていただけたことが、今まで「宣伝会議賞」に取り組む原動力になっています。

内野:私はいつも、コピーを企業の方に使っていただけるようにと考えているんです。一昨年は松井証券さんの課題でテレビCMコンテ、今年はコシダカさんの課題で実用化のお話をいただいたのが思い出に残っています。今後も実用化にはこだわりたいですね。

それからもうひとつ衝撃的だったのは、第59回にグランプリを輩出したオトバンクさんの課題で、「それではお聴きください、太宰治で走れメロス。」を提出していたこと(編集部注/グランプリは「それではお聴きください。川端康成で伊豆の踊り子。」)。あのときは1週間立ち直れなくて…それ以来、もう一歩踏み込んで考えることの大切さを知りました。

向井:実は昨年応募期間直前に骨折をして、ペンが持てなくなり…初めてデジタルに切り替えたんです。それまでのやり方を変えざるを得なくなったところで、結果が出た。今年はどうしようか迷っています。

小川:毎年ドキドキしながら一次審査の通過状況を確認し、いつか自分も贈賞式の舞台に立ちたいと思っていたのに出席できなかったのはショックでした。次こそはと意気込んでいるところです。

塩月:皆さんの作品を見て、やっぱり言葉って楽しいなと実感しました。甥が24歳なのですが、私の受賞をきっかけに今年はやってみようと思っているようで。それがすごく嬉しかったですね。

密山:応募して2年目の時に最終ノミネートされて、『SKAT.』の企画「私の選んだ一本」で、最終審査員の前田知巳さんと中村禎さんがその作品を選んでくださったんです。翌年の贈賞式で中村さんにお礼を伝えたら、「君の名前は覚えていなかったけど、君のコピーは覚えているよ」と言ってくださった。今でも続けられているのは、このときの経験があったからですね。

 

いろいろな人が挑戦することで広告界の発展につながったら

──皆さんから他の方に聞いてみたいことはありますか。

塩月:応募する段階で、手ごたえはあるものなのでしょうか?

野田:自分では取捨選択しているつもりですが、受賞作は意外でした。

内野:2番目、3番目くらいのものが選ばれていて、逆に自分の選球眼を疑ってしまいましたね⋯。皆さんはどういう風に選んでいますか?

向井:自分の中で一定の面白いと思う基準ってあると思うのですが、それは“なんか好き”とか“きれいに言えた”とか、“馬鹿馬鹿しくて好き”とか、いろいろな視点があると思うんです。だからその中で、「今年はこの基準の作品が上に行けたな」とかを確かめているというか。審査員の方に、「こんなのどうですか?」と投げかけている感覚です。

 

──今年の意気込みは?

野田:ヒットの延長ではホームランは打てないと思っているので、空振りを恐れずにホームランを狙っていきます。「宣伝会議賞」の良いところは、自分なりの目標を設定して参加できるということ。いろいろな方が、挑戦してくれたらと思っています。

密山:審査を100本でも200本でも通過して、誰が見てもまぐれと言われない結果で、グランプリを取るのが理想です。

向井:贈賞式でもないとなかなか東京には行かないので、また賞を取ってお酒を飲みに行きたいです(笑)。

小川:願望になってしまいますが、コピーライターとして仕事をしていると、1本のコピーを生み出す苦労を理解してもらえていないと感じることがあります。だからこそ、多くの人に「宣伝会議賞」に取り組んでもらって、コピーを考える面白さだけでなく難しさを体感してほしいですね。それが広告業界の活性化に繋がっていくといいなと思います。

塩月:今回はまさかの受賞という感覚でしたが、やはり一度味わってしまうと欲が出てしまうので⋯またあの場に立てたら嬉しいです。身近にコピーの話をできる人はいなかったのですが、今年は甥という仲間ができたので!一緒に、引き続き楽しんでいきたいと思います。

内野:同じ言葉で、本賞と協賛企業賞のダブル受賞を成し遂げたいなと思っています!そして最後に、応募者を代表して、膨大な量の作品を審査してくださっている審査員の皆さんにお礼を言いたくて…いつもありがとうございます!

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  • 「その言葉が、未来を変える。」
  • 第61回「宣伝会議賞」応募のご案内

「宣伝会議賞」は、広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。1962年の創設以来、「コピーライターの登竜門」として長年にわたり、若手のクリエイターやクリエイターを目指す方々にチャンスの場を提供してきました。60万点近くの作品が集まる、“日本最大規模の公募型広告賞”として進化を続けています。

課題を掲載した月刊『宣伝会議』10月号は、9月1日より全国の書店、Amazonで発売中です!


実データ 第61回宣伝会議賞