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コラム

グローバルマーケティングウォッチ

ジェネレーティブAIがもたらすメディア業界へのインパクト

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ChatGPT、Midjourney、Stable DiffusionなどのジェネレーティブAIはマーケティングやメディアの世界を席巻しており、今年の流行語にまでなりつつある。しかし、ジェネレーティブAIの活用はまだ初期段階にあり、業界全体に与える影響は未知数だ。ジェネレーティブAIが今後もたらすであろうメディア業界へのインパクトを予測し、ブランドがどのようにジェネレーティブAIを活用したらよいかを解説する。

 

ジェネレーティブAI(生成AI)とは?

ジェネレーティブAIとは何かを説明するために、世界で最も人気のあるジェネレーティブAIツールChatGPTを活用してみた。ChatGPTにジェネレーティブAIの定義を依頼すると、次の応答が得られた。

※これらの応答はもともと英語でやりとりされていたものを日本語訳している。

 

質問:ジェネレーティブAIとは?

この応答は、ほとんどの人にとっては少し技術的すぎるかもしれず、わかりにくい。そのため、質問を以下のように変更し、ChatGPTから別の応答を受け取った。

 

質問:ジェネレーティブAIとは何かをわかりやすく説明してほしい

2つの回答の違いをみると、ChatGPTが、質問に基づいてWebやその他の参照を精査して情報収集しただけでなく、その情報に基づいてトンマナや情報量を加味した新しいコンテンツを生成していることがわかる。このように、従来のAIとジェネレーティブAIの主な違いは、最も適切な定型コンテンツや既存のコンテンツを見つけるのではなく、それらの情報を基に新しいコンテンツを作成できることにある。

 

日常化するジェネレーティブAI

ChatGPTが2022年11月に一般リリースされた後、その利便性により、世界で最も急速成長を遂げたインターネットサービスとなった。UBS / Yahoo!ファイナンスのレポートによると、世界中の1億人のユーザーにリーチするまでの時間は、リリース後わずか2カ月。TikTok、Instagram、Spotifyなどと比べても非常に短期間の間に広まっていることがわかる。

出典: UBS、Yahoo! Finance

特に、若い世代の間では、仕事や学業を補完するために、頻繁に活用されている。2023年3月の時点では、ChatGPTのユーザーベースの60%以上が34歳未満であり、男性ユーザーが女性ユーザーを上回っていた。

出典: Statista

 

ジェネレーティブAIのマーケティングにおける活用方法

マーケティング広告業界では、コンテンツ作成、キャンペーンの最適化、パーソナライゼーションなど、ジェネレーティブAIの様々な活用方法が見受けられる。結果、業界別にみると、ジェネレーティブAIの活用はマーケティングと広告業界で最も高くなっている。

出典: Statista

 

特に期待されているのは、ジェネレーティブAIによる人材のスキルアップおよび、業務効率の向上だ。AIが人間に取って代わることは(まだ)できないが、人とAIが協力することにより、いままで時間がかかっていたタスクがスムーズになることが期待されている。そのような目的で広告代理店各社は様々なツールを使用し始めている。IPG Mediabrandsでは、Googleとパートナーシップを組み、メディアだけでなく、コンテンツ制作やブランド分析にAIを活用し始めている。

出典: Ipsos

 

サーチエンジンマーケティングにおける生成型AI

ジェネレーティブAIのもう一つの使い方は、生成型AIの結果を検索エンジンに組み込むことだ。

ChatGPTが爆発的に普及し始めた直後、Microsoftは、検索エンジンBingを含む複数のMicrosoftアプリケーションに生成AI機能を組み込み、ChatGPTの作成者であるOpenAIとのパートナーシップを拡大した。2023年2月のメディアイベントで、MicrosoftはChatGPTを搭載した「新しいBing」を発表し、結果Bingの新規ユーザーおよびアクティブユーザーの増加につながった。

そのようなMicrosoftの動きを、検索エンジンリーダーのGoogleが放っておくわけがない。OpenAIとのパートナーシップがアナウンスされたMicrosoftのイベントが行われる前日、Googleは現在パブリックベータ版で利用可能な独自のAI搭載検索エンジンBardを発表。

また、生成AI検索エンジンの競争は、英語圏の国だけでなく、中国にも及んでいる。大手検索エンジンであるBaiduも、ユーザーが会話型AIを使用して検索結果を実行できるようにするコードネーム「Ernie Bot」という独自のAIイニシアチブを発表した。

世界最大のデジタル広告フォーマットである、サーチエンジンマーケティング市場が、今後ジェネレーティブAIによりどのように移り変わっていくのかによって、今後のグローバルデジタル広告エコシステムを大きく左右させることとなるだろう。

 

ジェネレーティブ AI を活用する際の注意点

このように様々な活用方法がみられるジェネレーティブAIを、ブランドが自社のマーケティングやコンテンツの取り組みに活用するためには、ジェネレーティブAIの利点だけでなく、問題点もしくは注意点も理解する必要がある。

問題視されているのは、ジェネレーティブAIが参照したコンテンツの著作権をどのように考慮すべきか、AIの活用により職を失った労働者に対しどのように対応すべきか、また、間違った指示などによりAIが誤った情報を作成した場合どのように対処するべきかなど、多岐にわたる。AIを効率的に活用するためには使う側の人間がAIの特徴を理解し、AIが人間の望むことを実行するように適切に指示する必要がある。そのためには人間、AI双方のトレーニングおよび使用に関するガイダンスが必要になってくる。

このような問題点を解決すべく、政府と業界のリーダーは、テクノロジーの責任ある使用を保証するフレームワークに関して積極的に議論をしている。IPGは業界を横断した団体Partnership for AIに参加して、合成メディアやクリエイティブ開発に生成AIを使用した際に、どのようなステップを踏むべきか、責任ある使用を推進している。

 

“Generative AI can be a great creative partner for us, if we can keep an open mind and learn to work with it,” says Richard Yao, Associate Director of Strategy and Content at IPG Media Lab. In order to achieve that, he believes it would require “a human-centred approach that not only prioritizes the creative input of workers, but also keeps human oversight in the feedback loop.”

 

「ジェネレーティブAIは、オープンマインドを保ち、技術を適切に扱うことを学ぶことができれば、私たちにとって素晴らしいクリエイティブパートナーになる可能性があります」と、IPGメディアラボの戦略およびコンテンツ担当アソシエイトディレクターであるリチャード・ヤオは述べている。それを達成するためには、「労働者の創造的なインプットを優先するだけでなく、フィードバックループを活用することにより、人間の監視のもとでAIが働く、ヒューマン・セントリックアプローチ」が必要であると彼は信じている。

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出典:
1. What is Generative AI? Artificial intelligence explains | World Economic Forum (weforum.org)
2. Introducing ChatGPT (openai.com)
3. Here are 30 generative AI tools you can try for free (fastcompany.com)
4. https://www.technologyreview.com/2023/02/08/1068068/chatgpt-is-everywhere-heres-where-it-came-from/
5. https://lore.com/generative-ai-history
6. https://www.forbes.com/sites/bernardmarr/2023/07/24/the-difference-between-generative-ai-and-traditional-ai-an-easy-explanation-for-anyone/
7. https://www.ipsos.com/en-us/future/category/intelligence
8. https://www.forbes.com/sites/qai/2023/01/27/microsoft-confirms-its-10-billion-investment-into-chatgpt-changing-how-microsoft-competes-with-google-apple-and-other-tech-giants/?sh=7f8636ee3624
9. Bing vs. Bard – adoption curve of AI search
10. https://www.theverge.com/2023/3/9/23631912/microsoft-bing-100-million-daily-active-users-milestone
11. The New Bing – Learn More
12. Try Bard, an AI experiment by Google
13. AI trust gap and monetization dilemma
14. https://hbr.org/2023/04/generative-ai-has-an-intellectual-property-problem
15. Google I/O developer event recap
16. Social Media in Flux
17. Snap Summit 2023 recap
18. https://blog.google/technology/ai/google-responsible-generative-ai-best-practices/
19. https://investors.interpublic.com/news-releases/news-release-details/interpublic-group-and-mccann-worldgroup-join-partnership-ai