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カネテツデリカフーズ「ほぼカニ」から学ぶ 多様化するタッチポイントとその仕掛け

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「ほぼカニ」を生み出したカネテツデリカフーズ

カネテツデリカフーズが2014年に発売したカニ風味かまぼこ「ほぼカニ」。カテゴリー内では後発商品でありながら、確固たるブランドを築き上げた「ほぼカニ」のブランド戦略について、同社マーケティング部の一柳圭氏が解説した。

カネテツデリカフーズは練り製品の製造・販売を事業としており、特に関西ではキャラクター「てっちゃん」をフックに圧倒的な知名度を誇っている。人気商品の「珍比良」は発売から72年のロングセラー商品だ。ミッションは「すべての人々の食の課題・問題に寄り添い、解決することで、世の中を少しでも良い方向へ好転させてゆきたい」としている。一柳氏は自身のミッション「食を通じて、誰も孤立しない、団らんのある社会をつくり続けたい」との親和性を感じたことも同社への転職理由の一つだったと話した。

「ほぼカニ」のコンセプトは「世界一カニに近いカニ風味かまぼこ」。後発企業として、それだけで勝負できるのか、懐疑的な意見もあったというが、この状況を変えたのはユニークなネーミングだった。ネーミングの妙もあり、消費者発信で拡散。発売から2020年頃まではメディアで紹介されると短期的に販売が伸びることを繰り返していたが、一柳氏らがマーケティング部を立ち上げた21年以降、より安定的な販売を目指した仕掛けを行い、2022年には「日経POS 練り物ランキング」で1位を獲得した。

 

露出効果を最大化するためのポイント

カネテツデリカフーズ マーケティング部 一柳圭 氏
カネテツデリカフーズ マーケティング部 一柳圭 氏

メディアへの露出効果を最大限に利用するため、生活者、商品、小売りの三つの軸で対策を検討したという。生活者向けにはメディアの力を借りた発信ではなく、自ら主体的に行う路線に見直した。具体的には、それまで「てっちゃん」というキャラクターのtwitterと500人ほどの登録人数だったInstagramしかなかったところ、幅広い年代層が活用しているLINEの公式アカウントを用意しました。本当は質も大事ですが、とにかくまずはどれくらいの人をつかむことができるかにトライしました」(一柳氏)

商品軸では、従来、本物のカニでは高級さゆえに挑戦できない食べ方でも、「ほぼカニ」であれば楽しみ方を広げられるという視点で展開を考えた。これは小売りの軸ともつながっており、開発者の考えたメニュー提案の「ほぼカニトースト」を軸に、パスコの「超熟」とコラボで店頭の売り場づくりを行なった事例を紹介した。パスコとのコラボについて一柳氏は「『超熟』も無添加という共通点があったので、面白い世界観が作れるのではないかと考え、飛び込みで提案しました。自社だけではここまでの展開はできなかった。共感が生まれ一緒に取り組んだことで知名度が上がりました」と説明した。

パスコとの事例をきっかけに永谷園やリケン、一柳氏の古巣でもあるミツカンともコラボが生まれた。「メニュー開発も自社だけではなく、コラボ相手からの提案もあるので2倍、3倍と広がる。いろいろな会社と楽しみながら輪が広がっています」と話した。さらに現在は食品以外の業界との協業も進んでおり、電機メーカーのLITHONや兵庫県立大学との取り組みも紹介した。

こうした取り組みを生み出したポイントについて一柳氏は「美味しい、健康ということは商品でもある程度謳えます。ですが、そこに面白い、楽しいという言葉はつけられない。『ほぼカニ』はそこに強みがあった。盛り上がりを自社だけのものにしないで、仲間を作っていく。面白いこと、楽しいことをやっていると人が集まる。これはコミュニケーションとして大事」と解説した。

解説する一柳圭氏

 

メディアには「第一発見者」として広めてもらう

一柳氏はメディアで取り上げられ、認知を広げるためには、第一発見者になってもらうことが最も大事だと指摘。その理由として、三つのポイントを挙げた。一つ目は、認知が低いことは悪いことではないというもの。テレビや新聞などで「発見」と紹介されたとき、それがすでに視聴者や読者に知られている、日常的に見るようなものでは興味・関心を集めることはできない。誰も知らないものやことを説明して、いいリアクションが生まれると、教える側は「もっとたくさんの人に教えよう」という意欲が生まれるからだ。二つ目が取り上げた人の社内評価が上がること。三つ目が関わった人たちがファンになることだ。三に関して一柳氏は「このセッションに参加いただいている皆さまもぜひファンになって、面白がって広めていただきたい」と期待を口にした。

この事例としては、ほぼシリーズとして10月まで販売していた「ほぼいくら」の取り組みを紹介。EC限定で販売を行い、テレビを中心に第一発見者を生み出し、拡散した。その再現性はメディアが取り上げる際に、自発的に寿司屋や居酒屋での企画で実証してくれたという。続けて、ほぼシリーズの今後に関しても言及し、EC限定販売も完売が続く「ほぼうなぎ」を紹介した。また、「ほぼカニ」についても、4月1日を「ほぼカニの日」として記念日登録したことや、マルコメからコラボ商品が発売されたことにも触れた。「2024年は発売10周年になるので、『ほぼカニ』で食卓を明るくできるような、いろいろなコラボを予定しています」(一柳氏)

最後に一柳氏は「カネテツデリカフーズは世界のシーフードカンパニーを目指しています。企業理念に基づいて、商品だけではなくライフスタイルが変わるような商品を作っていきたいですし、そのようなブランドになりたい。ほぼシリーズ、当社と何か面白いことをという企業の方々と一緒に取り組みたいと思っています」と話した。

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