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日本人の気質を表現する「YMO」って何?

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日本市場における「YMO」と言えば…?

2023年末の記事でYMOという表現に遭遇すれば、多くの方が世界的な音楽家で今年、逝去された坂本龍一氏の音楽ユニット「YELLOW MAGIC ORCHESTRA」を思い浮かべる人が多いだろう。

しかし、私が取り上げたいYMOとは日本人の三大気質を指す言葉で、かの偉大なコラムニストである故・ナンシー関氏が「日本人の三大気質はヤンキー、ミーハー、オタクである」と指摘した頭文字をとったもの。つまりはYMO(ヤンキー、ミーハー、オタク)のことである。

ナンシー関氏の没後20年以上が経過した2023年末においても、ヤンキーとミーハーとオタクと表現された日本人の気質は、時代を超えて本質を捉えていると感じる。日本市場の生態系「YMO=Yen Marketing Organisms」は、この三大気質の「YMO=ヤンキー、ミーハー、オタク」の構成比率の変化とともに形を変えてきたと思う。そこで本記事では改めて、日本市場のYMO「Yen Marketing Organisms = Yankee, MEHER, Otaku」を提唱したい。

すでに、日本には「オタクの時代が到来している!」

まずはここ10年間でヤンキーとミーハーとオタクの構成比率がどのように変化したかを、同一の質問項目を継続して毎年調査しているビデオリサーチ社「電通d-campX・関東」のデータを使って振り返ってみたい。

始めに、次の3つの要素を満たす人をヤンキーと定義した。1つ目は、気心の知れた仲間とつるんでその関係を大切にする傾向から「古くからの友人関係を重視する」という要素。2つ目は、都会よりも自分の生まれた地元を大切にする傾向から「地元の伝統、文化を大切にする」という要素。3つ目は、社会に反抗することにプライドを持つツッパリに対し、喧嘩は好まず社会に反抗はしないヤンキーの特性から「not反発したい(「反発したい」ではない)」という要素、これら3つ全てを満たす人をヤンキーとして集計した。

次に「流行に乗りたい」と回答している人をミーハーとして集計、さらに、自分を「オタクだと思う」と回答している人をオタクとして集計した。これらの定義に基づいて集計したYMO「ヤンキー、ミーハー、オタク」の構成比率の推移は下記の通りである。

グラフ その他 電通d-campX・関東 YMO「ヤンキー、ミーハー、オタク」の構成比率の推移

YMOの構成比率を見ると、男性全体では2018年3月以降に、女性全体では2023年3月にオタクが1位となっている。オタク時代の到来である。

20-34歳の若い世代に目を移すと、男性では継続してオタク気質が1位であったのに対し、女性では2014年3月の23.9%から2023年3月に46.0%と約2倍となり、同世代の男性45.6%も追い抜くほど急速にオタク化が進行している。どうやらオタク時代の到来は「若い女性のオタク化」が鍵のようだ。

それでは、いったいなぜ若い男性中心のオタク気質が、こんなに急速に女性側にも進行したのだろうか?その原因を考察してみたい。

若年女性のオタク化の進行が日本のオタク時代を牽引している

オタクに焦点を当て、再びビデオリサーチ社「電通d-campX・関東」のデータを使って、2015年から2023年までの2年ごとのオタク構成比の推移を振り返ってみたい。

グラフ その他 電通d-campX・関東 2015年から2023年までの2年ごとのオタク構成比の推移
グラフ その他 電通d-campX・関東 2015年から2023年までの2年ごとのオタク構成比の推移

2023年3月には日本国民の3割超がオタクを自認する、オタク時代が到来していることが見てとれる。特に女性Teenと20代男女では約半数がオタクを自認しており、若年女性にオタク気質が浸透したと言える。

「オタク気質の浸透」は、インスタグラムの1週間以内利用率の推移と相関しており「SNSの浸透」が、オタク気質が急速に女性側に浸透した主要因であると考えられるだろう。また、若年女性における「自分ではオタクだと思っていないが、そう言われる」と解答した割合が下がっており、実際はオタクであってもオタクということを自分で認めたくなかった人が減少している。

これは、SNSの浸透によりSNS上の「趣味コミュニティ」への参加が一般化し、「オタク」が持つネガティブイメージが、「コミュニティ」というオブラートによって、払拭されたと考えるのが適当であろう。リアルでは自分の持つオタク趣味と仲のよい友人が同じではないことも多いが、SNSでは同じオタク趣味を持つ人と簡単につながることができるようになり、コミュニティ参加でより深くオタク趣味を楽しみ、深めることが可能になった。このように「SNSの浸透」で「趣味コミュニティ」参加が一般化し、特に若い女性層で「オタク」自認者が急増した結果、若い女性のオタク化が進行してオタク時代が到来したと考えることができよう。

ここまでで、日本にはおいてはYMOの中でも、特に「O(オタク)」が市場を席巻していること。かつ、その動向を若年層女性がけん引している状況をデータを基に解説してきた。本記事の後篇では、日本市場におけるオタク市場の実態について詳述していく。

後篇:本格的な「オタク時代」が到来! 市場攻略の鍵となる2つのハイセンサーとは?

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写真 人物 プロフィール 電通 戦略プランニングディレクター 宮前政志氏

電通
戦略プランニングディレクター
宮前政志氏

『売れることが最強のブランディングである』をプランニングモットーに、データ起点で事業グロース構造を把握するグロースコンサルティングを推進。同時に流通と顧客接点で新しい体験をつくる「PROMOTAG®」の開発、情報回遊時代の購買行動モデル「SEAMS®」の提唱も。