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アンバサダーマーケティングが消費者とのコミュニケーションを生み出す

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AdverTimes.Days(アドタイ・デイズ)は、広告・マーケティングの実務者、多様な視点、構想、実績を持った講演者と共に、業界がその時々に直面する課題を提示し、解決の方向性を導き出していくことを目的とする、「講演者と参加者の共創を目指すハイブリッド型のイベント」として毎年開催されている。

9月21日から27日まで行われた今回のAdverTimes.Daysではテーマを「Invisible→Visible」と設定。メディア投資の効果、テレデジ融合の最適な投資配分、さらには前例通りが通用しない時代のマーケティングの勝ち筋まで、「見えない」を可視化する新たな挑戦をする講演者らが、自らの取り組みを解説した。

ビジュアルマーケティングプラットフォームの開発、運営のサービスを提供するvisumo 代表取締役社長の井上純氏が「CM止めても事業拡大し続けるワークマンのアンバサダーマーケティングとは」と題し、2018年にワークマンPlusをスタートし、たった4年間で700億円以上のチェーン全店売上を増加させたワークマンの、アンバサダーの選定から実際の販促や商品開発の取り組み内容について解説した。

アパレルメーカーのワークマン、2016年に事業ドメインを作業服から機能性ウェアに拡大


データ ワークマン「声のする方に、進化する。」

アパレルメーカーのワークマンは現在約1000店舗をフランチャイズで展開している。2017年に年商756億円、2020年には1200億円と順調に売り上げを伸ばし、2023年3月時点の売り上げは1698億円となっている。

ワークマンは従来から職人に向けて作業服を販売していたが、2014年には作業服の販売では売り上げが頭打ちになるという分析から、2016年事業のドメインを作業服から機能性ウェアに変更し、拡大した。その後、家族層や若者層に向けた「ワークマンプラス」(2018年)、女性をターゲットにした「#ワークマン女子」(2020年)、プロのための究極のワークウェアを提供する「ワークマンプロ」(2021年)を展開。直近では「ワークマンシューズ」(2022年)やビビッドカラーで若者をターゲットにした「ワークマンカラーズ」と毎年新しい取り組みを行っている。「ワークマンの社是は『声がする方に、進化する』。高機能で、低価格、汎用性のあるウェアを作る。何のためにその商品が必要なのかを考えて商品を作っている」と述べる。

アンバサダーマーケティングのきっかけはカリスマキャンパーのブログ

ワークマンでは2019年からアンバサダーマーケティングを開始している。「現在は約50名が公式アンバサダーとして契約している。彼らは無償で活動しているが、インフルエンサーと違う点はワークマンの熱烈なファンであること。職種は多様で猟師、ゴルファー、キャンパーなど。アンバサダーとの商品開発は600品にのぼる」という。

きっかけはカリスマキャンパーのサリーさんの「焚火の時にワークマンのヤッケを着たらいいよ」とのブログのコメント。従来「溶接の時に火花を避けるための綿素材のヤッケ」として年間3000着程度売れていたヤッケが、即完売したという。異例のヒットの原因に気が付いたワークマンがサリーさんに連絡、アンバサダー1号への就任依頼をして、ワークマンのアンバサダー企画が始まった。サリーさんの意見をもとに女性も着られるカワいい「コットンキャンパー」を開発するなど、商品の改善を行った結果2023年にはシリーズ累計40万枚を超えるヒット商品に育っています。

アンバサダーはカリスマキャンパーなどその道のプロで、普段の活動の中で消費者の声を聞き、何が課題なのかを集約、開発時にはワークマンにフィードバックをしている。ワンクッションあるので、一般的なアンケートよりもよりユーザーのリアルな声が集まる」という。

またアンバサダーは情報発信力があるので、メディアからの取材を受けることが多い。ソーシャルメディアで話題となっている商品やサービスを自社の番組で扱いたいからだ。アンバサダーマーケティングにはこのような効果もあるという。「ワークマンでは以前、CMを放映していたが、アンバサダーマーケティングを始めた翌年から止めている。アンバサダーの露出は広告換算すると60億円以上だと関係者がコメントしている」。

visumoを通じて写真や動画のUGCをオウンドメディアに二次利用


データ visumoとの取り組み

ワークマンでは、このようなアンバサダーとの取り組みや消費者のUGCなどのコンテンツをvisumoを活用して、自社のオウンドメディアに掲載している。

ビジュアルの多様化も可能となっている。例えばワークマンが撮影した商品ページ用写真の横に「ダウンを着て釣りをしている女性」「ダウンを着てキャンプをしているカップル」「ダウンを着てバイクに乗っている女性」などのUGCが同じページに掲載される。それを見れば、釣りやキャンプができる「防寒性」があり、バイクに乗って風に対処できる「防風性」であることが瞬時にわかる。「情報過多の時代、文字を読むことは少なくなっているが、直感的なビジュアルは動画も含めて、ユーザーには届きやすい」と述べる。

Webでは動画素材も掲載している。CGでテントの中が見えるような動画を差し込んだり、ハウツー(how to)動画を制作したり、アンバサダーがテントを説明している動画もある。ワークマンではアウトドア商品をネット販売のみで行っているため、アンバサダーがテントの設置方法などを説明した動画は商品購入に役立っているという。

アンバサダープロジェクトから創出されるUGCの活用フロー


データ ファンを生み出すアンバサダーマーケティング

このようにアンバサダーとは、一般人に近しい人で、その商品のファンであり、商品の情報をフォロワーに発信してくれる人なので、店舗スタッフもアンバサダーの属性に入ってくる。「アンバサダーの投稿を見てやってみた」というユーザーの投稿が増えている今、UGCがより拡散されている。「写真が素敵なので、ぜひ当社のWebサイトで使わせてください」など、SNS上でワークマンと消費者とのコミュニケーションが生まれている。各社は商品開発に必要な情報を消費者とのコミュニケーションの中で聞き出し、ここで得た消費者の声をマーケティングに活かすことも可能だ。

UGCの活用は我々にとって次フェーズに入ってきていると述べる井上氏。ワークマンの担当者は、「消費者とつながる関係性は大事だが、プロモーション目的で行うと絶対失敗する。当社では経営戦略に掲げた客層の拡大とそれを実現するものづくりに、アンバサダーと取り組んでいる」と述べているという。

アンバサダーを含めてファンがファンを育てていく。「ワークマンの事例を参考に新たなチャレンジをしていただきたい」と述べた。

誰でも簡単にデジタル活用ができる仕組みを提供


データ solutions

ビジュアルマーケティングプラットフォームの開発、運営サービスを展開するvisumoは「ビジュアルで新しい『体験』を支えること。ビジュアルで大きく『感情』を動かすこと」というビジョンを掲げ、2019年4月に設立された。「スマートフォンデバイスの普及と進化、またネットワークインフラの発展により、リッチなコンテンツが増えている。”読む”だけでなく、無意識に”見る”ということから生み出す顧客体験を信じて、ビジュアルマーケティングを推進していく。visumoは誰でも簡単に扱える仕組みを目指している」と同社取締役社長の井上順氏は述べる。

visumoが「誰でも簡単に扱える仕組みを目指している」背景には、昨今のデジタル人材不足解消への思いがある。日本では企業のデジタル人材へのニーズは増しているものの、絶対数の不足で採用や教育が難しいが、世界のテクノロジーは進化し続けている。「そのような課題を解決するためにvisumoではツールを開発して活動につなげることを目指している」という。

現在visumoではビジュアルデータプラットフォーム「visumo」を開発、展開している。

visumoではさまざまなビジュアルを一元管理、集めた写真や動画を自社のWebサイト、コーポレートサイト、ECサイト等にタグを貼るだけで、コンテンツを作ることができる仕組みになっている。

visumoはデータをいろいろなソリューションとつないでいくこともできる。visumoを活用すると、そこにスタッフが持ってきたコーディネートの写真を差し込み、その写真に関する商品も簡単に紐づけができてクリエイティブから関連する商品を訴求する仕組みや、InstagramやYouTubeの動画をうまく2次利用して、オウンドメディアに活用していくこともできる。

サービスを立ち上げて5年が経過したが、アパレルやインテリア、飲食業、観光業など様々な業種業態で延べ700社がvisumoを活用している。事例としてアパレルメーカーのワークマンの事例を紹介する。

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登壇者

井上 純氏
株式会社visumo 代表取締役社長

2012年にECフルフィル支援ベンダーからecbeing社に入社し、50以上のプロジェクトに参画。2017年にUGCを活用する新サービスとして“visumo”を立ち上げ。2019年4月に株式会社visumo設立と共に取締役に就任し、事業全体を管掌。2022年には導入社数が600社を超え、2023年4月に同社の代表取締役に就任し国内における次世代のビジュアルマーケティングを推進すべく活動中。