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地域から全国のメディアへ 紹介されるプレスリリースに必要なものを広報とメディアの立場から読み解く キーワードは「ストーリー」

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「自社で開発・販売した商材が、とても優れているのになかなか注目されない…」「地元メディアとの付き合いは深いが、ほかのエリアではどう広報活動をするべきなのか…」。都心部以外の中小企業では、こんな悩みを抱えている広報担当者もいるのではないだろうか。試行錯誤のうえ、愛知県にいながらも在京主要キー局含め50媒体以上の取材を受けることに成功した広報責任者の実体験と、大手WEBメディアの編集長のリアルな声から、地域から全国へアプローチするために必要な施策を読み解く。

東海エリアの企業に向けて、全国への広報術の講演を実施した

商品を全国ネットでテレビ放送されるまでに押し上げた手腕

愛知県名古屋市に本社を置く伊藤手帳株式会社は、1937年に創業した手帳メーカーだ。小牧市に構えた1400坪の自社工場で年間1,000万冊の手帳製造を行っている。この企業でいわゆる“ひとり広報”として、広報責任者を務めるのが神谷敦子氏だ。ITベンチャーの創業期に携わった後、和装業界に転身。ECサイトを手がけて半年で売り上げゼロから月商10,000,000円を達成するなど、マーケティング分野でその手腕を発揮してきた。現在、伊藤手帳では広報責任者として戦略立案からメディア対応まで幅広く業務を担当している。

最近では、地元・名古屋の愛知大学と連携した産学連携プロジェクトに注力し、その取り組みが主要キー局のワイドショーで取り上げられるなど、着実に結果を出しているが…。神谷氏は「数々の失敗をしてきました」と話す。

自ら話題を作るための情報収集

自社、そして自社商品に対して強い愛着を持っていた神谷氏は、取材/掲載されたい一心から「押して押して押しまくるプレスリリースを作っていました」と当時を振り返る。商品のよさを全面的打ち出すばかりで、プレスリリースを発信しても取材につながることはほぼなかったという。そこで神谷氏は、プレスリリースの内容を徹底的に見直すことに。PR TIMESが主催する勉強会に積極的に参加し、タイトルの付け方や内容の校正などフィードバックを取り入れた。その結果、地元紙などからの問い合わせが増えたが、神谷氏の目標であった在京主要メディアでの紹介には至らなかった。

日ごろの広報活動の中で、神谷氏は「広報の基本は社会の話題に乗ること」と考えると同時に「会社の経営戦略に基づいてできることはないか」と思案するように。とある経済紙で愛知大学が産学連携プロジェクトのパートナーを探していると知り、すぐに社内の調整をスタート。神谷氏は「企画書を作る段階から、社内をどう巻き込むかを考えて動くことが大事」と力説する。地元である愛知県を重視したいという社の方向性とも一致し、産学連携プロジェクトが実現。学生とともに開発した商品が大バズりした。そして名古屋のメディアから多数取材を受けたことに端を発し、目標としていた主要キー局での紹介までこぎつけた。では、ここで意識したこととはなんだったのか。

「企画書を作る段階から、社内をどう巻き込むかを考えて動くことが大事」と神谷氏は力説する。

失敗の連続が、50媒体以上の取材実績を生んだ

愛知大学の学生と連携して開発し、話題を呼んだのが「3STEP日記」だ。「出来事」「気づき」「次の行動」を3STEP(3枠・3行)で可視化する短文形式日記で、「ネーミングがおもしろい」と話題を呼び、50媒体以上からの取材を受けた。神谷氏は「社会の話題と合ったキーワードから題材を読み解く」ことを重視し、今回は「Z世代」というワードに着目。Z世代というトレンドワードに、商品がうまくマッチしたと分析している。

また、プレスリリース対策も徹底した。メディア担当者1人につき、1日1000件以上届くと言われているプレスリリース。その中から選ばれるために神谷氏が意識したのは「タイトル付け」だ。「全部読むのは不可能なので、中身を見てもらう工夫が必要です。ここはマーケティング時代のノウハウが生かされていると思います」。

神谷氏は「広報パーソンのNGポイント」にも言及。まずは自社の商品・サービスのアピール“だけ”をしてしまうことだ。商品やサービスがなぜ生まれたのか、必要とされる社会的な背景や意義を伝えることで、プレスリリースの持つ訴求力が高まる。そして、商品やサービスを詳しく説明しようとすると専門用語が多くなってしまうことも問題だという。誰が読んでも伝わる内容を心がけることで内容の解像度が上がり、取材につながりやすくなるのだ。

「自分が勤めている会社が紹介されるのはとてもうれしいことなので、手帳を作っているスタッフの方のことを念頭に広報活動を行っています」と神谷氏は話す。自社商品の理解はもちろん、社会のトレンドや課題をいち早く察知する力や実行力、選ばれるプレスリリースを作成するマーケティング力を組み合わせることで、エリアを超えて広報活動の効果を最大化することが可能なのだ。

一方、メディア側は… 動画SNS100万ユーザーのギズモード・ジャパンに聞く

情報を受け取るメディア側の声も紹介したい。ガジェット情報などを紹介するWEBサイト「ギズモード・ジャパン」編集長の尾田和実氏は、「地方にこそおもしろい情報がある」と声を弾ませる。尾田氏によると、2010年以降は都市中心部が再開発されたことによって、カルチャーの周辺化が進んでいるという。都心からやや離れた地価の安いエリアでは若いアーティストなどが集まることで活性化されるが、再開発によって地価が上がり、さらにその外側にカルチャーが移っていく…という現象が起きているのだ。尾田氏は「周辺化しているからこそ、地方の方がおもしろいネタがある」と豪語する。

「周辺化しているからこそ、地方の方がおもしろいネタがある」と解説する尾田氏。

「コロナ禍を経て、オンラインインタビューが増え、直接顔を合わせること自体が少なくなっています。地方の人との打ち合わせに抵抗感はない」と話す尾田氏。「でも、実際に足を運ぶとオンラインではわからない価値や驚き、興奮がある。オンラインの発達によって、『会う』ことの価値が高まっています」。

メディアのリアルな声 氾濫する情報の中で企業が選ばれるには

全国各地のさまざまな情報を紹介するギズモード・ジャパンの場合、取材依頼や情報提供がまるで渦のように押し寄せるという。尾田氏によると、その中からどの情報を取り上げるかは編集部員の「目利き」によるものだ。「量じゃなくてストーリーだと思います。紹介するモノの中に未来のヒントがあったり、わくわく感があったりするものが読まれています」という尾田氏。「プレスリリースでも、脈絡のない情報ではなく、ストーリーがあるとこちらも考えさせられます。熱量が大事です」と言葉に力を込める。

それを踏まえ、東京以外の地域が全国にファンを持つメディアに紹介されるためには、どうしたらいいのだろうか。尾田氏はSNSなどのプラットフォームの活用が肝要だと言い切る。「SNSで発信されるものには文脈がある。例えば、メンションを介して双方が意識するようになるし、そのあとのやりとりで自然とコンテキストが生まれるようになる」とし、「SNSでのプロモーションには慎重になると思うが、誠実さがあれば炎上はしない」ときっぱり。プレスリリースなど、企業側からの一方的な情報提供だけではなく、SNSを介した人の交流や双方向のアプローチが重要であると説いた。

PR TIMESが主催する勉強会では、タイトルの付け方や内容の校正などをレクチャーし、企業のPRのサポートを推進している。

世の中にあふれる新商品や新サービス、そしてプレスリリース。その中からメディアに取り上げてもらうためには、単純な情報だけではなく、オリジナルの文脈や社会的意義をしっかりと伝えることがカギのようだ。

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