オーガニックなソーシャルメディアの活用が過小評価されている 北米のマーケティング特化型カンファレンス「POSSIBLE2024」を現地取材(後篇)

昨年誕生した、北米で開催されるマーケティング特化型カンファレンス「POSSIBLE」が今年もマイアミで開催された。公式情報によると、世界15の地域に800社以上の会員企業を有するマーケティング業界団体MMA GLOBALと連携したマーケティングカンファレンスであり、グローバル企業のCMOを始め、媒体社、広告代理店、テック企業が集結。業界の旬、これからのマーケティング業界の展望について議論が繰り広げられるという。今年は、Walmart、Coca-Cola、マクドナルド、GE、ユニリーバ、キャンベル・スープなどの米国有力ブランド企業が登壇。リテールメディア、生成AI、経営戦略とブランディング活動、そしてサードパーティークッキ問題について多くの発信がなされた。本稿では、米国の有力なマーケターや業界人がPOSSIBLEでどのような発信をしていたか、ダイジェストを電通の森直樹氏が前篇と後篇にわたりレポートする。

ソーシャルメディアのオーガニックな価値にブランドは気付いていない?

北米最大規模のマーケティング特化型カンファレンスである「POSSIBLE」を現地で参加し、レポートする本記事。Walmartのリテールメディアの取り組みなどを紹介する前篇に続き、後篇をお届けしたい。

シリアルアントレプレナーであり、先進的思想家で、Facebook、Twitter、Uberなどに初期投資したエンジェル投資家で、総合広告代理店のクリエーター兼CEOであるGary Vaynerchuk (Chairman VaynerX)の基調講演も興味深かったので紹介したい。

Gary氏は、市場の飽和を解決するために新しい、非正統的な方法を見つけて消費者の注意を引きつけ維持する必要性がブランドにあると強調。現代のマーケティング戦略において、オーガニックなソーシャルメディアの活用が過小評価されており、さらに多くは未活用であることを指摘した。オーガニックなソーシャルメディア活用の潜在的な価値、影響が生活者の意識や消費者行動に大きな影響を与えるにもかかわらず、多くのブランドがその可能性を見落としていると見解を示した。

また、伝統的な広告方法を批判し、メディアとクリエイティブ戦略の分離について議論に至り、今日の急速な市場環境ではより統合されたアプローチが効果的であると提案した。

ゲーリー氏は、伝統的な広告指標からソーシャルメディアプラットフォーム上での直接的なエンゲージメント戦略へのシフトについて言及、広告のためだけでなく、ブランドナラティブの創出する主要な方法として、Instagram、TikTok、YouTubeなどのソーシャルプラットフォームを受け入れるよう提案した。さらに、こうした時代においては、メディア購入とクリエイティブ開発の分離は、マーケティング効果の低下を招く。メディアとクリエイティブ戦略を連動させて開発することで、マーケティングキャンペーンの効果を高めることができると主張した。


写真 人物 対談するGary Vaynerchuk氏とSwan Sit氏
写真左から、対談するGary Vaynerchuk氏 (Chairman VaynerX)とSwan Sit氏(Marketing Maven, Creator, Advisor & Investor Swan Co)。

3社に分社したGEが重視、経営と統合したブランド戦略

最後に、B2B企業の巨人、GE(ゼネラルエレクトリック)の基調講演に注目したい。Linda Boff 氏 (Chief Marketing Officer, VP, Learning & Culture, GE
President, GE Foundation)は、基調講演にて、GEが置かれる大きな変革について言及した。GE主要な事業を3社に経営分割し、その新しい経営体制を世に発信する必要があった。

結果、効果的なマーケティングを実行するためには、事業戦略を理解し、それと整合させることが重要であると強調している。ブランド戦略は、包括的な事業目標と絡み合うように綿密に設計されており、特に、テクノロジーとイノベーションに対するGEの歴史的貢献を強調するストーリーテリングを行っている。

経営戦略と密接なブランド戦略の設計に取り組む中、その実行は堅いB2B企業としては大胆なアプローチを取っている。GEは、ハリウッドのプロデューサーであるロン・ハワードとブライアン・グレイザーと提携し、ロボット工学と神経科学へのGEの貢献を紹介するドキュメンタリーを制作するなど、クリエーティビティが高く、創造的な取り組みを推進している。伝統的なマーケティング・チャネルと最新のマーケティング・チャネルを融合させ、魅力的なブランド・イメージ創出を推進しているのだ。


写真 人物 Linda Boff 氏
Linda Boff 氏(Chief Marketing Officer, VP, Learning & Culture, GE President, GE Foundation)

昨年のPOSSIBLEはイーロン・マスク氏の基調講演が目玉となっていたが、それととは違い、リテールメディアの最新ケースや大規模小売事業者による発信、GoogleのPrivacy Sandboxとサードパーティークッキに関わる基調講演、生成AIとクリエイティブ、テクノロジーや経営、経営のKGIと連携するブランド戦略など、マーケターにとって実践的で示唆的なセッションにフォーカスされていたように感じる。

著名なアーティストであるAshantiの基調講演などセレブリティセッションも、内容はマーケテターにとって示唆的なものであった。昨年に引き続き、全体としては、ブランドとマーケティングに関する米国のCMOたちや広告業界のキーパーソンの関心事とチャレンジを集中的に聞くことができる魅力的な場となっていたと感じた3日間であった。

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写真 人物 森 直樹氏

森 直樹氏
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター
エクスペリエンスデザイン部長/クリエーティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。2023年まで公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)を務める。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。




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