業界3番手の戦い方に学ぶ、オフィス内装デザイン会社が実践する競合プレゼン必勝法

━━内装デザイン業界と広告業界の、ビジネス慣行における共通点・相違点はどのような点でしょうか。

赤枝:クライアント側の担当者が、初めてコンペを実施するケースが多いのは、広告業界とは違う点かもしれません。しかし、共通点がとても多いんです。成果物が手に入るのが数カ月~1年後という長期スパンであること、金額規模も数千万円~数億円、数十億円にも及ぶ大きさであることから、クライアントは「失敗できない」という強いプレッシャーを感じているという構図はすごく似ているなと思いますね。

鈴木:仕上がりの想像のしにくさは、広告以上かもしれませんよね。

赤枝:だからこそ、比較検討し、信頼できる会社に依頼したいという欲求が強くなるのだと思います。逆に言うと「この会社に頼んで大丈夫だ」と安心していただければ、リピーターになっていただける可能性は高くなる。成長企業の場合は、事業拡大に伴いオフィスの契約期間である3~5年周期で移転するケースが多いんです。

「デザインは素晴らしいが予算オーバー」を防ぐために

━━本書の中で特に印象に残った点はありますか。

赤枝:深く共感したのが「3番手以下が勝つために」という章ですね。私たちはまだまだ一般の方々には認知されていない内装デザイン会社なので、どうしてもブランド力が十分ではありません。一方で、比較検討される競合の中には誰もが知っている有名企業が含まれることもあるので、期待値が3番手の会社が巻き返すにはどうすればいいのか、という点は参考になりました。

「BANTCH(バンチ)」の解説も分かりやすかったです。「BANTCH」とは、Budget(予算)、Authority(決裁者)、Needs(ニーズ)、Timing(スケジュール)、Competitor(競合)、Human resources(人員体制)の頭文字をとったもので、営業活動において確認すべき項目です。

「担当者が気に入っても、決裁者がノーと言えば終わり」なので、意識決定者は誰なのか、意思決定方法は何なのか、キーマンは誰なのか、対象者を絞ることが重要だということですね。あえて予算を公開されないクライアントもいますが、「デザインは素晴らしいが予算オーバー」になってしまうとそもそも検討テーブルにすら乗れません。事前に情報を整理し、環境を整えた上で最適な提案の仕方を考えることが重要だと改めて認識しました。

━━鈴木さんに研修も依頼されたそうですね。

赤枝:事業部のメンバーを対象に行いました。事前に、本書を読んで気になった点や疑問点をキャッチアップして、鈴木さんに伝えておきました。

鈴木:「決裁者となかなかコンタクトが取れない場合の戦い方」「プレゼン後の追加提案への対応」「質問によって、ライバル社に気づきを与えてしまうリスクを回避する方法」など、リアルで具体的な質問が多かったですね。先ほど赤枝さんもおっしゃたように、コンペ慣れしていないクライアントが多いため、広告業界以上にクライアントをリードしていくスキルが求められるなという印象を受けました。

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宣伝会議 書籍編集部
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宣伝会議書籍編集部では、広告・マーケティング・クリエイティブ分野に特化した専門書籍の企画・編集を担当。業界の第一線で活躍する実務家や研究者と連携し、実践的かつ最先端の知見を読者に届けています。

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