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コラム

競合を勝ち抜くための「もう片方のスキル」

競合プレゼンの勝率アップ!静岡の広告会社が実践する勝てるチームづくり

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静鉄アド・パートナーズ(本社・静岡市)は、静岡鉄道を主軸とする静鉄グループの総合広告会社。コロナ禍を経て、新たなクライアント開拓のために競合プレゼンにチャレンジする機会が増えている。

そんな中で出会った書籍が、『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド100』(2023年3月発売)。営業や企画、媒体などほとんどの社員に配布したほか、著者の鈴木大輔氏(FACT 戦略プランナー)を招いて社内講演会を実施したところ、早くも結果が出ているという。

営業としてクライアントに日々向き合う荒尾周氏と、プランナーとして多くの競合プレゼン案件に関わる井口麗花氏、著者の鈴木氏の3人で、競合プレゼンに勝つための必要なメソッドについて話し合った。

敗因は提案書の“外”にあることが多い

――『競合プレゼンの教科書』を読んだ感想は

井口:競合プレゼンで負けた時、敗因は必ずしも提案の中身(個々人の能力)にあるのではなく、提案書の範囲の外(勝つ環境)にあることが多いという考え方にぐっと心が掴まれました。

今回はなぜダメだったのか——。腑に落ちないまま、企画術やプレゼンテクニックなどの“中”の研究ばかりに気を取られてしまっていたんですよね。「“外”にまだ要因があったのか!」という気づきが嬉しくて、すぐ荒尾に勧めました。

荒尾:共感するところが非常に多くて、答え合わせのような感覚で読みました。

写真 人物 個人 静鉄アド・パートナーズ 荒尾 周
荒尾 周(あらお・しゅう)
大手総合電機メーカー系ハウスエージェンシーに入社し、電機製品などのイベントおよび映像制作に従事。2020年に静岡へ移住し、静鉄アド・パートナーズへ入社。営業として最前線で、お客様と共に課題へ向き合い、企画~実行~改善まで一貫してプロジェクトを推進している。

勝てるチームづくりについての記述はそのひとつです。僕は、営業もプランナーに対して前のめりに行くべきだし、プランナーもクライアントに対して前のめりで行くべきで、そういった姿勢で取り組む仕事こそ良い成果を生むと考えています。実際に、あるアートディレクターは外部スタッフにもかかわらず「私もお客さんのところに連れて行ってください」とわざわざ東京から静岡まで来てくれて、ヒアリングに同行してくれたこともあります。

そのように積極的に動いてくれるメンバーがいるとチームに一体感が出て、思いが一つになって提案に向かっていくんですよね。相手のことを尊重しながらお互いの領域に一歩踏み込んで議論をすることで良いものができるというのは、まさにその通りだなと実感しているところです。

鈴木:勝つ時や勝てるチームはそういう仕事の仕方ができていますし、負ける時や負けるチームはバラバラで、どこか遠慮があって一歩踏み込めていないんですよね。

お伺いを立てるのではなく、壁打ちを挑む

――本書を読んでから成果が出始めているそうですね。具体的に実践していることはありますか。

井口:私が関わった案件に限りますが、それ以降のプレゼンの勝敗が、実は6戦5勝なんです。

写真 人物 個人 井口麗花
井口麗花(いぐち・れいか)
アカウントプランナーとしてキャリアをスタートし、2020年静鉄アド・パートナーズに入社。コミュニケーション戦略〜企画プランニングを日々学びながら社内・クライアントから信頼される戦略プランナーを目指す。

それまでは、あらゆることの判断について上司に逐一確認を取っていたのですが、自分の意見を尊重するようになりました。その結果、上司にお伺いを立てることが少なくなったかもしれません(笑)。それよりも、「私はこうつくりたいです、なぜならば……」と、しっかりと自分の意見を整理して伝えるように心がけています。

鈴木:上司を壁打ち相手にするのは、ベストな上司の使い方です。「これでいいですか」とお伺いを立てると、どうしてもアイデアやテーマにコミットしない感じになりがちですよね。上司をクライアントに見立ててやり取りをしていけば、ロジックも強化されるし、アイデアも研ぎ澄まされていきます。

井口:また、あえて難しい言葉を使ったり文章も長くしたりして、格好いい体裁にした方が良いと思っていたのですが、「私がわかる、私の言葉」を使うようにしています。無意識に横文字の業界用語を使いがちで、社内では何となく理解が進んだとしてもお客さんとの認識がずれてしまっていたことは多々あったと思います。伝わることが何より大切なんだというのも再発見でした。

鈴木:言葉の定義も、クライアントによって、またクライアント内でも、ましてや広告会社によっても違っていますよね。「プロモーション」「ブランド」「ターゲット」といったマーケティング用語については、クライアントがどういう意図でそれらの言葉を使っているのか中身を紐解いていくと、提案のときの理解が格段に変わってきます。

写真 人物 個人 鈴木大輔
鈴木大輔 (すずき・だいすけ)
2006年ADK入社。2019年、クリエイティブブティック「FACT」の立ち上げに参画し、戦略プランナーとして現在に至る。業界3位の広告会社で苦しみながら戦い抜いた10年以上に及ぶ経験と、百を超える競合プレゼンで溜め込んだ知見を、競合に勝つための方法論として体系化した『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド100』を2023年3月刊行。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。

荒尾:僕はお客さんと話す中で「何に不満を感じているか、どこに不安を感じているか」を聞き出すことを常に意識しています。打ち合わせのスケジュールを組む際も「早く会いたいんだろうな」と感じ取るとすぐに「どうしました?」と電話を1本入れるようにしています。

競合プレゼンにおいても、なぜ今回プレゼンになったのか、提案が通っても通らなくてもどこに“不”を感じているのかを意識することはできていたのかなと思います。ただ、きちんとメソッドとして言語化はできていなかったかなと。

鈴木:荒尾さん自身のスキルとして、経験から意識してできているのだと思います。ただ、それをチーム全体で共有していくには、言語化して若手の方にも伝えていかないといけない部分ですよね。

社内講演での「若手に権限委譲すべき」に反響

――荒尾さん、井口さんの主導で、社員向けに鈴木氏を招いて講演会も実施されたそうですね。反響はいかがでしたか。

荒尾:講演で鈴木さんは「若手や現場に権限委譲をすべきで、決断をする経験をマネジメントが奪ってはだめだ」という話をしてくださいました。若手社員からは「すごく良かったです」と感謝の声をたくさんもらえましたし、マネジメント層も気持ちの変化があったのではと思います。ただ「良い話聞けてよかったね」で終わらせず、きちんと結果として出すために仕組みや組織を変えていきたいですね。

井口:若手の女性社員たちはこの本をデスクに置いていて、見るとたくさん付箋が貼られているんです。「教科書」というタイトルの通り、一度読んで終わりではなく、何度も読み返してもその度に新しい気づきがある本なのだと思います。

荒尾:帯に書かれている「業界3位以下でも勝てる!」という言葉が、心に刺さったのだと思います(笑)。

鈴木:嬉しい話ばかりです。競合プレゼンでモチベーション高く提案した結果、良い企画が採用されて、地方が元気になるような施策が行われるのはとても健全な姿だと思います。僕が所属しているFACTは地域貢献を打ち出しているブティックなので、地域へのアプローチを競合プレゼンという切り口で増やしていければと考えています。

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広告会社の研修にも採用!競合に勝つメソッド満載

『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド100』は、広告業界やコンサルティング、ITなどのビジネス現場で行われている「競合プレゼン」「コンペ」「ピッチ」に勝ち抜く100のメソッドを体系立ててまとめた一冊です。広告会社で研修などでの実績が増加中。競合プレゼンに取り組むチームの強化に役立てられています。

2023年3月20日発売/定価:2,420円(本体2,200円+税)/A5判 344ページ

 
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