タレント起用とリスク 契約時の備え、スキャンダル後の初動、契約解除の判断基準は?

認知度向上や好感度の醸成を図る際、著名人の起用は有効である。CM出演、PRイベントへの登壇、インフルエンサーとしてのSNS発信など、著名人の持つ知名度や影響力を戦略的に活用すれば、ターゲットへの訴求力や話題性を一気に高める効果が期待できる。

 

一方、著名人は常にメディアやファンの視線を集めており、不祥事やスキャンダルのリスクも伴う。リスク管理次第では企業イメージへの悪影響を招く恐れもある。

 

ここでは『成果を出す 広報企画のつくり方』の著者・片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所 代表)が、タレントを起用した施策におけるリスク管理について広報担当者向けに解説する。

 

※本稿は「広報会議」2025年6月号の連載「広報担当者のための企画書のつくり方入門」のダイジェスト版です

企業イメージが毀損されるリスク

著名人・タレントを活用したPR施策は大きな効果が期待できる一方、そのタレントが不祥事やスキャンダルを起こした場合には、企業イメージが毀損されるリスクが伴う。特にSNSなどで瞬時に拡散する現代では、企業ブランドへのダメージは甚大になりうる。契約を結ぶ段階からリスク管理を念頭に置き、体制整備を行うことが不可欠である。

仮にタレントとの契約が成立した後であっても、予期せぬ問題が発生する可能性は常に残されている。そのため、事前に十分なリスクヘッジと明確な責任範囲の設定を行うことで、企業価値を守りながらスムーズなPR活動を継続できるようにしていきたい。

想定外の事態が起きたとしても、契約書の段階で十分な備えを講じていれば、企業イメージへのダメージを最小限にとどめることができる。タレントとの合意事項を明確化し、責任範囲やリカバリープランを早期に整備することこそ、安定したPR活動を支える要となる。

イメージ 「広報担当者のための企画書のつくり方入門」のダイジェスト版

スキャンダル発覚後の初動対応

実際にスキャンダルやトラブルが起きたとき、最初の数時間から1日程度の間にどのような動きを取るかが初動にあたる。具体的には、事実関係の調査や社内共有、メディア発表やステークホルダーへの説明の方針決定などが含まれる。

この初動を誤ったり遅れたりすると、世間や顧客、取引先からの信頼を大きく損なう。後になって謝罪や再発防止策を発表しても十分に評価されない可能性も高まる。スキャンダル発覚後には、できる限り早い段階で社内緊急会議を開き、当該タレントの立場や事実確認を行い、広報としての方針を固めて迅速に情報を発表することが不可欠となる。

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特に、重大な違法行為や、不倫やハラスメントなど公序良俗に反するものほどリスクが高くなるが、小さな炎上でも影響度次第で大きなダメージにつながる可能性がある。契約書だけでなく、広報・法務・経営層が連携するクライシスプランを策定しておくと安心だ。不測の事態への対応はスピードと正確性が鍵となる。初動ステップを的確に踏むことで、企業イメージへの悪影響を最小限に抑えることが可能となる。

CM差し替えや契約解除の判断基準

CM差し替えや契約解除を検討する際には、スキャンダルの社会的波及度や企業理念との整合性、消費者・取引先への影響度、さらに、これまでにかかったコストや追加で必要となる対策費用など複数の視点を総合的に考慮する必要がある。不祥事が重大であればあるほど企業価値を守るため、速やかな対応が求められる。

一方、再起用の可能性を見越して、本人の反省態度や社会的評価の回復見込みを考慮するケースもある。結局はブランドイメージの長期的な維持・強化を最優先に、影響度の大きさに応じて最善策を選択することが求められる。また、契約中にタレントの不祥事や制作側の都合でキャンセルや差し替えが生じた場合、その費用をどちらが負担するかを事前に契約書で明確にしておくことも重要である。

たとえばCMを差し替えることになった場合、追加撮影や放映枠の変更による費用をどの程度タレント側が負担するのか。あるいは企業が全額を補償するのかを曖昧なままにしておくと、後々の交渉やトラブルの原因になりやすい。契約書の段階で取り決めをしておけば、企業とタレント双方がこうしたリスクを最小化し、冷静かつ迅速に対応できる体制を整えやすくなる。

再起用を検討する際は、タレント本人の誠意ある謝罪と反省度合い、社会的評価の回復状況、企業理念との整合性が重要な指標となる。世間の受け止め方が好転し、ブランドとの親和性が保たれるなら、復帰によるプラス効果も期待できる。一方、タイミングや再起用による批判リスクに注意し、社内外の関係者への周知やメディア対応を慎重かつ戦略的に行う必要がある。

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消費者自身がSNSで情報発信を行い、社会課題や倫理観に敏感になっている現在において、企業はどのようなタレントを選び、なぜその人物がブランドと合うのか、説得力のある説明をする責任を負うようになった。これは単に法的リスクを回避するだけでなく、企業が社会から信用を得るための不可欠な要素だといえる。現代の消費者は「このタレントがどんな価値観を持っているのか」「企業の理念と本当にマッチしているのか」を厳しく見ている。

企画書(契約)段階からリスクへの備えを十分に行い、施策後の効果を多角的に測定しながら軌道修正を図ることが、長期的なブランド戦略として非常に重要になってきている。

全文は、広報会議デジタルマガジンにて。
https://www.sendenkaigi.com/marketing/media/kouhoukaigi/032259/
著名人・タレントの起用について、「CM(広告)契約」「イベント(PR)契約」「インフルエンサー(SNS)契約」という3つの形態に分けて広報実務家向けにポイントを解説しています。

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