宣伝会議の教育講座に、クリエイティブディレクター/コピーライターである小藥 元さんを講師に迎えた特別クラス「コピーライター養成講座 小藥元クラス」が開講します。
講座を担当するにあたり、小藥さんが改めて考える言葉の価値や、コピーライターの役割について4回にわたってお届けします。
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「はじめてのステートメント」
なにも仕事を継続せずに博報堂を出た。05年に博報堂に入社した自分は、当時ベンチャーという言葉すら知らなかった。
井の中の蛙だった。時代は動いていた。
ある日、ベンチャーの(今では誰もが知る)言語化の仕事をいただいた。目の前に経営者(今では誰もが知る)がいる。彼がサービス(プロダクト)に込めた想いを言語化する。引き出し、磨いていく。社員と共有するためだったように思う。
社内用、社外用。実はあまり私は好きではない。
関わる人にとっても、届ける人にとっても、価値のあるものを書きたい。結果的には社外に出ていないと思うが、サービスタグライン・ステートメントを納品した。それをいくつかした。
キャッチコピーを書く。お気楽な空気は独立当初も今も私にはない。目の前に経営者がいる。決定権をもつ人がいる。プレゼンするのはひとり。営業も、担当部署もいない。博報堂時代には一度もなかった経験や仕事が、初期設定・スタンダードになった。
伝えたいことを引き出し、伝わるものに変えていく。心動かされ、価値に値すると言えるものにしていく。
相手が納得するか、満足するか。されないものなら、私に価値がない。期待したお店で出された料理がそこまでだとあなたが感じたとき、2回目はないだろう。フリーとは、強烈に単純な話だ。
「はじめての作詞」
先輩のADが博報堂時代、テレビ局のドラマの仕事をしていた。私はそのコピーを書いていた。今書いていて、思い出した。山下智久さん主演ドラマで「逝ってらっしゃいませ。」だった。その後私は独立し、その局の方は音楽関係の古巣に戻った。そして連絡があった。
Kis-My-Ft2のコピーを書いて欲しいということだった。アルバムタイトルはもうできていて、男性にも届けたいとオリエンを受けた。書いたコピーの一つが「KISS &PEACE」。
しばらくして連絡が入り、このコピーをメンバーが気に入ったため、曲を作ろうと思うとのこと。作詞コンペに入ってくれないか?という相談だった。これはKIS-MY-WORLDというツアーのエンディングの曲にもなり、会場のみんなと手を繋いだ。
言葉は何を言うか。どう言うか。だけではない。誰が言うかだ。私はその原則を、このときの経験から改めて学んだ。
もう一つ作詞で忘れられないのは、カゴメの120周年記念ソング「進めカゴメ」だ。社員のみなさんからカゴメがいつも大事にしていることばを集め、咀嚼し散りばめた。「それがカゴメ 進めカゴメ」と帰結させた。当時の役員・従業員2400名が踊ったダンスムービーは是非ネットで見てほしい。
私の時代はOB訪問が主だったが(笑)、就職を自分が考えるときにその会社のことや思想を調べるのは当たり前だろう。CMをつくり、延々と流し続けられる企業は限られている。いつか広告は消えていく。タレントや音楽には肖像や権利も関係する。
会社のカルチャーはそう変わらない(変わってもらっても困る)。進めカゴメは残っている。それは新しい広告の形なのだと思う。
「はじめての小学校、駅前大型開発街区ほか」
ショッピング施設、大型開発街区、小学校、プロバスケチーム、靴下、サウナ宿泊施設、プレミアムオーダーハウス、高級日本酒、300円ショップ、珈琲、高級宿ほか。独立後、数えきれないほどのブランドネーミングをしてきた。
多くの人に誤解されているが、ネーミングだけをしているわけではない。なぜその名になるのかを書いている。話しあっている。ブランドコンセプトや深い納得を生んでいる。会社名を生んだときも、事業定義から経営者とはじめているように。
名のまえ、名、デザインを含めた名のあと、をつくっている。クライアントが信じられるのかどうか。AIに勝ちたいなら、そのすべてが仕事になる。
コピーライターとは、ライトという行為だけが仕事では全くない。しかしライト(表現)がおいしくなければ、プロの料理とは呼べないのは事実。
説明は、ああ難しい。
(VOL.3に続く)

コピーライター養成講座 小藥元クラス meet© 概要
◯開講日:2025年7月24日(木)19:00~21:00
◯講義回数:全6回
◯開催形式:教室とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド開催
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