自治体広報の鉄則は「シンプルはパワフル」 情報が力を持つために、なるべく簡潔な表現を心掛けたい(奈良県王寺町・澤彩佳さん)

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているのでしょうか。本コラムではリレー形式で、自身の考えをお話いただきます。
奈良県吉野町 町長公室広報広聴室の井上紀子さんからの紹介で、今回登場するのは奈良県王寺町役場の澤彩佳さんです。

avatar

澤彩佳氏

奈良県王寺町役場 
政策推進課企画係

フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動した後、2022年に王寺町役場に入庁。政策推進課に配属され現在まで町の広報担当者として勤務。

Q1:現在の仕事内容について教えてください。

広報紙の編集・発行、町公式サイトの管理・運営、SNS運営、町制施行100周年記念事業などを担当しています。

Q2:貴組織における広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。

広報紙の編集・発行、町公式ホームページの管理・運営、SNS(Facebook、LINE、instagram)やメディアへの情報提供を通じたまちのPR等を行っています。

また、住民のまちへの参画・協働を推進する企画として「おうじ・まちの宣伝隊」を2023年に発足させました。これは、住民や広報活動に興味のある方からなる広報チームで、住民目線で町の魅力を発信していただいたり、イベントに関係者として参加していただいたりと町とのつながりを深めて、シビックプライドを醸成する企画として運営しています。また、2026年2月11日に町制施行100周年を迎えることからさまざまな周年事業の企画・運営も行っています。

Q3:ご自身が大事にしている「自治体広報における実践の哲学」をお聞かせください。

自治体広報は住民の生活に直結するお仕事。大切な情報を預かり、大切に届ける、ということを常に思って業務にあたっています。

まちの情報は広報担当が住民に向けて広報紙や公式サイト、SNSなどで発信しますが、その情報源のほとんどは各事業の担当課からの原稿等による情報提供です。広報担当はその情報をより分かりやすく、より町らしく変換するのがお仕事。情報の性質や種類によって広報媒体を使い分け、情報をより効果的にお届けできるよう努めています。

日々様々な情報を取り扱う中で、掲げていることがあります。それは「シンプルはパワフル」ということ。情報が力を持つために、なるべく簡潔な表現を心掛け、情報を盛り込みすぎないように心がけています。読者に必要な情報か、そうでないかを整理し、不要なものを洗い出す。発信する情報を制限するときにはある種の勇気が必要ですが、煩雑な文章や意図が分からない写真が読者に与えるストレスを排除し、大切な情報という資源を無駄にしないためにも、まずは不要なものを見極められるように。効果的に人に「届く」情報にはこういったシンプルさが必要だと考えています。

ある広報研修で「伝える」と「伝わる」は違うと学びました。一方的にできる「伝える」に対し、相手がいないと成りたたない「伝わる」。常に受け手の目線を持って発信しなければどんどん人は町の情報から離れていってしまいます。世の中は、量から質へ、より効率化されたものを求める風潮にあります。広報紙の紙面や、LINEの配信、情報の母艦である町公式サイトの更新等、住民が見るすべての媒体で適切な「引き算」や効率化を行ってシンプルに、パワフルに、伝わる広報を行っていきたいです。

Q4:自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性についてお聞かせください。

私にとって広報業務のもっとも大変な工程のひとつが、各部署から提出された原稿を添削し、広報のルールに置き換えた表現方法に変換する〈翻訳作業〉です。

・原稿のままでは読者にわかりづらいため、わかりやすいものにしたい
・不要な情報はなるべく除いて、視覚的にも見やすいものにしたい
・デザイン性を持たせて広報紙を楽しめるものにしたい

などというという思いが広報担当にあっても、それぞれの事業担当課との調整が難しい…と頭を抱えることがよくあります。

こういったときに独断で判断し、記事を新しく作り変えてまったり、大幅にレイアウトを変更してしまったりすると、後々の校正の際にトラブル発生のリスクが高まり、広報活動全体の効率が低下する可能性があります。

ラブルを避けつつ、最善の形で情報提供することこそが広報担当の仕事だと考えています。大切な情報を預かり、広報するため、念入りに調整を行うよう心がけ、文章を変える場合、レイアウトの提案をする場合は必ず担当課にひとつひとつ理由を話し、相談します。そういったことを続けていくうちにだんだん広報担当者として信用してもらえるようになり、重要な情報も渡していただけるようになってきたと思います。

大切な情報という資源を正しく、円滑に伝えるための努力こそが「編集」であり、やりがいを感じるところです。

【次回の担当者は?】

京都府福知山市の芦田さんです。

advertimes_endmark


この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ