顧客を「アスリート」と呼ぶDICK'S 単なるスポーツ用品店を超える、AI時代のCX戦略とは

Adobeは4月20日から22日(現地時間)にかけ、米国・ラスベガスで「Adobe Summit 2026」を開催した。現地取材を通して、カンファレンスで発表された内容について、レポートする。

本カンファレンスでは、生成AIやエージェント型AIを活用した顧客体験のあり方がいくつか語られたが、その中でも今回は米スポーツ用品チェーン「DICK'S Sporting Goods」の事例を取り上げる。

同社が特徴的なのは、顧客を単なる「consumer(消費者)」ではなく、「athlete(アスリート)」と呼んでいる点である。

2日目の基調講演には、DICK'S Sporting Goods シニア ヴァイスプレジデント兼チーフ マーケティング/eコマース、アスリート エクスペリエンス オフィサーであるエミリー シルバー(Emily Silver)氏、シニア ヴァイスプレジデント兼CTOのヴラド ラック(Vlad Rak)氏が登壇。

アドビ エンタープライズCMOのRachel Thornton氏との対談で、マーケティングとテクノロジーの両面から、同社が進める顧客体験変革について語った。

左から、2日目の基調講演で対談をする、アドビ のRachel Thornton氏、DICK'S Sporting Goods Emily Silver氏、同社のVlad Rak氏。

なぜ顧客をアスリートと呼ぶ?

DICK'Sは1948年創業のスポーツ用品チェーンで、全米で850以上の店舗を展開する。近年は大型店舗「House of Sport」を強化しており、店内にはクライミングウォールやゴルフ試打、バッティングケージなどを設置。単なる物販ではなく、“スポーツを体験する場所” としての役割を強めている。

対談の中でシルバー氏は、顧客を「アスリート」と呼ぶことによって、社内での会話そのものが変わると説明した。

「誰かを “アスリート” として見ると、関係性はより長期的で、より個人的なものになる。その人に今日何を買ってもらうかではなく、その人がスポーツの中でどこにいて、何をしようとしているのか、どう進歩を支えられるのかを考えるようになる」。

この考え方は、DICK'Sを単なるスポーツ用品店ではなく、顧客の「スポーツとの関係」に伴走する存在として位置付けるものだ。シルバー氏は、「私たちは皆、何らかの形でアスリートである」とも語り、レクリエーション目的の人、競技に取り組む人、子どもを支える親など、多様な “スポーツとの関わり方” を前提に体験を設計していると説明した。

一方、ラック氏は、同社が自社を「スポーツ用品を売る小売業」ではなく、「スポーツカンパニー」と捉えていることを強調した。

「私たちは、スポーツが人生を変えると本気で信じている。だからこそ、アスリートの体験の一部になりたいのだ」(ラック氏)。

次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事