『宣伝会議のこの本、どんな本?』では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。今回は、TBWA\HAKUHODO チーフ・クリエイティブ・オフィサー 細田高広さんが『働く言葉』(井手康喬著)を紹介します。
突然ですが、広告制作者が広告を「作品」と呼ぶ問題について皆さんはどう思いますか?
私は長いことスタンスを決めかねていたのですが、あるとき海外の同僚がつくったばかりの広告を「OUR PRODUCT」と呼んだのを聞いて、それだ!と思ったのです。作品ではなく製品。その捉え方は私自身の広告の向き合い方にぴったりでした。
届ける相手の顔を想像し、工具の代わりにペンを持ち、工場代わりのデスクで、つくっては壊し、ちゃんと機能するメカニズムとして言葉を設計する。「オフィスで働くからといってホワイトカラーみたいに思うな。現場で手を動かす職人としての誇りを持て」。配属された時に言われたそんな言葉が、今も影響しているのかもしれません。そんな私にとって「働く言葉」という4文字がまず、コピーに対する的確なコピーライテイングに思えました。飾る言葉でも、おしゃれな言葉でも、バズるだけの言葉でもない。働く言葉。その実直さ。
タイトルからして仕事をしてますから、書籍自体も相当に働きものです。ありがちな仕事自慢的な内容は皆無。最初から最後まで丁寧な仕事の手引きになっている。言葉の「働き」に対する気づき方に始まって、いつの間にかコピーの根本原理をすんなりと理解し、そうやればいいのかと膝をうち、気づけば早く実践したくなってウズウズする。すると、ちょうど実践があり、少し考えて次のページをめくると、井手さんの教え子たちが書いたというコピーがうまくてハッとする。この感じがなんとも懐かしい。師匠についていた新人時代を久々に思い出しました。
いわば、読む弟子入り。一冊で、広告会社で優れた(しかも、こわくない)師匠について学ぶ経験を味わうことができます。初心者のみならず、経験者にとっても、いつの間にかパターン化してしまっている自分のアプローチを見直すきっかけになるはずでしょう。特に言葉の機能から切り口を導くPart4はプロにこそ有用だと感じます。登山マップのように「あぁ、このルートもあったか」と視点を広げられるはずです。
それにしても後悔。年齢が近かったので井手さんに直接教わることはなかったのですが、この話、もっと早く聞いておけばよかった。

『「意味」ではなく「機能」から組み立てる 働く言葉』
著者:井手康喬
ISBN:978-4-88335-648-5
定価:2,420円(税込)
発売:2026年4月2日
詳細・購入はこちら
伝えたいことはあるのに、うまく言葉にできない。センスがない、語彙が足りない。そんな悩みを抱えたことはないでしょうか。
そのもどかしさを解きほぐす鍵は、「言葉に機能を与える」という視点にあります。本書は、コピーライター/クリエイティブディレクターとして活躍する著者が、「働く言葉」を生み出すための思考法と手順を整理した一冊です。
