KPMGジャパンは「日本の企業報告に関する調査2025」において、従来の開示項目の記載状況に加え、「統合思考」に着目した分析を実施した。今回の調査で見えてきた企業報告の課題と可能性について、調査を担当した有限責任 あずさ監査法人 サステナブルバリュー統轄事業部 パートナーの勢志恭一氏に聞いた。
━━今回の調査では、「統合思考」を軸に分析を行っています。どのような問題意識から、このテーマを設定したのでしょうか。
私たちは10年以上にわたり企業報告の調査を続けてきました。これまでは主に、「どのような項目が記載されているか」「開示がどの程度進んでいるか」といった観点から分析を行ってきました。
特にここ数年はマテリアリティ開示に着目してきましたが、多くの企業で開示が進み、一定の成熟段階に入ったと感じています。もちろん改善の余地はありますが、「記載されているか、いないか」という観点だけでは、企業報告の質の違いを十分に捉えにくくなってきました。
そこで今回注目したのが、価値創造に関わる要素同士の「つながり」です。パーパスやマテリアリティ、戦略、資源配分、成果といった要素がどのように結び付いているのか。その背景にある統合思考を読み解くことで、持続的な価値向上につながる企業報告についてより深い示唆を提供したいと考えました。
また近年はAIを活用した分析も進んでいます。記載項目の有無だけであればAIでも確認できます。だからこそ、人が読み込み、解釈することで初めて見えてくる部分に焦点を当てたいという思いもありました。
━━長年調査を続けてこられた中で、企業報告はどのように変化してきたと感じていますか。
全体として企業報告は大きく進展したと思います。
統合報告書やサステナビリティレポートでは、価値創造プロセスやマテリアリティ、人的資本など、かつては必ずしも十分に説明されていなかったテーマにもページ数が割かれるようになりました。
一方で、情報量を増やせば良いという段階は過ぎつつあるとも感じています。
報告書を読むと、必要な項目は網羅されているものの、それぞれが独立して説明されているケースも少なくありません。読み手からすると、「この会社はどこを目指しているのか」「なぜこの施策に取り組むのか」が見えにくいことがあります。
