「お客様はいつも正しい」。サービス業で語られてきたこの考え方が、働く人への理不尽な言動を許す理由になってはいないでしょうか。今回紹介するのは、リトアニアのPR会社PR Service(ピーアール・サービス)が手がけた「Kindness Week(カインドネス・ウィーク、親切週間)」です。顧客からのハラスメントを社会に問いかけ、日々の接客に敬意を取り戻そうとした取り組みでした。
クライアントはCircle K(サークルケー)。バルト三国でコンビニエンスストア併設型のサービスステーション(ガソリンスタンド)を展開するチェーンで、日本でかつて営業していた同名のコンビニチェーンとは運営主体が異なります。PR Serviceは同社とともに、従業員の声を起点に調査、報道、SNS、店頭での体験を結び付けました。
プロジェクト説明資料より抜粋(PR Service社提供)
「サービスを提供する人」を守るという発想
取り組みの土台となったのは、問題の実態を示す調査です。2025年1月、調査会社Intra Research(イントラ・リサーチ)がバルト三国で、接客業務に携わる従業員を各国600人超ずつ調査しました。顧客から心理的暴力を受けた経験があると答えた人は、リトアニアで59%、ラトビアで57%、エストニアで50%に上ります。
サービスの現場で働く人の約半数、国によっては6割近くが被害を経験している。こうした数字は、一部の店舗や個人の問題として見過ごされがちな実態を浮かび上がらせます。PR Serviceが向き合ったのは、企業内の対応にとどまらず、サービスを受ける側の態度も含めて考えるべき課題でした。
Circle Kは以前から従業員の心の健康を支える活動を続けていました。今回のPRでは、その蓄積を踏まえ、自社の従業員を守る姿勢を示すとともに、サービス業全体で安心して働ける環境について議論を広げることを目指しました。従業員の経験を調査で確かめ、社会に共有できる問題へと位置付けた点に、広報・PRの役割が見えます。
